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【知られざるニッポン】vol.21 三朝温泉で「六感治癒」を果たせ!

「六根清浄と六感治癒の地」として三徳山(みとくさん=六根清浄の地)とセットで日本遺産に登録される三朝温泉(みささおんせん)。参拝の前に心身を清める「六感治癒」の地として三徳山参詣の基地となったのが三朝温泉です。三朝温泉の効能はよく知られていますが、古来の「六感治癒」をもう一度見直しましょう!

三朝温泉で「観・聴・香・ 味・触・心」の六感を治癒

三徳山三佛寺参詣では目・耳・鼻・舌・身・意を清める「六根清浄」は、まず、三朝温泉の湯につかって、身を清めて癒し、心を穏やかにして山に入る準備を整え、翌朝、三徳山へ入山するのがセオリー。

つまり、古から三朝温泉と三徳山三佛寺は密接な関係があるのです。
三朝温泉の開湯は、平安時代末期の応保3年(1163年)。源義朝(みなもとのよしとも)の家臣、大久保左馬之祐(おおくぼさまのすけ)が源氏の再興を祈願し、三徳山に赴いた際、楠の根元に白狼を発見。「参詣の道中に殺生はいけない」と考え、これを見逃したところ、妙見菩薩が夢枕に立って、木の根から湯が湧き出ていることを教え、「湯で人々の病苦を救うように」諭したと伝えられています。
これが三朝温泉に伝わる「白狼伝説」で、「株湯」として今もこんこんと湯が湧いています。

ではいかにして、「観・聴・香・ 味・触・心」の六感を治癒するのでしょうか?

(1)「味」と「香」=株湯・河原風呂

三朝温泉を代表する外湯で、温泉のルーツが株湯。そして三徳川の河原にある外湯「河原風呂」は、ともに三朝温泉の象徴。世界有数のラジウム泉から発する「湯の香」は三朝温泉から始まる三徳山参詣を予感させるに十分です。また飲泉により、体の中を清らかにする医療効果 も期待できます。三朝温泉の温泉を活用した研究は、岡山大学地球物質科学研究センター、三朝温泉病院、岡山大学病院三朝医療センターなどで実施されています。
「ラドン(放射線元素ラジウムが崩壊してできる気体)は呼吸で体内に入ると、血液を巡り全身の細胞を刺激して働きを活性化させます。つまり新陳代謝を促進し、免疫力や治癒力を高める手助けをしてくれるということです。これを「ホルミシス効果」と言い、三朝のラドン泉はホルミシス効果を与えるとして全国的に注目度が高まっています」(三朝温泉病院)

外湯のひとつ河原風呂
三朝温泉のルーツを伝える共同湯の株湯

(2)「観」=三朝のジンショ

三朝温泉を代表とする民俗行事が『三朝のジンショ』。霊山・三徳山周辺から伐り出した藤カズラを編んで全長150m、胴回り1.5mの長大な綱をつくり、東西に分かれて引き合う勇壮な綱引き。人と自然が融合した独特な祭事となっています。勝負が始まる前に、綱を地面に打ち付けるように曳き出すことで、邪気や災厄を祓うとも。1回勝負で、東が勝てば豊作、西が勝てば商売繁盛とのこと。
毎年5月4日に実施。国の重要無形民俗文化財に指定。

ゴールデンウィークに行なわれる『三朝のジンショ』

(3)「聴」と「触」=さいとりさし

三朝温泉に伝わる座敷芸が「さいとりさし」(刺鳥刺)。藩主の鷹狩りで使う鷹の餌となる小鳥を獲る天下御免の鑑札を持つ「さいとりさし」の横暴を風刺して滑稽に踊られたものが、鳥を捕ることから転じて、「嫁をとる」、「福をとる」などとして祝いの芸事に転じたもの。三徳山を舞台にした狂言風の踊りで三徳山との関係が民衆に浸透していたことを示しています。
金曜・土曜の夜間に三朝温泉観光商工センターで開催される「あったか座」で公演されるなど不定期公演になっています。
鳥取県無形民俗文化財に指定。

【さいとりさし(刺鳥刺)歌詞】

さいとりさし 出かけた 出かけた 出っかけた さいとりさしが 出っかけた
昨日も天気 今日も天気 天気続きで さいとりさしが 出っかけた
因幡伯耆は池田の殿さん 鷹の餌を刺す さいとりさしでござるよ
よ笹の中を 押し分け見れば 一つヒヨドリ 二つがフクロウ 三つがミミズク 四つが夜鷹
五ついるかに 六つが百舌鳥(もず) 七つ長尾に 八つが山鳥 九つ駒鳥 十で鳶(とんび)
悔しや小鳥を逃がしてしもた どこへ行くかと よくよく見れば 三朝温泉 三徳のお寺
やれやれ来たぞ 寺の御門に 一服すれば そこへ坊さん カンシャク筋 張り立てて 申しそこなる
さいとりさし様よ 寺の地中で 殺生はならぬ 何こらぬかす 坊主のくせに 天下御免の さいとりさしでござる
いかに坊さん 怒ったとても 天下御免のさいとりさしでござる 坊主見ぬ間に 刺してはやるぞ

(4)「触」と「心」=木屋旅館

創業は明治元年という三朝温泉の老舗旅館。木造3階建ての旅館。大正期の温泉施設の原型(手掘りの源泉の湯として男女別の風呂があります)を保っており、入浴以外の温泉利用として天然温泉の地熱を利用した「オンドル」施設が現存。まさに昭和の温泉文化を代表する建物。「穴ぐらの湯」は、ミストサウナの湯気を吸う温泉吸引の入浴法。源泉から出る大量の湯気を吸うことにより、鼻や喉などが活性化され呼吸器系の疾患に効果があるのだとか。もちろん飲泉も可能。
「豪華さよりも丁寧な調理を心がけ、美味しい料理となるよう、日々味付けの研究に切磋琢磨しております」(杉本恭信料理長)
国の登録有形文化財。

源泉かけ流しの手掘り湯

(5)「聴」と「心」=三朝橋

木橋を意識した昭和9年架橋のコンクリート橋で、「河原風呂」とともに三朝温泉のシンボルになっています。三徳川のせせらぎと、カジカガエルの鳴き声が耳と心を癒やしてくれます。橋のたもとには三朝温泉名物の「河原風呂」があります。
国の登録有形文化財。

橋の下の河原に河原風呂が

(6)「観」と「心」=旅館大橋

木造3階建の旅館。居ながらにして眺望が楽しめるよう客室すべてが、三徳川沿い。しかも部屋は数寄屋造りで、部屋ごとに床の間、天井、 欄間等の意匠が異なります。部屋ごとに用いた材質により、南天の間・桜の間といった銘木の名が付いています。昭和初期の建築技術の水準を今に残した木造和風の名旅館。元々湯船は川(三徳川)で、湯が自噴していた岩をそのまま湯船に生かし屋根で囲っているだけという「天然巌窟の湯」も心癒されます(自家源泉5ヶ所のうち3ヶ所が自噴!)。
「下の湯・中の湯はラジウム泉、上の湯に関しては三朝温泉では当館だけが持つトリウム泉がございます」(旅館大橋)
国の登録有形文化財。

川に臨んで建つ木造3階建ての旅館大橋が印象的

(7)「観」と「心」=南菀寺(なんえんじ)

三徳川の北岸、三朝温泉街の高台に建つ臨済宗の寺。独山禅師(本名林松次郎)は、神経痛を三朝温泉で療養し、全快したのに感謝して、この地に南苑寺を創建。登録有形文化財に指定の本堂での座禅は、心を落ち着けてくれます。竜宮城を思わせるユニークな山門も参拝者の目を楽しませてくれます。境内からは温泉街を一望に。
国の登録有形文化財。

龍宮城を思わせる山門、山上に本堂
三朝温泉河原風呂
名称 三朝温泉河原風呂/みささおんせんかわらぶろ
所在地 鳥取県東伯郡三朝町三朝903-1
関連HP 三朝温泉観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR倉吉駅から日ノ丸バス三朝温泉行きで25分、終点下車、徒歩3分
ドライブで 米子自動車道湯原ICから約37km
駐車場 河川敷駐車場(100台/無料)
問い合わせ 三朝温泉観光協会 TEL:0858-43-0431
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

取材・画像協力/鳥取県・鳥取県東京事務所
三朝町教育委員会社会教育課の「日本遺産」申請資料などを参考にしています

【知られざるニッポン】vol.20 投入堂への行場道で「六根清浄」を果たせ!

2016年10月6日

 

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