温泉は、火山性と非火山性に分かれますが、北海道の温泉で非火山性の代表格が、この「モール温泉」。北海道遺産にも認定され、十勝川温泉の代名詞にもなっている存在です。「日本ではここだけ」とPRされることもありますが、実際には釧路湿原でも湧出しています。貴重な「モール温泉」が湧く仕組みとは!?
モールとはドイツ語で、湿原・泥炭、泥炭浴のこと
温泉の分類は、温泉法、温泉の分析方法を示した『鉱泉分析法指針』(環境省自然環境局、平成26年改訂)によって定められていますが、実はモール温泉という名称は、そのいずれにもまったく登場しません。
モール温泉という名は、あまり馴染みのない名前ですが、モール(Moor)はドイツ語の沼地、湿地をルーツにする言葉で、ドイツでは泥土浴(泥療法=ペロイド療法)などをモールと呼んでいます。
泥炭を肌に塗ることで、肌の引き締め効果や抗菌作用、毒素の体外への排出を促し、さらに泥炭に身を浸して鎮痛や血行促進を図ろうというものです。
モール温泉は、まさにこの泥炭層から湧く温泉。
その特徴は、泥炭に由来するフミン酸(植物、微生物、プランクトンの生物遺骸がルーツの成分)やフルボ酸などの腐植物質が多く含まれること。
北海道の湿原を形成する泥炭層は、地層が堆積する際に、堆積層の中に閉じ込めれた野草や水生植物などが炭化したもの。
ネッシーで有名なネス湖の周囲も泥炭層。
北海道では十勝川流域、釧路湿原、別海などの根釧原野なども泥炭層です。
泥炭は、炭素の含有量が低く、水分を多く含みますが、乾かせば燃料などに使うこともできます。
英語ではピートと呼ばれ、ウイスキー特有のスモーキーな香りは、ピートの煙で麦芽を乾燥させることで生まれています。
その意味ではモール温泉はピート温泉と言い換えることもできます。
北海道ではモール温泉のハシゴも楽しめる
モール温泉は黒湯と呼ばれるような茶色がかった透明で、入浴すると肌がすべすべ、ツルツルになることが実感できます。
東京都心に湧く黒湯は、化石海水温泉ですが、このモール温泉の要素も入って、黒い色をしているのです。
温泉法ではモール温泉という分類はないので、主たる成分によって単純温泉、重曹泉、食塩泉などに分類されますが茶色がかっていて鉄分が少ないアルカリ性の温泉であればモール温泉の可能性が大ということになります。
十勝川温泉が国内ではルーツといえる温泉ですが、北海道でも釧路湿原、根釧原野の別海町などに湧くのはこのモール温泉です。
地下深い泥炭層から湧くモール温泉が、山梨県(甲府市やその周辺)、鹿児島県(霧島山麓)や大分県(大分市や玖珠温泉)にもあります。
青森県東北町の東北温泉は「日本一の黒湯」をPRしていますが、こちらもモール温泉です。
かつては「世界唯一のモール温泉」ともPRされた十勝川温泉ですが、現在では日本各地に湧いていることが明らかになっています。
それでも、各地の泥炭層はそれぞれに成因や成分が異なるため、単純にモール温泉といっても含まれる腐植物質が異なるため、「温泉の数だけ泉質が異なる」のがモール温泉の特徴。
北海道を訪れたら、豊富町(サロベツ原野)、石狩平野、十勝川温泉、釧路湿原(鶴居村温泉など)、別海町とモール温泉のハシゴを楽しむのもおすすめです。
北海道遺産認定「モール温泉」は、湿原に関係している!? | |
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