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【知られざるニッポン】vol.25 世界に散らばるマリモのルーツは阿寒湖!?

北半球約220ヶ所で生息が確認されているマリモ。日本では阿寒湖のマリモが有名ですが、実は阿寒湖のマリモは世界最大級の大きさ。しかも平成24年には、世界に分散するマリモの起源が日本である可能性が大きいことが釧路市教育委員会マリモ研究室(北海道釧路市)の若菜勇学芸員らの研究で明らかになっているのです。

そもそもマリモって何だ!?

阿寒湖のマリモ(チュウルイ島「マリモ展示センター」)


歴史を遡ると、マリモはの発見は、博物学者で「分類学の父」といわれるカール・フォン・リンネ(Carl von Linné)が1753年、スウェーデンのダンネモーラ湖で発見し、Aegagropila linnaei(日本語訳:マリモ属マリモ)という学名を付けたのが最初。

日本国内では明治30年、札幌農学校(現・北海道大学)の川上瀧彌(かわかみたきや)が阿寒湖西岸、尻駒別湾(しりこまべつわん)で発見し、「毬藻」(マリモ)と命名しています。

現在、日本国内には富士五湖のフジマリモ、釧路湿原内の塘路湖、シラルトロ湖、青森県の小川原湖などの湖沼で発見されていますが、直径30cmで見事な球体という阿寒湖のマリモほど巨大なマリモは、他の湖沼では見つかっていません。

大きな球状の集合体を形成するマリモとしては、国内では青森県の小川原湖、国外ではアイスランド北部にある火山湖のミーヴァトン湖(Mývatn)やエストニアのオイツ湖(ヤルベ・パイル=エストニア語で「湖の球」を産する)などに限定されています。
しかもミーヴァトン湖のマリモは、環境悪化でほぼ絶滅。
阿寒湖の巨大マリモは世界的にも貴重な存在なのです。

これまでマリモにはたくさんの品種や変種があると考えられてきましたが、最近のDNAを使った研究で、日本のマリモは湖に生息するマリモと、河川にも分布するタテヤママリモの2種類からなることが判明しました。

マリモは、これまで信じられていたミドリゲ目ではなく、まったく異なる独自のグループを形成してることも明らかになってきました。

世界中のマリモのルーツが実は日本!?

マリモは、日本と、遠く離れたバルト海周辺の北ヨーロッパが主要な産地です。
阿寒湖と、約8500km離れたアイスランドのミーヴァトン湖のマリモが同じ遺伝子を持つことが、釧路市教育委員会マリモ研究室の調査で確認されました。

さらに、日本やドイツ、フィンランド、アイスランドなど33ヶ所にもわたる湖沼のマリモの遺伝子を調査したところ、驚愕する事実がわかったのです。
それは、最も古いタイプの「ルーツとなるマリモ」(祖先型マリモ)は日本に集中していること。
しかも、阿寒湖は祖先型のマリモが現存する国内の湖の中で形成時期が最も古いことが確認されたのです。

日本のマリモが遥か彼方の北ヨーロッパに伝わった時期は13万年前~7万年前の間氷期か、1万年前の最終氷河期以降。
ハクチョウなどの渡り鳥が運搬役になって、糞に含まれた細胞、あるいは羽に付いた胞子で運ばれたのではと推測されているのです。

では、阿寒湖が世界中のマリモのルーツなのでしょうか?

その真相はわかりません。
なぜなら、環境の悪化で、死滅してしまった湖沼があるから。
現存するマリモのルーツは阿寒湖ですが、ひよっとすると、北海道、あるいは本州のどこかの湖にルーツとなるマリモがあった可能性も捨てきれないということなのです。

阿寒湖のマリモを世界遺産に!


土産屋で販売の養殖マリモ(実は人工マリモ)

苔類が丸くなった「鳥海マリモ」

観光地などで「養殖マリモ」の名で販売されているものは、釧路湿原内のシラルトロ湖で採取し、人工的に丸めたもの。
富士五湖で、「フジマリモ」と称して土産物屋で販売されるのもこの人工的なマリモです。

また、鳥海マリモのようにコケ類が水流でまるく固まったものは本来のマリモではありません(藻類ではなく、苔の一種)。

北半球一帯で確認されるマリモのルーツが日本、そして北海道と推測される今日ですが、なぜか、「北海道遺産」には登録されていないのが現実ですが、「現存する世界のマリモのルーツが阿寒湖」ということで、世界遺産に登録をという動きもあるのです。

まだその生態が明らかになっていないマリモ。
そんなマリモの生態を解明し、世界遺産に。
そんな夢のある話が、阿寒湖の湖底で今日もコロコロと転がっているのです。

3月29日は阿寒湖のマリモが特別天然記念物に指定された日(昭和27年3月29日)で、「マリモの日」になっています。

【知られざるニッポン】vol.25 世界に散らばるマリモのルーツは阿寒湖!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

マリモ展示観察センター

2017年5月15日

 

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