かつて物流が鉄道輸送に頼っていた時代には、石炭輸送に石炭列車、セメント原料の石灰石の輸送に鉱石列車が走っていました。今でもこの石灰石出荷が鉄道で行なわれているのが、秩父鉄道。「SLパレオエクスプレス」で人気の秩父鉄道ですが、現役で活躍し、セメント産業を支える鉱石列車にも注目を。
露天掘りされた石灰石は砕石され、貨車で運搬
秩父鉄道が貨物輸送する石灰石は、叶山鉱山(かのうやまこうざん/群馬県多野郡神流町)と三輪鉱山(みのわこうざん/埼玉県秩父市)で採掘されたもの。
年間200万トンの採掘量を誇る叶山鉱山で露天掘り(ベンチカット工法)された石灰石は、山元貯鉱場に一旦貯えられた後、長距離ベルトコンベア(14kmと8.6kmの2本)で巣掛砕鉱場(秩父市吉田)経由で秩父太平洋セメント秩父工場(秩父市大野原/タンカル(石灰石粉末、特殊セメント、リサイクル燃料などを生産)へ運搬。
武州原谷駅(ぶしゅうはらやえき)で貨車に積み替え、太平洋セメント熊谷工場・三ヶ尻(みかじり)駅へ電気機関車で輸送。
武州原谷駅は、1956年2月に開業した秩父太平洋セメント秩父工場に隣接する貨物専用駅。
1993年2月から、武州原谷駅で石灰石を貨車に載せ、秩父鉄道本線から貨物専用線の三ヶ尻線に入り、三ヶ尻駅(貨物専用駅)を経て太平洋セメント熊谷工場へ輸送しています。
ただし武州原谷駅、三ヶ尻駅は貨物専用駅のため、通常は、駅構内に立ち入ることはできません。
武甲山の西側にあり、1924年に採掘が開始された歴史ある三輪鉱山(みのわこうざん)の、年間採掘量は95万トン。
武甲山では3つの鉱山が稼動していますが、太平洋セメントの鉱山は、この三輪鉱山です。
石灰石は露天でのベンチカット工法にて採掘され、大型重機によって、立坑へ運搬・投入。
さらに坑内に設置された小割室・一次破砕室を経て、坑外にベルトコンベアにて運搬され、利用者に合わせて破砕されたものが貨車に積み込まれます。
電気機関車に牽引された貨車は、影森駅を経由して、太平洋セメント熊谷工場・三ヶ尻駅へと運ばれています。
秩父鉄道で使用される鉱石運搬用ホッパ車は、ヲキ100形・ヲキフ100形貨車で、実はすべてが太平洋セメント所有の私有貨車です。
牽引するのがデキ100形電気機関車で、2025年6月現在は青色塗装と、黄色とオレンジ色の三岐鉄道カラーに塗装された機関車などが走っています。
今は超レア! セメント用「鉱石列車」が走る、秩父鉄道 | |
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