長野県岡谷市、諏訪湖のほとり、小坂城近くの高台に建つのが、小坂観音院。もともとは諏訪大社の社房で、中世には、諏訪氏の祈願所となった名刹。山門は対岸の高島城を望むかたちで建てられてます。井上靖の著『風林火山』では、武田勝頼を生んだ由布姫(ゆぶひめ)の暮らした寺として描かれています。
境内には諏訪御料人・由布姫の供養塔も
諏訪頼重の娘・由布姫は、諏訪氏滅亡の際に、14歳で信玄の側室となり、19歳で勝頼を生み、その後、病気の療養を兼ねて緑豊かな観音院で暮らしたとされ、病のため弘治元年(1555年)、25歳で夭逝(ようせい)したことになっています。
平成19年の大河ドラマ『武田信玄』では、武田・諏訪両家の跡継ぎを生んでほしいとの山本勘助の説得を由布姫が受け入れた結果、勝頼を生むというストーリーに。
境内には由布姫の供養塔である「諏訪御料人供養塔」があり、そうした物語を裏付けています。
観音信仰のもととなる本尊の木造十一面観音坐像は、永正3年(1506年)の建立で、正徳5年(1715年)再建の観音堂に安置。
一帯は、小坂観音院寺叢として岡谷市の天然記念物に指定。
天然記念物の柏槇(イブキ)は空海の手植えと伝えられ、樹齢1200年以上。
参道には樹齢400年を越えるサワラの並木があるほか、カエデ・ナラ類なども多いので新緑、紅葉も実に見事です。
5月中旬から秋にかけてはこの寺の森で、ブッポウソウが子育てを行なうほど。
隣接の小坂公園に昭和44年から植栽を開始したアジサイも800株になり例年7月上旬~7月中旬には見事に咲き誇ります。
井上靖『風林火山』では由布姫、新田次郎『武田信玄』では湖衣姫
武田信玄の側室となった諏訪頼重の娘は、井上靖の『風林火山』では由布姫、新田次郎の著『武田信玄』では湖衣姫(こいひめ)、そして地元に残る資料では諏訪御料人などといわれているが、はっきりしたことはわかっていません。
同じ大河ドラマでも昭和63年に中井貴一が信玄を演じて好評だった『武田信玄』では、湖衣姫(=南野陽子)、平成19年のNHK大河ドラマ『風林火山』では、薄幸のヒロインは由布姫(=柴本幸)で「ゆうひめ」と読ませています。
甲府市で、信玄公祭りの前夜祭として『湖衣姫コレクション』が行なわれ、これまでは湖衣姫の方が有名でした。
小坂観音院境内の案内板は「由布姫の供養塔」と由布姫を採用していますが、これは平成19年のNHK大河ドラマ『風林火山』放送があってのこと。
武田信玄は由布姫(湖衣姫)の父である諏訪頼重が降伏しながら切腹させるなど諏訪の地に怨恨を残しています。
そんな諏訪氏遺臣への懐柔策として、子を諏訪四郎勝頼(勝頼の「頼」は祖父となる頼重から)と名乗らせ伊那郡代として 高遠城に居住させたのです。
由布姫の墓も諏訪盆地にはなく、高遠城下、建福寺(長野県伊那市高遠町西高遠)にあります。
小坂観音院 | |
名称 | 小坂観音院/おさかかんのんいん |
所在地 | 長野県岡谷市湊4-15-22 |
関連HP | 岡谷市観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | JR岡谷駅南口からスワンバス内回り線で14分、山吉前下車、徒歩8分 |
ドライブで | 中央自動車道岡谷ICから約6km |
駐車場 | 第1駐車場(50台/無料) |
問い合わせ | 岡谷市商業観光課 TEL:0266-23-4811/FAX:0266-23-6448 |
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