奈良県北葛城郡王寺町、JR・近鉄王寺駅の東、JR和歌山線と大和路線の分岐点で、近鉄田原本線も脇を通る場所にあるのが、舟戸児童公園。明治23年に鉄道が開通し、「鉄道のまち」といわれる王子町らしく、公園にはD51 895が静態保存され、しかも王子町の文化財にも指定されています。
機関士を守った集煙装置なども現存
このD51は、昭和19年に日立製作所で製造された蒸気機関車で、D51形として895番目の製造となることからD51 895とナンバリングされています(実際のナンバープレートは王寺町地域交流センターにて展示)。
D51は、蒸気機関車の中では最大の1115両が製造されたため、全国各地に多数が静態保存されていますが、鉄道記念物を除いて、文化財指定は初となります。
D51 895は、昭和47年11月7日に廃車となりましたが、給水温め器、給油装置などの機械類をはじめ、動輪やメインロッド(主連棒)、ブレーキなどの走行装置や炭水車に外観上の目立った破損・欠損もなく、罐(かま=ボイラー)上の集煙装置(昭和29年に設置)と重油併燃装置(昭和31年設置)も現存しているため、文化財登録となったもの。
蒸気機関車は、火室に石炭をくべて火を燃やし、水を沸かして蒸気を作り、蒸気をシリンダーに送って動輪を動かすという単純な仕組み。
機関士と機関助士は、罐(ボイラー)に石炭をくべ続けなければならず(火室の中は1500度という高温に)、加減弁ハンドルでシリンダーに送る蒸気の量を調整し、スピードを調節していました。
集煙装置は、トンネル内で煙が運転席に入り込まないよう後方に排出させるもので、この装置が開発されるまで、長いトンネルで機関士が一酸化炭素中毒に陥るなどの事故があったのです(しかもトンネル内では機関室の気温が60度になることも)。
通常は同装置の蓋を開けて煙を上方に排出、トンネルに入る際に空気シリンダで蓋(ふた)を閉めて煙を後方に誘導しました。
重油併燃装置は、走力を高めるのに火室内に重油を噴射した装置です。
このD51 895は、製造後、柳井機関区(山口県)、岩国機関区(山口県)、広島第二機関区(広島県)、津和野機関区(島根県)、鳥取機関区(鳥取県)、福知山機関区(京都府)と転属し、昭和46年4月5日から廃車までの1年7ヶ月は奈良運転所に配置されていました。
奈良運転所の管内には山線と恐れられた加太越(かぶとごえ)があり、備え付けられた集煙装置と重油併燃装置が役立ったのです。
昭和46年9月26日には、関西本線「JC赤トンボ号」として、D51三重連の先頭で牽引して湊町駅〜伊賀上野駅間を走ったこともありました。
王子町に明治時代から続いた蒸気機関車の鉄道文化があったことを記念すべく、舟戸児童公園に静態保存されています。
舟戸児童公園・D51 895 | |
名称 | 舟戸児童公園・D51 895/ふなとじどうこうえん |
所在地 | 奈良県北葛城郡王寺町舟戸1-3937-1 |
関連HP | 王寺町公式ホームページ |
電車・バスで | JR・近鉄王寺駅から徒歩10分 |
問い合わせ | 王寺町観光協会 TEL:0745-33-6668 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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