プリンスホテルでも混浴が! 混浴OKと禁止の温泉地があるのはなぜ!?

旅館やホテルなど宿泊施設の浴場に関しては、国の旅館業法が適用され、それに基づき各県で、「旅館業法施行条例」を制定し、それまでの歴史と伝統などを鑑みて、地域色を出した制度を築いています。「10歳以上の混浴は認めない」(公衆浴場は7歳以上)のが原則ですが、東京都などでも混浴温泉が残された場所も。

関東でも混浴あり・なしの県が混在

法師温泉「長寿館」
法師温泉「長寿館」の混浴「法師乃湯」

関東でいえば、混浴の宿泊施設があるのは、栃木県、群馬県、神奈川県のみ。
茨城県、千葉県、埼玉県には混浴温泉はありません。
東京都は例外的に、伊豆大島、式根島、神津島などの島嶼部に混浴の露天風呂がありますが、宿泊施設としての混浴温泉はありません。
しかも各島にあるワイルドな露天風呂も、昔から混浴だったことから、今さら禁止できないだけで、観光協会も「混浴」ということをPRせず、むしろ隠している状態です。

神奈川県も混浴はほぼ絶滅ですが、箱根湯本温泉の「湯さか荘」には混浴庭園露天風呂があり、混浴です(女性は湯浴みタオルを用意/深夜の女性入浴は禁止)。
埼玉県は混浴は禁止で、「ホテルヘリテイジ 四季の湯」の混浴露天風呂ゾーンも水着着用で入浴するスタイルです。

今後は「日本の伝統文化」ともいえる混浴の温泉は、旅館業法の趣旨からも、新規の施設としてつくることは難しいため、貸切風呂、露天風呂付き客室などで混浴風情を楽しむことになるでしょう。

全国的に見てもおおらかな混浴文化が残されるのが、栃木県と群馬県。
栃木県では2022年1月の条例改正まで、公衆浴場における混浴制限「12歳以上」という前近代的な設定で、12歳以上から一気に7歳以上(全国平均)へと引き下げられました。
栃木県、群馬県では、旅館業法の「施行条例」で「ただし、利用形態から風紀上支障がないと認められる場合は、この限りでない」などという付則を加えて、宿泊施設にある既存の混浴施設を認めてきました。

「フルムーン夫婦グリーンパス」のポスター・CMに使われたのは、群馬県・法師温泉「長寿館」にある鹿鳴館風の大浴場「法師乃湯」(混浴)。
浴槽の底から源泉が湧き出すという貴重な湯船です。
昭和56年に放送された国鉄「フルムーン夫婦グリーンパス」のテレビCMを撮影したのが大林宣彦監督で、混浴の風呂につかったのは往年の大スター、上原謙と高峰三枝子でした。
かつては浴槽の周りの箱を脱衣場として使ったというのどかな温泉場で、そうした伝統が群馬県には息づいているので、行政としても「混浴は禁止」といえないのです。

同じ群馬県では、万座温泉にある「万座プリンスホテル」の絶景露天風呂「こまくさの湯」は、その一部が混浴。
女性側露天風呂から混浴露天風呂への通路があり、男性露天風呂の最上段に混浴の湯船が設置されています。
この「万座プリンスホテル」は、日本ホテル協会加盟で日本最高所の温泉ホテルですが、混浴ができるホテルにもなっているのです。
まさに群馬県仕様ということに(湯浴み着を着用し、仲睦まじく入浴する夫婦、カップルも多数)。

こうして温泉文化の一部として存続する混浴ですが、新たに混浴風呂を新設することは難しく、しかも俗に「ワニ男」と呼ばれる女性の入浴を待ち望む客などマナー違反も数多く、さらに男性専用浴場の設置がないため、男性側も「混浴だと落ち着けない」という意見も増え、全体的には廃止に向かいつつあるのが現状です。

温泉の歴史と文化を尊重しつつ、貸切風呂へと移行していく過渡期だと推測できます。

画像協力/群馬県観光物産国際協会

「万座プリンスホテル」の「こまくさの湯」(左端の湯船が混浴)
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法師温泉

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