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飯出敏夫著『温泉百名山』(集英社)に学ぶ、温泉と名山との密なる関係

飯出敏夫著『温泉百名山』(集英社)

温泉達人と呼ばれ、温泉ソムリエの間では有名人の筆頭にも挙げられる飯出敏夫さん。その飯出さんが著したのが、『温泉百名山』。温泉にも名山同様に「品格」、「歴史」、「個性」を求め、下山後のひと風呂と名山を組み合わせた、温泉達人ならではの至高の一冊になっています。

名湯目線(名湯基準)での山選びで100座・100湯を選出

熊の湯温泉(熊の湯ホテル/長野)で「いいゆ!手ぬぐい」を広げる飯出さん

温泉達人でもあり、同時に山男でもある飯出敏夫さん。
温泉取材歴40年のベテランですが、平成28年、白山登山をきっかけに、元来の山好きに火がつき、『日本百名山』(深田久弥)を意識するように・・・。
翌年、『日本百名山』はすべて登り尽くしますが、百名山の登山口には意外にも温泉がないことに気づき、「温泉のある名山」を自らが100座選定することを決意したのです。

「品格」、「歴史」、「個性」は、深田久弥が『日本百名山』を選ぶ基準ですが、「実は、温泉にもこの品格、歴史、個性がピタリと当てはまるんです」(飯出さん)というわけで、平成30年に実際に、山に登り、湯に浸かりの実踏調査をスタート。
令和3年に100山・100湯の実踏を終え、令和4年10月に『温泉百名山』として上梓したもの。

温泉の「品格」、「歴史」、「個性」は、たとえば昔ながらの温泉地や温泉郷には、地元の人が尊崇する湯権現(神仏分離後は温泉神社)が鎮座し、地元の人が愛用する共同湯が健在の場所が多いのです。
さらに名湯であれば、源泉かけ流しだったり、個性的な泉質など、豊かな個性が裏打ちされているのです。

第一の基準「温泉の品格」
人に人格があるように、温泉には「湯格」のようなものがあるとし、誰が見ても立派な温泉だと感嘆する温泉であること。

第二の基準「温泉の歴史」
昔から人間との関わりが深く、崇拝され、温泉街の一角に温泉神社や薬師寺が祀られているような歴史のある温泉であること。


第三の基準「温泉の個性」
芸術作品と同様に、泉質・現象 (色)・伝統 (湯治文化)など他にないような顕著な個性をもっていること。

奥塩原新湯温泉(湯荘白樺、栃木県)は高原山の登山とセット



名山と登山口の名湯が2ページ単位で紹介されていますが、通常の情報重視のガイドブックでは、見開きで紹介するのが基本です。
ところが、『温泉百名山』では掟破りともいえる片起こし(左ページから始まるので、ページの後半がページをめくらないとわかりません)。
実は、『温泉百名山』を選ぶ山湯行で、飯出さんは悪性リンパ腫や膝関節症などの病を三度にわたって克服。
その過程を含めたドキュメンタリータッチの内容で、「前進すれば、きっと山頂立てる」という信念の裏付けにもなっているのです。

名湯と、名湯を基地にして登る山という構成で、登山口に名湯がなければ、富士山でも外れてしまうわけで、まさに名湯目線(名湯基準)での山選び。
選ばれた山のなかでもっとも標高が低いのが、五頭温泉郷・村杉温泉の五頭連峰(五頭山913m/新潟県)です。
関東圏ですら知る人ぞ知る山ですが、実は行基開山という歴史的名山。
しかも中世には、出羽三山同様に吉野の蔵王権現が祀られ、修験道の山として栄えた歴史があるのです。
もちろん登山口となる村杉温泉も中世に開かれた歴史ある名湯で、飯出さんの選んだ「風雅の宿 長生館」は、なんと湯を開いた荒木家の末裔が営む庭園旅館なのです(宿としての創業は明治元年)。

有名温泉地の有名旅館が選から外れている例もあるので、温泉好きなら、飯出さんの目線(選択の基準)を知ることもでき、山好きなら、この「温泉百名山」、実際の登山に大いに活用ができます。

登山口からの往復コースタイム(休憩含まず)、基点となる温泉までのアクセス、温泉から登山口までのアクセス(公共交通&車)、コースの難易度(初級★、中級★★、上級★★★)なども記されているので、実用書としても大いに利用可能。

一見すると、深田久弥の『日本百名山』同様に、関西が少ない・・・というイメージを持ちますが、じっくりと吟味すると、なるほどな〜と温泉達人の厳しくも温かな目線を感じ取ることができます。
『温泉百名山』めぐりに、でかけましょう!

飯出敏夫著『温泉百名山』(集英社)に学ぶ、温泉と名山との密なる関係
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

温泉達人・飯出敏夫さんが選定!「温泉百名山」発表!

温泉ファンの間では知らない人はいないという温泉達人・飯出敏夫(東京都日野市)さん。飯出さんは日本全国の温泉紀行、登山ガイドを旅行雑誌などに寄稿、テレビ朝日『秘湯ロマン』などでも活躍。その集大成となるのが「温泉百名山」で、2021年11月26

 

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