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阿蘇の絶景を生んだ9万年前の大噴火、破局的な噴火が起きれば日本は壊滅!?

大観峰からの雄大な景観、草千里ののどかな放牧風景で知られる阿蘇山。火の国・熊本県のシンボルですが、この阿蘇山の雄大な景観は、9万年前に起きた破局的な噴火で生まれたカルデラ地形によるもの。実は、日本列島の歴史のなかで、もっとも破滅的な大噴火だったのが、この阿蘇山の爆発です。

マグマ学の第一人者も破局的噴火に警鐘を鳴らす

日本国内で、カルデラをつくるような超巨大噴火は、過去15万年間に少なくとも14回発生していることがわかっています。
それ以前でも例えば、33万年前の南九州の加久藤カルデラの破局的噴火は、半径50kmの範囲に火砕流が及び、溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん=火山灰や軽石が堆積して形成)の地層を形成するほどで、火山灰は本州にも降り注いでいます。

外輪山・大観峰など、現在の阿蘇山のカルデラを形成した破局的噴火の際の火砕流、火山灰の痕跡は、九州各地に阿蘇溶結凝灰岩として残されています。
宮崎県の高千穂峡、大分県の磨崖仏が刻まれる岩壁、そして岡城の石垣なども、この阿蘇溶結凝灰岩なのです。

石黒耀(いしぐろあきら)の『死都日本』(2002年、講談社)は、加久藤カルデラが33万年ぶりに破局的噴火を起こしたという想定の空想科学小説で、実は「破局噴火」というリアルな言葉も作者・石黒耀の造語です。
破局噴火(破局的噴火)は、学術用語ではウルトラプリニー式噴火(Ultra Plinian)。
噴煙を空高く噴き上げ、軽石、火山灰を大量に撒き散らすマグマ噴火が、プリニー式噴火(プリニーは、西暦79年、イタリアのベスビオ火山で起きた大噴火を調査・記録したプリニウスに由来)で、その頂点ということで、ウルトラを付けてウルトラプリニー式噴火と呼んでいるのです。

インドネシア・スマトラ島のトバ火山は7万4000年前に破局的な噴火を起こしていますが、地球の気温は5度〜10度も下がり、長期におよぶ寒冷化で小氷河期のような様相となって人類も9割が死滅したとされています(生き残った人類のルーツは南アフリカの海岸線に逃げた数千人という説も)。

マグマ学が専門で、マグマ学の第一人者・巽好幸(たつみよしゆき)氏は、『富士山大噴火と阿蘇山大爆発』(2016年、幻冬舎新書)を著していますが、阿蘇山で大爆発(巨大カルデラ噴火)が起これば、その被害は富士山の大噴火などとは桁違いに被害が大きいと警鐘を鳴らしています。

高千穂峡の絶景も、阿蘇山の破局的噴火で誕生

九州は2時間以内に火砕流で焼き尽くされる!

富士山が大噴火すると、東京には2cmほどの降灰があり、ライフラインが混乱すると予想されています(『富士山噴火のハザードマップ』による)。
単純比較で、江戸時代中期の宝永4年(1707年)に起きた富士山の宝永大噴火の「1000倍以上のエネルギー」というのが阿蘇山の破局的噴火(巨大カルデラ噴火)です。

南九州では7300年前、鬼界カルデラの大爆発(アカホヤ噴火)が発生、これが日本人が経験した最新の破局的噴火ですが、南九州は火砕流で焼き尽くされ、南九州の縄文人は絶滅。
以降200年以上、九州に木々は生えなかっただろうと推測されています。

この鬼界カルデラは、今も噴煙を上げる薩摩硫黄島がその外輪山で、鹿児島市街の南100kmと少し離れた場所。
それでも南九州の縄文文化は滅んでいるのです。

九州の中央部にある阿蘇山が、もし破局的な大爆発を起こしたとすると、発生した数百度(700度くらい)という高熱の火砕流は時速100kmのスピードで、1000m近い九州の山々を越えて、福岡、宮崎、熊本、鹿児島などの都市を襲います。
火砕流は、発生後1時間〜2時間程度で700万人の人々が暮らす領域を焼き尽くすとされているので、噴火の予想がなければ脱出することはできません。

追い打ちをかけるのが降り注ぐ軽石で、九州では数メートルが積もって、以降数百年間は人が住めない状態に。

遠く離れた大阪でも50cm、東京でも20cm、東北でさえ10cm積もるという降灰で、都市機能は完全に失われ、「日本壊滅」といえる状況がもたらされます。
50cmの火山灰は、晴れた日に降り注いでも木造家屋の半数近くは倒壊するといわれる重みで(雨の日には1.5倍に重量が増します)、西日本は完全に人が住めない状況に陥ってしまいます。
こうして、火山灰でライフラインが失われ、日本人の9割以上が生活困難に陥るのです。

ガラス質の多い火山灰は、絶縁体なので、線路に降り積もれば、信号が止まって、鉄道は運転できません。
降り積もる灰で車も動かないので、最悪の場合は1億人近くが命を落とす可能性があるのです。

気象庁、火山噴火予知連絡会では、切迫する活火山の噴火、たとえば富士山などのハザードマップは作成していますが、こうした数万年に一度という破局的噴火に対する対応は、対処する方法がないこともあって、目下のところ対策はありません。

過去15万年間に少なくとも14回、平均すれば1万年に一度という破局的大噴火、確率的には低いものの、最後の破局噴火の鬼界カルデラが7300年前。
カウントダウンは不気味に続いています。

阿蘇の絶景を生んだ9万年前の大噴火、破局的な噴火が起きれば日本は壊滅!?
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