「三徳山-信仰の山と文化的景観」は、現在、文化庁の世界遺産暫定一覧表候補となっており、鳥取県では世界遺産登録へ運動を展開中。ところがこの三徳山(みとくさん)、標高はわずかに899.6m。霊峰というほど標高はなく、周囲からとくに目立つ山容でもありません。なぜ三徳山が霊山となったのでしょうか?
三徳山に登拝するまえに、三朝温泉で癒やしを!
三徳山は、標高は四捨五入してようやく900m。それなのに不思議なことに本来なら鳥取県では標高800m以上でなければ生育しないブナが標高400mから生育するなど霊気とも感じられる冷涼な環境になっています。
三徳山に参詣し断崖絶壁での修行は、まさに六根清浄(ろっこんしょうじょう)といわれるとおりに、「六根」(目、耳、鼻、舌、身、意)を清めますが、参拝の前に「心身を清める場所」が三朝温泉(みささおんせん)だったのです。
今でこそ三朝温泉は三徳川の川沿いに旅館が建ち並んでいますが、その昔は河原の露天風呂に入浴していたと推測できます。
注目したいのは、ラジウムやラドンを大量に含む含放射能泉でありながら加温することのない温泉。
「全国各地の含放射能泉は、鉱泉といわれる冷泉が多く、実は含放射能泉に含まれるラドンは加熱することによって、空気中に拡散してしまいます。だから、三朝温泉の源泉は実に貴重な含放射能泉といえるんです」(温泉ソムリエ・板倉あつしさんの解説)
世界有数の放射能泉で効能も期待できる、このことを古の人たちは知っていたのでしょう。
三朝温泉での湯治により「六感」(観、聴、香、味、触、心)を癒し、研ぎ澄ませるというワケなのです。
日本遺産登録の理由は、「六根清浄と六感治癒の地」だから
つまり、まず三朝で六感を研ぎ澄ませ、その後、三徳山山中の修行で、六根を清めるというユニークな世界を具現化しているのです。
世界遺産登録運動途中に、文化庁の「日本遺産」(Japan Heritage)に登録されましたが、その登録名は、「六根清浄と六感治癒の地〜日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉〜」。三朝温泉と三徳山はセットとして考える必要があるのです。
「三徳山で『六根』を清め、三朝温泉で『六感』を癒すという一連の作法は、人と自然が融合する日本人独自の自然観を特徴的に示したものといえるでしょう。ですから三徳山に入山するならその前後に、必ず三朝温泉を組み入れて下さい」(温泉ソムリエ・板倉あつし)
「三朝町と鳥取県では、信仰の山・三徳山とその文化的景観を将来に守り伝えるため、世界遺産登録を目指し、三徳山内の歴史文化遺産に関する調査研究や、その研究成果についての講演会などの取組みを行っています」(鳥取県教育委員会事務局文化財課)。
その努力が叶い、「三徳山・三朝温泉」は、日本遺産「六根清浄と六感治癒の地~日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉~」に認定されたというわけなのです。
火渡り神事は、六根清浄の「意」にあたる!
平安時代に、天台宗三徳山三佛寺が創建され、蔵王権現を正本尊に祀る奥院の「投入堂」(国宝)が山中の断崖絶壁に建立されました。投入堂に至る道程は行者道と呼ばれる修行の場であり、その道沿いには国重要文化財「文珠堂」や「地蔵堂」などの貴重な仏教建築が点在しています。
「かつての三徳山は北面を北座と呼び、南面を南座と呼んでいました。北座では寺院、僧坊が山内に配され、寺院では仏像、写経、読経、座禅、精進料理などで、己の欲や迷いを断ち切り、心身を清める六根清浄を深めていました。さらに修験道では、深山に分け入り、洞窟や岩屋で寝食し修行を行なっていたのです」(鳥取県教育委員会事務局文化財課)。
ちなみに10月最終日曜の三佛寺『炎の祭典』で行なわれる火渡り神事は、六根清浄の「意」にあたり、国宝投入堂参拝が叶わぬ信者でも、火の上を素足で歩くことで「祈りが届く」のだとか。
これは行かねばなりません!
取材・画像協力/鳥取県
三徳山三佛寺 | |
名称 | 三徳山三佛寺/みとくさんさんぶつじ |
所在地 | 鳥取県東伯郡三朝町三徳1010 |
関連HP | 三徳山三佛寺公式ホームページ |
電車・バスで | JR倉吉駅から日ノ丸バスで33分、三徳山参道入口下車 |
ドライブで | 米子自動車道湯原ICから約44km。または、中国自動車道院庄ICから約64km |
駐車場 | 80台/無料 |
問い合わせ | 三徳山三佛寺 TEL:0858-43-2666 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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