もともと修験道において滝は禊(みそぎ)の地でしたが、そのなかでも見事な滝は、滝自体が聖なる地、神仏習合の御神体とされました。滝に不動明王が祀られるのもそのため。なかでも華厳の滝、那智の滝、布引の滝は、「日本三大神滝」と称されています。
華厳の滝|栃木県
所在地:栃木県日光市中宮祠
地形図での名称:華厳滝
大きさ:落差97m、幅7m/直瀑
神滝の理由:日光開山、中禅寺、日光山輪王寺創建と伝わる勝道上人(しょうどうしょうにん)が8世紀後半(奈良時代)、日光山(男体山)に登拝する際に発見
歴史:華厳の滝が観光的に眺められるようになったのは、明治33年のことで、それまでは、「滝見物」は容易ではなく、はるか手前の断崖に突き出た岩上まで、危険な岩場を這い下り木にしがみついて眺めていた」(『郷愁の日光』)という状況
観瀑用のエレベーターは昭和5年に営業開始
那智の滝|和歌山県
所在地:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町
地形図での名称:那智大滝
大きさ:落差133m、幅13m/直瀑
神滝の理由:平安時代以降、修験道における熊野信仰の対象のひとつで、那智四十八滝のひとつ(現在も滝自体が熊野那智大社の別宮・飛瀧神社の御神体)
歴史:修験道の聖域で、西国三十三所巡礼を始めた花山法皇も二の滝の断崖上に庵を設けて、千日滝篭行をしたと伝えられていますが、明治の神仏分離令・修験道廃止令によって廃れています
明治以前の神仏混淆(しんぶつこんこう)時代には那智権現として現在の熊野那智大社と一体になって信仰されていました
「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録、一段の滝としては日本一の落差を誇る名瀑です
布引の滝|兵庫県
所在地:兵庫県神戸市中央区葺合町
地形図での名称:布引雄滝、布引雌滝
大きさ:上流から雄滝(おんたき、落差43m)、夫婦滝(めおとだき、落差9m)、鼓ヶ滝(つつみがだき、落差8m)、雌滝(めんたき、落差19m)と連続/段瀑
神滝の理由:『滝勝寺縁起』によれば、修験道の始祖・役小角(えんのおずぬ)が布引滝で修行をしたとあり、在原行平・業平兄弟の滝見物を語った平安時代初期(9世紀末頃)の『伊勢物語』で一躍有名に
歴史:「布引の滝のしらいとなつくれは絶えすそ人の山ちたつぬる」(藤原定家)など、平安の昔から多くの文人に愛され、京の都からわざわざ訪れる貴族も多かった歴史的な景勝地
『平治物語』、『源平盛衰記』、『栄花物語』、『伊勢物語』にも登場し、都人などが足しげく訪れた名瀑
渓流の水は、昔、外国航路の船乗りが、赤道を超えても「腐らないおいしい水」と喧伝したコウベウォーターとしても有名
「船乗りたちはコウベ・ウォーター(神戸ウォーター)は世界一だというが。おそらく本当だろう。」(司馬遼太郎著『街道をゆく』)
日本三大神滝とは!? | |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag