熊本県熊本市、藤崎宮前駅と北熊本駅を結ぶ熊本電気鉄道藤崎線。わずか2.3kmの路線距離ですが、途中に黒髪町駅があり、起点の藤崎宮前駅と黒髪町駅の間に、不思議な車道脇を走る併用軌道が存在します。道路上に列車注意と記された白文字の表示があり、初めての人はかなり驚きの状況です。
軌道(路面電車)が前身で、一部に併用軌道が残存
明治44年10月1日、菊池軌道で池田(現・上熊本)〜千反畑(現・藤崎宮前)間が開業したのが始まりで、当時は狭軌の路面電車でした。
しかも軌間914mm(3フィート軌間)というアメリカ大陸の産業鉄道で使われる珍しいもので、現在国内では、青函トンネル竜飛斜坑線(ケーブルカー)のみという希少な軌間です。
明治20年に制定された「私設鉄道条例」により、軌道の幅員は「特許を得たときを除いて3フィート6インチ」と定められているので、まさに特例。
筑後馬車鉄道など福岡県を中心に馬車鉄道が軌間914mm(3フィート軌間)を採用したのが始まり。
明治時代後期に筑後軌道(筑後馬車鉄道の後継)、朝倉軌道(福岡県朝倉郡の県道に敷設)、中央軌道(朝倉軌道に連絡して敷設)、両筑軌道(朝倉軌道と筑後軌道に連絡)、南筑軌道(福岡県八女郡)、小倉軌道(福岡県企救郡)と、福岡県内の軌道と、熊本県の菊池軌道(現・熊本電気鉄道)などに採用されました。
当時の軌道は、新たに敷設の国道、県道に線路を敷いたため、少しでも線路幅が狭い方がいいという判断で、3フィート軌間を採用したのかもしれません。
大正12年8月2日に1067mm軌間に改軌して、電化。
さらに昭和17年5月1日に軌道(路面電車)から鉄道に変わり、普通鉄道が道路脇を走るという状況が誕生しました。
現在、国内で普通鉄道で併用軌道があるのは、江ノ島電鉄線と、熊本電気鉄道藤崎線の2ヶ所だけです。
熊本電鉄に「車道を走る」不思議な併用軌道が! | |
所在地 | 熊本県熊本市中央区坪井2-2〜北区室園町1 |
場所 | 熊本電気鉄道藤崎線 |
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