テレビの旅番組で、タレントが道を尋ねた際、地元の老人が「丁字路」(ていじろ)と発音したことで、タレントたちが「T字路じゃなく、丁字路」と笑うシーンが問題となったことがありますが、「丁字路」、「T字路」どちらが正しいのでしょう。道路交通法では、当然ながら「丁字路」となっています。
本来の「丁字路」が「T字路」になったのは戦後のこと
「丁字路」の丁は、現在ではあまり耳にすることのない言葉ですが、甲・乙・丙・丁(こう・おつ・へい・てい)という十干(じっかん)の順序。
いわゆる1番、2番、3番、4番の意味ですが、交差点形状のT字路の「T」が「丁」に似ているため、もともとは「丁字路」と称されていました。
大正2年、萬鐵五郎(よろずてつごろう)が制作した木版画にも『丁字路』(ていじろ)がありますが、はるか昔、永正5年(1508年)の『六物図抄』にも「丁字路」が登場しているので、少なくとも室町時代には使われていたことがわかります。
戦国時代以降、城下町は大軍の進軍を阻むため、直角に折れ曲がる鍵の手(かぎのて)、道路を直交させないでわざとずらして交差させた食違(くいちがい)、そして進行してきた敵を左右に分散させる丁字路を意図的に配していました。
今も往時の縄張り(町割り)が残る城下町・松本では、商人町だけでなく武家屋敷に至るまで丁字路は随所に配されているのです(観光客にも人気の中町筋でも丁字路がああります)。
そんな歴史を背景に、道路交通法(第一章第二条五)では「交差点」の説明として、「十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる・・・」と記され、法律用語としては今も丁字路であることがわかります。
明治時代には丁字路が一般的だったため、道路交通法などの法律用語でも丁字路となっているのです。
国土交通省の道路に設置される「警戒標識」では「T形道路交差点あり」で、丁字路でもT字路ではなく、T形道路交差点となっています。
NHK放送文化研究所では、伝統的には「丁字路」ですが、現在では一般に「T字路」とされているので「放送では、おおむねどちらを使っても問題ありません」としています。
本来、T字路が正しければ、十字路でなく、X字路でもいいはずですが、戦後のTシャツなどの普及、英語教育などもあって、本来の丁字路・「ていじろ」がT字路「てぃーじろ」に変化したのだと推測できます。
T形道路交差点、「丁字路」、「T字路」どちらが正しい!? | |
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