毎年8月15日に長崎市で行なわれる『精霊流し』(しょうろうながし)。初盆の人の遺族が故人の霊を弔うために手作りの精霊船(しょうろうぶね)を造り、「流し場」と呼ばれる終着点まで船を曳いて、極楽浄土へ送り出すという長崎の伝統行事です。昭和49年リリースのグレープが歌う『精霊流し』(作詞・作曲:さだまさし=長崎出身)で有名に。
グレープの『精霊流し』のイメージと異なり、賑やかな伝統行事
耳をつんざくほどの爆竹の破裂音に鉦(かね)の音、「ドーイドーイ」の掛け声が交錯する喧騒の中で行なわれ、精霊船も山車(だし)のような造りで、長く突き出した船首(みよし)には家紋や家名、町名が大きく記され、実際に見学するとグレープの歌う『精霊流し』のしみじみとした感じとは異なるイメージだということに。
しかも環境汚染の可能性があるので、現在では海に流すこともありません。
2016年にはさだまさし、さだ企画社長・佐田繁理、シンガーソングライター・佐田玲子の母で、『無縁坂』のモデルという佐田喜代子さんの精霊船も流されています。
「今年の盆、わが家では母の船を出す。昔から男船、女船と呼んで女性の船は多少遠慮をして小さなものにする。という心遣いがあるのだ。父を送った船はかなり壮大なものであったが母の船は小さくとも、母の好きだった生花で美しく飾りたいと思う。喪主の僕は、黒紋付きにはかまの正装でぶら提灯を下げて精霊船の列の一番先頭を独りとぼとぼと歩く。まことに華やかで切ない行事だ」(長崎新聞にさだまさしが連載するエッセー『風のうた』/2016年8月7日付)
ちなみに、さだまさし作詞・作曲の『精霊流し』は、さだまさしの母方の従兄が水難事故で亡くなってしまった際の新盆の『精霊流し』がモチーフになっています。
見学するなら長崎県庁前の県庁坂が一番人気
長崎市内だけでも制作される船は、毎年1000以上。
実際に、かなり大掛かりな船もあり、道路で船を作る場合や全長2m以上の船を流す場合は、警察署の道路使用許可が必要なため、船が大型の人は準備に時間を費やしていることに。
初盆でない場合には、精霊船は制作せずに藁を束ねた小さな菰(こも)に花や果物などを包む供物「こも包み」となります。
精霊船が通るメインストリートは、思案橋~県庁坂~大波止で、長崎市街の中心部では交通規制が実施されます。
精霊船を見てみようという場合には、長崎県庁の前の県庁坂がもっともポピュラーな場所です。
精霊流しの由来は諸説あり、江戸時代に通訳などで長崎に来た華僑(かきょう)が伝えた「彩船流し」(さいしゅうながし)という説が有力です。
中国風に爆竹を鳴らすのは魔除けということに。
精霊流し(長崎市) | |
開催日 | 8月15日 |
所在地 | 長崎県長崎市 |
場所 | 長崎市市内中心部一帯(メインストリートは思案橋~県庁坂~大波止) |
問い合わせ | 長崎市コールセンターあじさいコール TEL:095-822-8888 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
取材・画像協力/(一社)長崎県観光連盟
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