岐阜県飛騨地方の一位一刀彫(いちいいっとうぼり)で名高いイチイの木。緻密で狂いが生じにくく加工しやすい、光沢があって美しいことから様々に加工されてきました。アイヌ語ではクネニ(ku・ne・ni)=弓・になる・木。アイヌは実を食用、利尿作用のある薬としたり、道北のアイヌは樹皮を着物を染める赤色の染料にしたのだとか。幹や枝は、弓や捧酒箸(イクパスイ=神や先祖にお神酒を捧げるときに使う儀礼具)、小刀の柄を作る材料にしました。
オンコはアイヌ語に非ず!
このイチイの木の俗称が「オンコ」。オンコという言葉をアイヌ語だと思っている北海道の人も多いのですが、北海道と北東北の方言(俗称)で、言葉の由来は定かでありません。
北海道ではオンコは古くから庭の主木として活用され、また、サカキやヒサカキが生育しない北海道では、神前の玉串にもオンコの枝で代用してきました。道東地方のイチイがエンピツ用材に使われたという歴史もあります。
これぞホントの、オンコ知新(お粗末!)。
羅臼にはオンコが茂る「巨木の森」がある
かつてはオンコの巨木が道内各地にあったと推定されますが、今や幻。北海道内でも、歌才のオンコ(黒松内町)、竜神のオンコ(北竜町)、伊達大滝上野のオンコ(伊達市大滝区上野町)、黄金水松の樹齢1700年のオンコ(芦別市黄金町)、そして羅臼町の幌萌オンコ公園くらいに限られています。
「オンコの巨木が今も残っていることは、かけがえのない地域の宝物」(黒松内町のガイドの話)であることに間違いありません。
そんなオンコですが、羅臼町には樹齢数百年から1000年というオンコの巨木が茂る「幌萌オンコ公園」があるのですが、地元の人はさほど関心がない感じ。羅臼町もPRに積極的とはいえません。
場合によっては入口駐車場からオンコ公園への道が下草刈りも行なわれていない時が。そんな時にはボウボウと伸びる草をかき分けて進むとオンコの巨木が林立する場所があります。
オンコ公園がある羅臼町幌萌といえば、平成26年に海岸隆起と大規模な地滑りで話題になった場所。本州ではまったく報道されていないのですが、この地滑りでアイヌ時代(中世)のチャシ(砦)が崩落しています。
オンコ公園の周囲にも先住民族の遺跡が残されていますが、充分な調査が行なわれていません。
場所は幌萌のスノーシェルターの間にオンコ公園という表示があるので、スピードはゆっくりめでドライブを。羅臼市街から行くと2つのシェルター=トンネルを越えたら左折です。
世界遺産の登録エリアではありませんが、時間に余裕があればぜひ巨木ウォッチングを!
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag