離発着時の飛行機のエンジン部分に鳥が吸い込まれ、エンジンが機能不全に陥る現象がバードストライク。海鳥が1匹入るといったことではなく、原因の大部分は、群れ。最大の元凶がトモエガモで、日本に飛来する数が近年増加。成田空港近くの印旛沼などで、大群が乱舞する光景を目にできるのです。
179人が死亡した韓国の航空機事故は、トモエガモが原因

2024年12月に韓国南西部のムアン(務安)空港でチェジュ航空の旅客機が胴体着陸して炎上し、179人が死亡した事故では、バードストライクが起きていましたが、その原因となったのがトモエガモです(機体の2つのエンジンからトモエガモの羽根と血痕を発見)。
トモエガモはシベリア東部で繁殖、本州以南の日本海側に渡来し、関東地方以西で越冬する冬鳥。
全長はオスで40cm、翼開張70cmもあり、カモ類では大型。
個体の色は美しく、英名のSibirionetta formosaは、シベリアの美しい鳥の意。
トモエガモ(巴鴨)の和名は、嘴(くちばし)の基部に白い巴状の斑紋がある鴨から。
湿原、水辺の草原などを塒(ねぐら)とし、国内では宍道湖、印旛沼、諫早湾などに多数飛来。
環境省によれば、トモエガモの飛来は2020年度には2万2006羽だったのが、2024年度は14万7313羽確認され、7倍近くまで増加していることが判明。
温暖化の影響でシベリアの氷が早く溶けて繁殖時期が長くなったこと、冬の死亡率が下がったことが原因として推測されていますから、今後も増える可能性が大。
しかも飛来地では、朝夕に塒から餌場間の移動で、群れをなして飛ぶため、複数の衝突、さらにはカモの中では体重が重く、機体が損傷する確率が極めて高いため、大事故につながりやすい危険性があるのです。
「ハドソン川の奇跡」と呼ばれる2009年1月15日にニューヨークで起きた飛行機事故事故(トム・ハンクスが機長役として主演、『ハドソン川の奇跡』として映画化)もバードストライクが原因でした。
「ハドソン川の奇跡」を受けて、2013年からバードストライクの対策を専門家が話し合う国の検討委員会は毎年1回開かれていて、ここで「問題鳥種」が指定されます。
2025年3月5日、国土交通省のバードストライクに関する「第23回鳥衝突防止対策検討委員会」は、トモエガモを注意が必要な「問題鳥種」に指定(トモエガモを含め、トビやコアジサシなど25種類が指定)。
委員長は、「トモエガモについては、最近日本への渡来数が増えており、今後鳥衝突の可能性が高まるおそれがあることから、この問題に対してどのように取り組んでいくかは、本検討委員会における課題である」とし、「大事故を防止する責任と鳥衝突防止対策を講じることの重要性を肝に銘じながら取り組みを進めていただきたい」と警鐘を鳴らしています。

成田空港、出雲空港、佐賀空港は警戒を強めています

印旛沼に近い成田空港、宍道湖に隣接する出雲空港、諫早湾隣接の佐賀空港は要注意の空港となっています。
宍道湖では例年4万羽~10万羽の野鳥が越冬、そのなかでも増えているのがのトモエガモ。
出雲空港ではバードストライク防止で、滑走路25側(空港の東側)で煙火(のろし)による威嚇が行なわれています。
冬に飛来する鳥ですが、出雲空港では便数の増加もあって、実際の月別衝突・ニアミス件数は、夏場6月・7月がピークとなっています。
宍道湖へのトモエガモの飛来は数万羽で、2023年度は1月25日、2月27日にバードストライクが発生しています。
大きな事故にはなっていませんが、復路便の欠航、遅延が発生する事態に。
ちなみに、国内の飛行場におけるバードストライクですが、2023年は1463件、2024年は1647件発生(2024年は過去5番目に多い発生件数)。

「バードストライクの元凶」トモエガモが増えている! | |
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