「諏訪之瀬島で爆発2回」などとニュースに流れますが、富士山に関しては噴火予想などとなっていて、爆発と噴火がちゃんと使い分けられています。実は、まったく知られていない、この爆発と噴火の違い。富士山は噴火はすれども爆発はしないというのが気象庁の定義なのです。
「爆発」が使われるのは、実は鹿児島県の4火山のみ!
鹿児島地方気象台が毎月定期的に発表する「桜島の月別の爆発回数」。
2021年〜2023年は、年間84回〜89回の爆発が記録されており、その期間でもっとも回数が多かった2023年10月には月間33回を数えているので、その前後に火山活動が活発になったことがわかります。
実は、気象庁が爆発という言葉を日常的使っているのは、鹿児島地方気象台管内の桜島、諏訪之瀬島、霧島山、口永良部島といずれも霧島火山帯に属する火山で、鹿児島県内のニュースでは日常的に使われる言葉ということに。
気象庁の噴火の定義は、「火山現象として、火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)を放出または溶岩を流出する現象」ですが、その規模は様々なため、「噴火の規模については、大規模なものから小規模なものまで様々であるが、 固形物が噴出場所から水平若しくは垂直距離概ね 100~300m の範囲を超すものを噴火として記録する」と定め、噴火の情報を気象台が発表する決まりになっています。
毎月のように噴煙を上げる桜島に、100m~300mの噴火をすべて数えるという「噴火記録の基準」をを当てはめるのは難しいということから、気象庁では、桜島における爆発(爆発的噴火)を次のように定義しています
1)爆発的噴火
(略して爆発です)
2)噴煙量階級3以上の有色噴煙を伴う噴火
(気象庁では噴煙量を噴煙の高さと幅から1~6の6段階に分けて観測。噴煙量階級3は、噴煙の高さが概ね1000m以上の噴煙に相当)
つまりは、桜島では噴煙が1000mに届かない場合、噴火とは呼ばず、爆発的噴火(爆発)としているのです。
さらに「爆発地震を伴い、爆発音または体感空振または噴石の火口外への飛散を観測、または鹿児島地方気象台の空振計で3Pa(パスカル)以上、あるいは桜島島内の空振計のいずれかで10Pa以上の空振を観測した場合に爆発的噴火とする。ただし、上記の条件を満たした場合でも噴煙に特に変化が見られない場合には噴火としない」と定義しています。
さらに細則で、「噴石の火口外への飛散の観測」を「南岳山頂火口では噴石が少しでも火口外へ飛散した場合、昭和火口では噴石が火口から水平距離概ね500m以上飛散した場合」と定義して、運用しています。
その定義を受けて、桜島島内には多数の地震計、傾斜計、伸縮計、GNSS(汎地球測位航法衛星システム=衛星を用いた測位システム)、監視カメラのほか、3ヶ所(西側の「横山観測点」、南東の「瀬戸観測点」、北側の「あみだ川観測点」)に空振計が設置され(空振計は鹿児島市街の東郡元町にも設置)、気象庁が常時観測しているのです。
全国50の「常時観測火山」(「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として火山噴火予知連絡会によって選定された50火山)のうち、気象庁が「噴火」と「爆発」を使い分けているのは、桜島、諏訪之瀬島、霧島山、口永良部島のわずかに4火山のみ。
同じ鹿児島県内の「常時観測火山」でも、薩摩硫黄島は対象外で、水蒸気噴火、噴火という言葉を使っています。
気象庁は「爆発」について、「学術的な定義があいまいで、誤解を生む」との理由から、2019年に全国では「噴火」に統一していますが、例外的に「極力使用を控えるが、場合により使用する用語」と認めていることから、鹿児島地方気象台は「地元で定着している」という理由で、今も爆発を使っているのです。
地元の南日本新聞、鹿児島テレビなども、鹿児島地方気象台に準じて「爆発」を使い、全国ネットのテレビ放送でも「桜島で爆発」と報道されています。
【知られざるニッポン】vol.76 火山の爆発と噴火には違いがある!? | |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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