火山列島・日本で、意外にも活火山がまったくないエリアが関西から中国・四国にかけて。滋賀県から西は、島根県のほぼ中央にそびえる三瓶山(さんべさん)まで活火山の空白地帯となっています。そんな活火山の空白地帯に、高温で高濃度の有馬温泉が湧いています。その不思議なメカニズムを紹介します。
温泉には火山性と非火山性がある
温泉が湧出するメカニズム、温泉が体になぜいいのかは、実は科学的にはっきりと解明されたわけではありません。
近年の研究で、全国の温泉の大部分は、雨や雪などの「水分」が、地下にしみ込み、何年か後に地熱による温度や地中の成分などを得て、再び地上に出てきた循環水であることがわかってきました。
温泉は、火山性温泉と非火山性に大別されます。
火山性温泉は、文字通り火山活動で形成された温泉で、地下に熱源となるマグマがあると、雨や川から入っていった水がマグマで温められ、仮に温泉成分が含めれなかったとしても温度だけで摂氏25度以上あれば温泉法で温泉と認定されるのです(実際には地下を浸透する過程で地中の成分や火山ガスに触れて成分を含んで湧出)。
非火山性は、深層地下水型、数百万年前の海水が地層中に長い間閉じこめられてできた化石海水型などの火山以外に成因のある温泉です。
有馬温泉は、非火山性に分類されますが、なぜか高温の温泉「金泉」が湧いています。
活火山空白地帯に湧く有馬温泉の「金泉」は、100度近くにもなる高温で、熱すぎるので冷ますのが大変と旅館の主人が苦笑いするほどです。
鉄分と塩分を含んだ茶褐色の「金泉」は、含鉄・ナトリウム塩化物強塩泉で、湧出温度は92度~99.7度の高温。
もうひとつの「銀泉」は、二酸化炭素が溶け込んだ無色透明の温泉で、炭酸が多く含まれる炭酸泉と、ラジウムの濃度の高い放射能泉があり、こちらは泉温が18.6度、29.4度と低いため加温して使われています。
世界的にも非常にレアな「有馬型温泉」
実は、この有馬温泉、「有馬型温泉」といって世界的にも非常にレアな非火山性温泉。
活火山は南海トラフ地震を引き起こすフィリピン海プレートが沈み込むことで誕生しますが、有馬温泉直下、60kmあたりにフィリピン海プレートが位置しています。
プレートが沈み込むことで地下60kmにある水分は圧力を受けて地表へと押し出されますが、有馬-高槻断層帯(ありまたかつきだんそうたい)が通っているため、その割れ目に沿って熱水が上昇、地表に湧き出したのが有馬温泉というわけです。
フィリピン海プレートには5000万年以前に誕生した古くて冷たいプレートの場所と、2500万年前以降に形成された温かいプレートがありますが(マグマが冷えて固まってプレート化するため、時間がたつにつれ冷却されていきます)、関西から中国に沈み込むのは、この新しく温かいプレート。
九州には冷たいプレートが沈み込んでいますが、注目は関西に沈み込む熱いプレート。
そのプレートから湧き出すのが有馬温泉です。
関西で有名な城崎温泉(きのさきおんせん)は、神鍋山、玄武洞、氷ノ山などの火山(過去1万年に火山活動のない火山)をルーツとする火山性の温泉で、有馬温泉とはメカニズムが異なります。
火山の寿命は人間の1万倍、数十万年〜100万年なので、関西エリアで今後、新しく火山が誕生することはありません。
首都圏などは富士山の噴火の影響(火山灰の降灰)を受けますが、関西の人は火山噴火に怯えることなく、温かく、成分も豊富な「プレート直結型」の有馬温泉に浸かることができるのです。
南海トラフ地震の恐怖はありますが、世界的にも稀有な温泉が湧くメリットを享受できるのは、関西人の特権ということに。
活火山のない関西に、高温の有馬温泉が湧く理由とは!? 「不思議なメカニズム」を紹介 | |
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