福島県郡山市熱海町安子島にある歴史ある水力発電所が沼上発電所(ぬまがみはつでんしょ)。不毛の大地だった郡山の安積原野にオランダ人技術者ファン・ドールンの指導で明治15年10月1日に完成した安積疏水ですが、その安積疏水と水猪苗代湖との40.9mの落差を利用し、明治32年6月、発電が開始されたもの。
送られた電気で郡山は工業都市へと変貌
沼上発電所の設置により、日本で初めての高圧送電(1万1000V)を利用した送電が、24km先の郡山市内まで行なわれ、その電力を利用して郡山市の製糸業、紡績・繊維産業、製材業、精米業が発展していきました。
明治32年6月送電開始の沼上発電所を建設したのは、郡山絹糸紡績会社。
郡山絹糸紡績会社は地元で製糸業(生糸商)を営む正製組(せいせいぐみ)と真製社の幹部が、中央の大倉喜八郎(大倉財閥)、渋沢栄一(三菱財閥)の資本参加を受けて創業した企業。
発電量は水力発電所としては当時国内第2位の300kWを誇り、長距離特別高圧送電施設は日本初のものでした。
沼上発電所は、日本の長距離送電の草分け的存在にもなっているのです。
明治31年、沼上発電所から送電される電力を期待して、郡山絹糸紡績会社が設立され、さらに大正7年には福島に福島精練製糸株式会社が誕生し、大正12年、日東紡績株式会社が創立し、現在の日東紡が誕生しています。
発電所の左隣を流れ落ちていく水は、当時、沼上隧道から勢いよく落下する様子が滝のようだったため、「沼上瀑布」、「震天瀑」と呼ばれて名所にもなりました。
現在の発電所建屋は昭和61年に建て替えられたもの。
東京電力が保有するため、発電した電気は郡山へは送られていません。
磐越西線、国道49号沿いにあるので、列車や車の車窓からも見学できます。
沼上発電所は、「安積疏水・日橋川等の水力発電関連遺産」として、竹之内発電所(郡山市)、丸守発電所(郡山市)、切立橋(会津若松市)、雄国隧道(喜多方市)とともに経済産業省の近代化産業遺産(「東北地方の産業振興の基礎を築いた水資源・交通・都市基盤整備の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定されています。
さらに日本遺産「未来を拓いた『一本の水路』-大久保利通“最期の夢”と開拓者の軌跡 郡山・猪苗代-」の構成資産にもなっています(明治後期の近代日本を支えた発電所=沼上・竹之内・丸守・猪苗代第一・猪苗代第二発電所)。
沼上発電所 | |
名称 | 沼上発電所/ぬまがみはつでんしょ |
所在地 | 福島県郡山市熱海町安子島 |
関連HP | 郡山市観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | JR磐梯熱海駅からタクシーで20分 |
ドライブで | 磐越自動車道磐梯熱海ICから約9km |
問い合わせ | 東京電力ホールディングス猪苗代事業所 TEL:0242-22-4611 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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