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【知られざるニッポン】vol.22 糖度20度! 幻の「花御所柿」

柿の中でもブランド柿になっているのが富有柿(ふゆうがき)。晩秋になれば通販などでは各地のブランド柿が贈答用に並んでいますが、ネット販売でもほとんど出回らない「幻の」柿が鳥取県の花御所柿です。この柿、糖度はなんと20度というフルーツ全体のなかでもとんでもない糖度を誇っていますが、なぜか「幻」。その理由を探ってみました。

天明年間に渋柿に御所柿を接ぎ木して誕生

鳥取県で栽培される柿は、岐阜県がルーツの富有柿、中国地方特有の柿で戦国時代には干し柿にして保存したという西条柿、そして注目の花御所柿が生産されています。
西条柿は渋柿なので渋抜きをしなければなりません。かつてはアルコールで渋抜きしていましたが、現在ではすべてドライアイスで渋抜きをして市場に出回っています。
富有柿は、御所系の柿で、幕末の安政4年(1857年)に美濃国大野郡居倉村(現・岐阜県瑞穂市居倉)の小倉初衛が栽培を始めた甘柿。これが東北から紀伊半島など、全国に栽培が広がった富有柿です。

花御所柿は、富有柿よりもさらに歴史があり、天明年間(1781年〜1789年)に、八頭郡大御門村(おおみかどそん)に住む農民・野田五郎助(のだごろうすけ)が、伊勢神宮参拝の帰りに食べた大和国(奈良県9の御所柿がおいしかったので、枝を持ち帰って渋柿に接木したのが始まりとか。当時は五郎助柿と呼ばれていました。

明治41年、米子で開催された山陰鉄道(現・山陽本線)の米子・鳥取間の開通記念博覧会で一等となって一躍有名になり、その後「花御所柿」と命名されました。

なぜ花御所というのかといえば、野田五郎助が五郎助柿を栽培を始めた地が大御門村大字(おおあざ)花字(あざ)花御所だから。
ちなみに五郎助さんの生まれたのが殿。地区内には大門、西御門(にしみかど)など由緒ありげな地名が多いのが特長です。
現在では町村合併で群家町を経て八頭町(やずちょう)となっていて、古き歴史も忘却されそうな状況ですが、この花御所にはどうやら、いわくも。
後醍醐天皇が隠岐を脱出後、この地に行宮されたときに、西御門と命名されたことが西御門地区の地名の起源。安徳天皇行宮遺跡、そして古くは応神天皇行宮伝承、花山法皇行幸地なども町内にあって、都人とのつながりが深かったことがわかります。

栽培されているのはわずかに20haだけ!

さてさて、前置きが長くなりましたが、その花御所柿ですが、鳥取県の東部、因幡地方、それも八頭町のごく一部でしか栽培されていません。栽培面積は20haほどで、その大部分が八頭町内(旧郡家町)。
「なぜこの限られた地区だけしか良いものがとれないのか詳しい事はわかっていません。熟していない時はまだ渋く、11月になって霜がおりるようになると葉が落ちはじめ、実も赤くなって甘くなります。平均糖度は18度くらいですが、20度超えもザラ」とJA関係者の話。
糖度18度といえばメロン並み。それを超えるとすれば、完熟したブドウ並みの糖度ということに。

「甘さは日本一で、生産量が少ない年にはすぐに売り切れてしまう花御所柿ですが、栽培がとても難しいというのが、全国に広がらない理由では。そして土壌や天候も最適な地が限られるのでは」と地元農協では推測しています。
地元、八頭町で花御所柿が収穫されるのは、11月中旬〜12月上旬と他の品種に比べかなり遅め。
出荷量の6割は贈答などの進物用になっていて、地元でもあまり流通しないので、さらに幻に。
JA鳥取いなば郡家柿選果場で季節になるとネットでの販売(JA鳥取いなばのええもん届ける便)を受け付けています。

JA鳥取いなば郡家柿選果場
名称 JA鳥取いなば郡家柿選果場/じぇいえーとっとりいなばこおげかきせんかじょう
所在地 鳥取県八頭郡八頭町市谷18
関連HP JA鳥取いなば公式ホームページ
電車・バスで 若桜鉄道隼駅から徒歩17分
ドライブで 鳥取自動車道河原ICから約7km
駐車場 20台/無料
問い合わせ JA鳥取いなば TEL:0858-72-3197
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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