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樫野埼灯台

紀伊大島の東端、樫野崎(かしのざき)に建つブラントン設計の日本最初の石造灯台が樫野埼灯台。1866(慶応2)年、イギリス、フランス、オランダ、アメリカと結んだ江戸条約で設置が約束された8ヶ所(観音埼、野島埼、樫野埼、神子元島、剱埼、伊王島、佐多岬、潮岬)の灯台のうちのひとつです。

ブラントンが設計した現存する日本最古の石造洋式灯台

紀伊大島東端の断崖上に建つ
周囲には様々なモニュメントが

いわゆるお雇い外国人で、「日本の灯台の父」とも呼ばれる英国人技師R.H.ブラントン(Richard Henry Brunton)が設計、築造したもので、潮岬灯台とともに着工、明治3年に初点灯しています。

イギリス人の大工であるラッセル(J.Russell)と石工のミッチェル(J.Mitchell)らが、日本人の職人を使い建設に従事しています。
同時期に神子元島灯台の建設も進行し、ブラントンは2ヶ月に一度、樫野埼灯台を訪れています。

標高38mの断崖上に建つ樫野埼灯台は、日本最初の石造灯台、回転式閃光灯台。
建設当初の高さ4.5mから10.2mとかさ上げ的な改築はされていますが、1階部分や最上部の灯ろうの基本的な構造は往時のままです。

灯台建設に使われた石は、古座川町宇津木で採石された宇津木石を利用。
切り出された石材は船で古座川を下って古座へ、さらに海をわたって運ばれてきました。

紀伊大島の沖合は海の難所で、そのために建設も急がれたのです。
樫野埼灯台周辺に咲く水仙(見頃は12月下旬~1月下旬/西洋水仙は2〜3月)は明治初期にイギリス人灯台技師が孤独な生活を癒やすために、本土から取り寄せて植え付けたもの。

ちなみに『紀伊続風土記』には、「土地の字に大樫野といふ所あり、古は大樫ありしより此名ありて今はその大を略して村名とせし」と記され、かつてカシの巨木があったことが地名の由来になっています。

1791(寛政3)年にはボストン船籍の「レディ・ワシントン号」がラッコの毛皮を交易しようと、清国(中国)からの帰路、樫野崎に来港。
これが日米初の修交となっています。

灯台の建つ樫野崎一帯は南紀熊野ジオパークのジオスポットになっています。

灯塔横に無料開放の展望台も用意

参観灯台ではありませんが、灯台の下から6.5mの高さまで螺旋階段で上れば無料開放の展望台も用意されています。

国の登録有形文化財に指定された樫野埼灯台旧官舎も隣接。
明治3年竣工の旧官舎は、ブラントンの設計したものが現存。
平成23年に修復が完成し、外観は漆喰(しっくい)で純白になりました。
20世紀に世界中で流行したモダニズム建築を踏襲した貴重な建物です。

明治23年にはオスマン帝国海軍のエルトゥールル号(Ertuğrul Fırkateyni/木造フリゲート艦)が台風により、樫野崎沖で座礁沈没、587名が亡くなるという大惨事が起きています。
樫野埼灯台近くには、エルトゥールル号殉難将士慰霊碑、トルコ記念館も建ち、串本町と在日本トルコ大使館の共催による慰霊祭が5年ごとに開催されています。

ブラントン
1866年(慶応2)5月に、アメリカ、イギリス、フランス、オランダの4ヶ国と徳川幕府との間で結ばれた国際条約「改税条約」(別名「江戸条約」)を履行して灯台を建設するため、徳川幕府は灯台建設に携わる技師を探していました。

スコットランド生まれの工兵技監だったブラントンは、徳川幕府の打診によりイギリス政府の紹介で灯台技師として採用され(採用は明治政府)、1868年(慶応4年)8月8日、妻子と助手2人を伴って来日(来日20日後に明治と改元)。
横浜裁判所の灯明台掛の主席技術者に就任します。この時、ブラントンは弱冠28歳です。
品川、観音埼、城ヶ島、野島埼の4灯台はすでにヴェルニーが建設していました。

来日以降、樫野崎灯台(現存する最古の灯台)を皮切りに8年の間に、26の灯台、5ヶ所(根室、石巻、青森、横浜西波止場2)の灯竿、2艘(横浜港、函館港)の灯船などを建設。
日本初の電信架設(築地〜横浜)、横浜居留地(日本大通)の舗装整備、横浜公園の設計、日本最初のトラス構造の鉄橋(吉田橋)建設などを行なっています。

ブラントン設計の灯台26

納沙布岬灯台/北海道根室市
尻屋埼灯台/青森県下北郡東通村
金華山灯台/宮城県石巻市
犬吠埼灯台/千葉県銚子市
羽田灯台(廃灯)/東京都大田区
剱埼灯台(江戸条約で建設を約束)/神奈川県三浦市
神子元島灯台(江戸条約で建設を約束)/静岡県下田市
石廊埼灯台/静岡県賀茂郡南伊豆町
御前埼灯台/静岡県御前崎市
菅島灯台/三重県鳥羽市
安乗埼灯台/三重県志摩市
天保山灯台(廃灯)/大阪府大阪市港区
和田岬灯台(江戸条約で建設を約束=廃灯後、須磨海浜公園に移設保存)/兵庫県神戸市須磨区
江埼燈台(大坂条約で建設を約束)/兵庫県淡路市
樫野埼灯台(江戸条約で建設を約束)/和歌山県東牟婁郡串本町
潮岬灯台(江戸条約で建設を約束)/和歌山県東牟婁郡串本町
友ヶ島灯台(大坂条約で建設を約束)/和歌山県和歌山市
六連島灯台(大坂条約で建設を約束)/山口県下関市
角島灯台(ブラントン最後の灯台設計)/山口県下関市
釣島灯台/愛媛県松山市
鍋島灯台(大坂条約で建設を約束)/香川県坂出市
部埼灯台(大坂条約で建設を約束)/福岡県北九州市
白州灯台/福岡県北九州市
烏帽子島灯台/福岡県糸島市
伊王島灯台(江戸条約で建設を約束)/長崎県長崎市伊王島
佐多岬灯台(江戸条約で建設を約束)/鹿児島県肝属郡南大隅町

樫野埼灯台
名称 樫野埼灯台/かしのざきとうだい
所在地 和歌山県東牟婁郡串本町樫野
関連HP 南紀串本観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR串本駅から熊野交通バス樫野灯台口行きで37分、終点下車すぐ
ドライブで 阪和自動車道南紀田辺ICから約81km
駐車場 84台/無料
問い合わせ 樫野埼灯台旧官舎 TEL:0735-65-8515
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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