長野県松本市安曇、上高地の最奥、奥上高地と呼ばれる徳沢にあるキャンプ場が、徳沢キャンプ場。「氷壁の宿 徳澤園」が運営するキャンプ場で、手ぶらでキャンプ、「みちくさ食堂」の利用も可能。草原となっているのは、昭和9年までは牛が放牧される上高地牧場の牧草地だったから。
上高地バスターミナルから徒歩2時間の別天地!
上高地バスターミナルから7km、徒歩2時間、標高1560mほどの場所にあるキャンプ場です(開設は4月下旬〜11月上旬)。
ここまで来れば、観光客の姿も減り、登山者がメインとなります。
キャンパー向け多目的利用施設「TOKUSAWA BASE」も設備される徳沢キャンプ場。
前穂高東壁、奥又白谷などを一望できる展望台、ボルダリング体験ウォールも備わり、専用Wi-Fiでインターネットを使うこともできるほか、雨の日などは読書なども可能。
レンタルテントを利用し、手ぶらでキャンプも可能。
予約(当日可)で夕食を「みちくさ食堂」(『氷壁の宿 徳澤園』に併設)利用という手もあり、初心者のキャンプ初体験の地としても絶好です。
しかもレンタルテントを利用すれば昭和31年から多くの岳人や写真家から親しまれてきた山小屋「徳沢ロッヂ」の外来入浴(有料)も可能。
食材買い出しができない、直火、喫煙禁止などという制限はありますが、上高地の中でも別天地でキャンプを楽しむことができます。
徳沢園の紅葉は、例年10月中旬〜下旬頃が見頃(涸沢カールは9月下旬〜10月上旬、横尾山荘あたりだと10月中旬)。
「氷壁の宿 徳澤園」前にそびえるカツラの大樹の黄葉は例年10月15日〜10月20日頃。
実は紅葉シーズンが、「氷壁の宿 徳澤園」がもっとも混雑する時期なので、宿の宿泊を計画する場合には早めの予約が必要。
井上靖『氷壁』と「氷壁の宿 徳澤園」の関係とは!?
小梨平、明神、徳沢は、安曇村島々の上條百次良(かみじょうひゃくじろう)が明治18年5月に夏季の放牧を開始した牧場の跡地(上高地牧場の放牧地)。
当時、畜産振興を掲げた長野県が、自治体(安曇村)に種馬を好条件で貸し出したのが開場のきっかけに。
平坦だった上高地の小梨平〜徳沢に目をつけ、当時のメインルートだった徳本峠(とくごうとうげ)を越えて牛馬を運搬、最盛期には400頭を超える乳牛、食用の牛馬を飼育していました。
それまで木を切って梓川で松本へと流す杣人(そまびと)と、ウエストンをガイドしたことで知られる上條嘉門次(かみじょうかもんじ)に代表される猟師(明神池でイワナも飼育)の世界だったのです。
大正11年に新島々までの鉄道(上高地線)が完成し(バスの上高地乗り入れは昭和10年)、昭和8年には上高地ホテル(現・上高地帝国ホテル)が開業、上高地への入込み客が増加すると、牛が危害を加える恐れがあることから、上高地牧場は昭和9年に廃止されています。
「氷壁の宿 徳澤園」は上條百次良が開場した上高地牧場を前身にする山荘。
牧場は閉鎖しましたが、蝶ヶ岳、槍ヶ岳、穂高岳への登山口にあたる徳沢は、登山者の増加により宿泊施設が必要となり、山小屋に衣替え。
当主の上條靖大(かみじょうやすひろ)さんで5代目となる上高地屈指の老舗なのです。
夏場だけでなく、昭和22年頃〜平成25年の間は徳沢冬期小屋も開設。
小屋番を常駐させ、電話線を引いていましたが、その徳沢冬期小屋が舞台となったのが、井上靖の山岳小説『氷壁』。
北アルプス前穂高岳東壁での登山クラブ「三重県岩稜会」によるナイロンザイル切断事件(昭和30年1月2日/市販が始まったばかりのナイロン製クライミングロープは鋭角の岩にこすれると切断し、三重大学1年生・若山五朗が滑落死)をヒントに、関係者を取材して昭和31年、『氷壁』を270回にわたり朝日新聞に連載。
厳冬の前穂高岳東壁ということで、登山基地も救助の拠点などもすべて徳沢冬期小屋ということになり、一躍、徳沢は有名になったのです。
井上靖ファンや山を愛する人の中では、「氷壁の宿 徳澤園」は特別な存在でもあるのです。
徳沢キャンプ場 | |
名称 | 徳沢キャンプ場/とくさわきゃんぷじょう |
所在地 | 長野県松本市上高地 |
関連HP | 徳澤園公式ホームページ |
電車・バスで | 松本電鉄新島々駅から松本電鉄バス上高地行きで1時間10分、終点下車、徒歩2時間 |
ドライブで | 長野自動車道松本ICから約33kmで沢渡地区駐車場。路線バスで上高地バスターミナル(マイカー規制実施中) |
駐車場 | 沢渡地区駐車場(2156台/有料) |
問い合わせ | 徳澤園 TEL:0263-95-2508/FAX:0263-95-2512(4/27~11/3)・FAX:0263-39-2041(11/4~4/26) |
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