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火山でもないのに、なぜ丹沢には「美肌の湯」が湧く!?

中川温泉

丹沢山麓には「美肌の湯」で知られる中川温泉、七沢温泉をはじめ、広沢寺温泉(こうたくじおんせん)、飯山温泉、鶴巻温泉などがあり、首都圏に近く、料理自慢が多いことから人気があります。丹沢山塊は、火山ではありませんが、山麓にはなぜこうした肌がすべすべになるような温泉が湧いているのでしょうか?

まずは、温泉に関わる丹沢の生い立ちを知ろう

中川温泉「かくれ湯の里 信玄館」の貸切露天風呂

温泉は火山性温泉と非火山性温泉に大別できますが、丹沢山麓に湧く温泉は、いずれも非火山性温泉。
神奈川県では、箱根や湯河原は箱根火山などの火山活動で形成された温泉ですが、丹沢には活火山はなく、当然、非火山性温泉に入ります。

丹沢山塊は、造山活動で誕生した標高1000m内外の山脈ですが、実はその生い立ちに、温泉湧出が深く関わっています。

実は丹沢山塊は、1700万年前にフィリピン海プレート上の海底火山として誕生。
溶岩や火山砕屑物を多量に噴出しながら、1000万年前頃にかけて活動したという歴史があります。
つまり丹沢山塊は、はるか南方の海底で誕生し、フィリピン海プレートに乗って気の遠くなるような年月をかけて運ばれ(年数cmのスピードで北上)、500万年前頃、本州弧(ほんしゅうこ)に衝突して、沈み込めずに付加され、100万年前以降に、同様に海底火山だった伊豆が本州弧に衝突したことで急激に隆起したもの。

かつての海底火山の噴出物は1万mを超える厚さで積み重なり、グリーン・タフ(緑色凝灰岩)を形成しています。
丹沢を流れる相模川も酒匂川も河原の石に緑味がかった石が多いのは、そのため。

グリーンタフの地層に挟まれた石灰岩からは珊瑚礁を作るサンゴや石灰藻、大型有孔虫、オウムガイなどの化石が発見されています。

七沢温泉「七沢荘」

美肌の湯が多いのが特徴で、鶴巻温泉のみ「化石海水温泉」

飯山温泉「元湯旅館」

さてさて丹沢に湧く温泉は、熱源は2000万年前に割れ目に沿って上昇してきたマグマ(石英閃緑岩)の余熱で、火山性の温泉に比較すると温度が低いのが特徴。
しかもアルカリ性が高いので、入浴後に肌がツルツルになるのです。

数百万年前の熱水作用の名残りで、石英閃緑岩や変成岩中の亀裂に沿って温泉が湧出するのが中川温泉(山北町)。
泉温は、26度~38度、pHは9.4〜10.5とアルカリ度が高く、主要成分はナトリウムイオン、硫酸イオンが卓越し、ほのかに硫化水素臭が匂う特徴があります(神奈川県温泉地学研究所の報告による)。

七沢温泉(厚木市)はpHは9〜10と高いものの、泉温は20度で、温泉法に温泉とはいえない存在でしたが、現在では深さ800mほどの井戸が掘られて、保湿成分で美肌効果が期待できるメタケイ酸を多く含む温泉が湧き出しています(泉質はアルカリ性単純温泉)。
まさに天然の美容液というような温泉で、「美肌の湯」とPRされています。

七沢温泉と同じ厚木市にある広沢寺温泉もpH10.3という強アルカリ性が特徴。
大沢川沿いの地下100mから湧出し、「玉翠楼」の一軒宿ですが、こちらも「美肌の湯」。

飯山温泉(厚木市)の「元湯旅館」はやはり掘削温泉ですが、pH11.3という全国屈指の高アルカリ泉が湧出。
「日本一の美肌の湯が湧く」とPRしています。

大山詣での人々に愛されたという歴史ある鶴巻温泉は、カルシウム分が豊富で、全国的にも珍しいカルシウム・ナトリウム-塩化物泉。
明治22年、村民の井戸水が塩分や渋味で飲料水にならないために浴用にしたのが発端とされ、大正時代には湯治場として賑わいましたが、現在では「東京の奥座敷」的な料理旅館に変身しています。

将棋や囲碁ののタイトル戦も行なわれる「元湯陣屋」は、大正7年、三井財閥が御寮(接待所)として「平塚園」を建て、大正時代末に「カルチウム温泉平塚園」として創業。

丹沢山地に点在する他の温泉地と比較して成分の濃いのが特徴、「牛乳並みかそれ以上のカルシウム濃度」とも。
なぜここだけ成分が違うのかといえば、鶴巻温泉の温泉水の起源は、地層中に閉じ込められた昔の海水(化石海水と呼ばれる)だと推定されるから。

鶴巻温泉「元湯陣屋」
火山でもないのに、なぜ丹沢には「美肌の湯」が湧く!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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