日本各地の温泉に異変が見受けられます。湧出量の低下、そして泉温の減少、さらには泉質の変化で以前よりも効能が弱まったという温泉もあります。公衆浴場や旅館で、廃業を余儀なくされる場所も出てきていますが、なぜ、温泉に異変があるのでしょう。そこには需要と供給のバランスの崩壊が。
「貴重な温泉資源を有効に使う」時代が到来!
源泉数・湧出量ともに日本一を誇る、大分県別府市でも異変は顕著です。
たとえば、天満町にある天満温泉は、市街地で唯一100度以上の温泉(塩化物泉)が自然湧出するという貴重な自噴泉でしたが1986年頃に自噴がストップ。
以降はポンプアップに切り替えて使っています。
別府温泉は火山性の温泉で、鶴見岳の地下にあるマグマだまりが別府温泉の熱源。
つまりは地下水が温められたもので、それが証拠に草津温泉では雨の多い季節の3ヶ月〜6ヶ月後に湧出量が増加しています。
火山性でない有馬温泉は、世界に類を見ない熱いプレート(フィリピン海プレート)の上に断層があるため、高温の温泉(地下水)が地上に上がってくるというメカニズム。
同様に南紀・白浜温泉も地下深くに太平洋から潜り込んだプレートからにじみ出た高温の水分が湧出するもの。
火山性、非火山性ともに温泉は、地下水が温められたものだとおわかりいただけよう。
別府温泉の場合は、高度経済成長時代に、地下の熱水(温泉)の通り道である南立石地区に大型のホテル、旅館が増加し、大量に温泉がくみ上げられるようになったことから、自噴泉が激減。
現在では往時のの3分の1にまで減っているのです。
温度の低下、泉質の変化は、少なくなった地下の熱水にあらたに低温の地下水が混ざることで、低温化、「温泉が薄まってアメリカン化」が進むことになるのです。
源泉かけ流し、そしてドバドバ温泉(豊富な湧出量)にこだわるあまり、供給量が増え、「地下水+熱源」の供給が追いつかないことになっているのです。
実は温泉法ではまったく成分がなくても、温度として25度以上あれば、ただそれだけで法律上は温泉に該当します。
とくに西日本では石灰岩地帯などを除いて地下水はほとんどが軟水なので、地下に熱源さえあれば、泡立ちの良い単純泉が湧出するのです。
地下1000m以上の深さにある地下水をくみ上げる「大深度掘削」の技術の誕生で、この30年間で都市部の温泉も2.5倍に増えています。
地中深く1000m以上掘れば、温められた地下水が湧くので、これが近年増加している温泉です。
バブル経済の中で発案された「ふるさと創生事業」(1988年4月25日に竹下内閣が発案)の1億円を使って、自治体主導で温泉開削が行なわれたこともあり、「温泉地ではないところの温泉」が数多く誕生しました。
ところがこの「大深度掘削」の温泉も、湧出量の減少という悩みを抱え、減少するとさらに掘削という悪循環に陥り、枯渇化した温泉も現れています。
温度が高い、もしくは量が多いという源泉はそれだけ良質な温泉ということになりますが、今後は「貴重な温泉資源を管理」、つまりは「温泉を守る」という考え方が重要になっていくと、多くの専門家は警鐘を鳴らしています。
熱海や箱根で行なわれている「集中管理」もひとつの対策です。
北海道・洞爺湖温泉では、供給量の制限を行なって、需要と供給のバランスを保っていますが、2025年は過去に全国各地で行なわれていた「ひたすら汲み上げる」姿勢から「貴重な温泉資源を有効に使う」スタイルへの転換期といえるのかもしれません。
日本の温泉に異変が!? 温泉の枯渇、温度低下が全国で! | |
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