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意外に知らない、間もなく消滅する「電車特定区間」、それが運賃大幅増につながる!?

JR東日本は、1987年の設立以来、初となる運賃値上げを2026年3月に実施予定です。通勤・通学定期まで値上げとなりますが、実はその背景には、東京エリアの「電車特定区間」と「山手線内」というふたつ運賃区分が実質廃止となることがあります。そもそも「電車特定区間」とは何なのでしょう?

実はJRの運賃は全国一律ではない!

今回の改訂では、普通運賃が平均7.8%、通勤定期が12.0%、通学定期が4.9%の値上げとなり(これはあくまで平均値、詳細は後述)、山手線の初乗りは現行の150円から160円に値上げされる見通し。
国土交通相の諮問機関の運輸審議会は、2025年4月1日(月)、「認可することが適当」と答申しているため、値上げされることはほぼ確実です。
東京駅からの普通運賃は、新宿駅が210円から260円、横浜駅が490円から530円、大宮駅が580円から620円に値上げされます。

実は、この運賃値上げ、平均で7.8%としていますが、地方に優しく、首都圏に厳しい数字に。
「幹線」4.4%、「地方交通線」5.2%という値上げ率ですが、平均して7.8%となるのは、これまであった東京エリアの「電車特定区間」と「山手線内」というひたつの運賃区分が実質廃止となり、「幹線」に統合されることで、「電車特定区間」10.4%、「山手線内」ではなんと16.4%という大幅値上げとなるのです。

JR線の運賃体系は一律ではなく、幹線と地方交通線に分けられています。
加えて少し割安の、「電車特定区間」が設定され、さらにJR東日本は利用者が多い山手線にお得な「東京山手線内」という運賃区分を設けていたのです。

「電車特定区間」と「山手線内」の廃止は家計に大きく響く

電車特定区間と山手線内(JR東日本『運賃改定の申請について』)

歴史的には慢性的な赤字に悩む国鉄(現・JRグループ)の経営改善を目的に、1981年、「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」が設立。
それまで全国一律で「同一サービス、同一運賃」だった運賃を、幹線と地方交通線に分け、地方交通線の運賃を1割ほど割高に設定したことが始まりです。

その後、1984年に首都圏と大阪圏設定されたのが、「国電区間」で、それぞれ「東京附近」、「大阪附近」として、幹線より割安な運賃が設定され、都市部の利用者のサービス向上を図りました(さらに割安な「大阪環状線内」も設定)。
これが1987年4月1日、国鉄の分割民営化、JR発足で国電(国鉄の電車区間)でなくなったため「電車特定区間」(JRの旅客営業規則第78条第2項)と改称されています。
新たに「東京山手線内」、そして継続した「大阪環状線内」は、「電車特定区間」はまさに国鉄時代の遺物といえる存在ですが、首都圏、大阪圏の人は、少し割安な運賃を享受できたのです(入場券についても、独自の料金設定)。

JR西日本は2025年4月1日(月)にすでに「大阪環状線内」を廃止し、「電車特定区間」に吸収させていますが、「電車特定区間」は存続させる予定です。

JR東日本は、競合する私鉄の運賃改定で、国鉄時代には顕著だった運賃格差が縮小、あるいは逆転、し、「電車特定区間」の設定意義が薄れていることから、今回、「電車特定区間」と「山手線内」を幹線に統一することにしたのです。
ひとことでいえば、「競合する私鉄に合わせて値上げ」ということに。
値上げ分の収益を様々なサービスや安全運行、地震対策、バリアフリー化などに充て、鉄道インフラとしても充実を図ろうというもの。

一見するとなんでもなさそうな「電車特定区間」と「山手線内」の廃止ですが、通勤、通学定期には大きくのしかかり、「山手線内」の通勤定期は22.9%、通学定期は16.8%、「電車特定区間」でも通勤定期は13.3%、通学定期は8.0%の値上げとなります。
普通運賃も「電車特定区間」10.4%、「山手線内」16.4%という大幅な値上げに。
1987年の設立以来の値上げなので致し方ないかもしれませんが、「電車特定区間」と「山手線内」の廃止は家計にも大きく響くことに。

実際の値上げ額(JR東日本『運賃改定の申請について』)
意外に知らない、間もなく消滅する「電車特定区間」、それが運賃大幅増につながる!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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