明治の文豪、大町桂月(おおまちけいげつ)が「人の世ならぬ処なりけり」といった海岸の奇観が仏ヶ浦(ほとけがうら)。下北半島西岸、佐井村の福浦と牛滝の間、2kmにわたり奇岩怪石が続き、白緑色の凝灰岩が風雨と荒波で浸食されまさに極楽浄土を思わせる景観が生み出されています。
奇岩怪石が極楽浄土を体現する!
五百羅漢、観音岩などと名付けられた奇岩はすべて国の天然記念物。
大正11年9月に佐井村で3泊した大町桂月は、舟で仏ヶ浦を訪れ、「神のわざ 鬼の手つくり仏宇陀(ほとけうた) 人の世ならぬ処なりけり」と仏ヶ浦の景観を詠っています。
仏ヶ浦は、大正時代までは仏宇陀と称していたので、国の名勝および天然記念物の指定名称も「仏宇陀(仏ヶ浦)」。
仏宇陀は、実はアイヌ語のホトケ・ウタ(hotoke-uta=ホトケの砂浜)に由来します(近世まで下北半島にはアイヌのコタン=集落がありました)。
日本古来の地蔵信仰と結びつけて、中世から近世に下北アイヌが「ホトケ・ウタ」と名付けたと推測されます。
大町桂月は、その奇観に圧倒されたようで、「あまりにも奇異なのに、ただ歓声をもらすばかりであった」と『佐井村史』には記されています。
実は「仏浦」と命名したのは、この大町桂月だったのです。
仏ヶ浦駐車場から坂道を下って極楽浜へ!
国道338号にある仏ヶ浦展望台から眼下に、あるいは国道338号沿いの仏ヶ浦駐車場から大町桂月歌碑、地蔵堂のある浜へと100mほど下れば、仏ヶ浦船着き場で、海岸線探勝の入口。
仏ヶ浦の海岸線部分の探勝は、遊歩道を使って往復30分です。
全貌を見るなら佐井定期観光の仏ヶ浦観光船で探勝を。
仏ヶ浦観光船は佐井から出航し、仏ヶ浦に30分ほど上陸する仕組み(佐井港〜仏ヶ浦=上陸30分〜佐井港)。
また、青森〜脇野沢〜牛滝〜福浦〜佐井を結ぶシィラインの定期航路(ポーラスターが就航)を利用しても船上からの見学が可能です(ただし。仏ヶ浦の上陸はありません)。
牛滝港で、グラスボート「夢の海中号」に乗り換えれば、仏ヶ浦で1時間ほどの探勝時間があります。
大町桂月『恐山半島の大断崖』
福浦には入らむとするや、奇巌の行列に迎へられ、又奇巌の行列に送らる。巌(いわ)とのみにては尽(つく)さず。巌もあるが、巌峰(がんぽう)ある也。その巌は陸にもあるが、海中にも多き也。
仏浦の地蔵堂のあるあたりに、少しばかりの砂浜あるだけにて福浦より牛滝まで、凡そ一里の間、断崖絶壁、奇巌怪石の趣を尽せり。
その巌石、仏像に似たるもあれば、人に似たるもあり。獣(けもの)に似たるもあれば、鳥に似たるもあり。千年の風雨、解け易き部分を解かして、蓮花(れんげ)の開けるが如きもあれば、波涛(はどう)の翻らむとするが如きもあり。凹(くぼ)みて洞を成し、明きて穴を成す。峰頭にもたち、海中にも立つ。
前を見て驚き、後を見て又驚き、仰ぎて更に驚く。驚く毎に一杯、天下の絶景を肴に、酒も力を加ふ。酒に酔いしか、絶景に酔ひしか、我れ知らず。唯心躍(おど)り魂飛ばむばかり也。
惜しき舟路、牛滝に果てて漁家に宿りぬ。ここは僅(わず)か四十戸の漁村也。
火山灰に含まれる成分に由来して緑色ががっていることから、グリーンタフ(緑色凝灰岩)と呼ばれて、長い年月をかけて浸食を受けて天然のオブジェとなったもの。
下北ジオパークの「仏ヶ浦ジオサイト」になっています。
下北半島国定公園、仏ヶ浦海中公園に指定されるほか、日本の地質百選にも選定。
仏ヶ浦 | |
名称 | 仏ヶ浦/ほとけがうら |
所在地 | 青森県下北郡佐井村長後仏ヶ浦 |
関連HP | 佐井村観光協会公式ホームページ 佐井定期観光船公式ホームページ |
電車・バスで | JR下北駅から下北交通バス大畑行きで42分、終点下車、下北交通バス佐井車庫行きに乗り換えて1時間20分、終点下車。仏ヶ浦遊覧船に乗船(所要1時間30分・上陸時間30分) |
ドライブで | 青森自動車道青森東ICから約149kmで駐車場。仏ヶ浦までは徒歩15分 |
駐車場 | 60台/無料 |
問い合わせ | 佐井村総合戦略課 TEL:0175-38-2111 佐井定期観光船 TEL:0175-38-2255 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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