『宮崎の太陽と風が育む「干し野菜」と露地畑作の高度利用システム』として日本農業遺産に認定される「大根やぐら」。宮崎県宮崎市田野町・清武町で、おもに漬物などの原料となる大根を櫓(やぐら)を組んで冬の西風(寒風)にさらすことで、旨味、甘みをアップさせる工夫が「大根やぐら」です。
「大根やぐら」は冬の宮崎の風物詩
鰐塚山(わにつかやま/1118.2m)の麓に広がる火山灰土壌の畑は、大根の栽培に最適。
冬季は雪を見ることがなく、晴天が続き、乾燥した冷たい西風が吹く土地柄です。
肥沃な「黒ボク」と呼ばれる火山灰土壌と、国内有数の日照時間を活かして、二毛作露地栽培として、冬場に大根の栽培が行なわれています。
時間と手間暇をかける「大根やぐら」は、大根を10日〜15日ほど寒風に当てるために築かれる巨大な櫓(やぐら)で、二毛作露地栽培と乾燥野菜の伝統技術を組み合わせた独自のスタイルが、『宮崎の太陽と風が育む「干し野菜」と露地畑作の高度利用システム』として日本農業遺産に認定されています。
幕末に儒学者・安井息軒(やすいそっけん=宮崎市清武町に「安井息軒旧宅」が現存)が、自然災害への備えとして、冬季に短冊状に切った甘藷(かんしょ=サツマイモ)を天日で乾燥させ保存食(干し芋)として蓄えることを提唱したことが始まり。
当時、甘藷は食用だけでなく牛馬の飼料ともなっていました(戦前まで牛馬の飼料に使われていました)。
大正時代に、夏はサツマイモ、冬は大根の二毛作がスタート。
冬場に、細切りにした青くび大根を天日と「鰐塚おろし」で乾燥させ、千切り大根に加工する「干し野菜」の技術とを組み合わせた独自の技術が生み出されたのです。
その後、「千切り大根」は、干す段階で「干し大根」よりも天候に左右されるため、タクアンの原料となる「干し大根」へとシフトされ、今では高さ5m、長さ30m〜50mという巨大な「大根やぐら」の棚に大根を並べて干すというスタイルに変化しています。
台風などで夏のサツマイモが不出来な場合は、冬場の大根の作付けを増やすなど、農家の安定収入をも支えるシステムとなりました。
そのシンボルが「大根やぐら」というわけです。
干されている大根は、通常の大根とは異なり、干したくあん専用種の「干し理想」や、「干し」「生」兼用の漬物ダイコン「耐病干し理想」。
タキイ種苗と地元が共同開発した種とのことで、こうした努力が漬物生産高日本一の宮崎県を支えているのです。
日本農業遺産認定「大根やぐら」とは!? | |
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