以前、東京・永田町の都道府県会館で、新潟県の胎内市の観光関係者が行なったプレス発表の席上、「胎内市には日本一小さな山脈もあります。ロイヤル胎内パークホテルを基地にすればその縦走も可能です」と、PRしていました。
全体で数分の発表の中のセリフでしたので、多くのプレス関係者は左から右へと聞き流しましたが、ニッポン旅マガジン取材班は「!!!」。
こんな重要なネタを聞き流すはずもありません。
さてさて、胎内市の観光関係者が「日本一小さい山脈」とPRしたのは、櫛形山脈。
主峰は櫛形山で568.0m。鳥坂山(とっさかやま/438.8m)や大峰山(399.5m)などが連なる山脈で、国土地理院の2万5千分1地形図『中条(村上) 』 にも櫛形山脈と記されていますから、国土地理院認定の地名でもあるのです。
全長は直線距離で13.5km。櫛形山から大峰山にかけての「橡平(とちだいら)さくら樹林」は国の特別天然記念物に指定されています。
地理的には、飯豊連峰の造山活動期に西へ押し出されてできた、典型的な褶曲地形。あまり聞き慣れない言葉ですが、櫛形山脈断層帯も存在します。
新潟県は実は、日本でもっとも古い記録が残る「石油の採掘地」で、『日本書紀』に、668(天智天皇の7)年、「越の国より燃土、燃水を献(たてまつ)る」」とあるのは、櫛形山脈山麓の黒川地区に産する石油です。
天智天皇を祭神に祀る近江神宮では毎年7月7日に『燃水祭』を齋行していますが、献上した側の胎内市黒川でも7月1日に『燃水祭』を催し、日本で最古といわれる油坪から採取した臭水(くそうず)を近江神宮に献上しています。油坪は国の史跡に指定されシンクルトン記念公園として整備されています。シンクルトンは、明治6年に黒川村に来て、原油の採掘技術を指導したイギリス人医師の名前です。
大沢登山口には大沢遺跡もあってストーンサークルも見つかっています。
地質学的な定義でいう山脈(mountain range)とはプレートの相互作用によって形成された山の集合。つまり櫛形山脈はプレートの作用を受けた褶曲山脈なので、地質学的な定義での山脈にも当てはまるというわけ。
櫛形山脈が日本最小なら、逆に日本最長はどこかといえば、日本最長の山脈は奥羽山脈で、青森県の夏泊半島から栃木県那須岳連峰まで約500kmにわたって連なっています。
奥羽山脈:櫛形山脈=37:1。このスケールの違いには驚かされます。
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