最高所が室堂ターミナル(ホテル立山)の標高2450mという、北アルプスを横断する観光ルート「立山黒部アルペンルート」。その立山は、気象庁が選定する全国111の活火山のひとつ。室堂近くの地獄谷では噴気を上げ、活発な火山活動を見せています。では、噴火口はどこにあるのでしょう?
気象庁の火山名は意外にも「弥陀ヶ原火山」
立山登山者も意外に知らないのが、「立山火山」の生い立ち。
気象庁は、常時観測火山として、立山火山ではなく「弥陀ヶ原火山」(みだがはらかざん)としています。
弥陀ヶ原は立山黒部アルペンルート途中、立山高原バスで通る東西4㎞、南北2km、標高1600m〜2000mの高原地帯。
餓鬼ノ田圃(がきのたんぼ)と呼ばれる池塘、湿原も点在し、ラムサール条約の登録湿地になっています。
弥陀ヶ原ホテルが建ち、木道で湿原を周回できるその「雲上の別天地」的な雰囲気からは、活火山のイメージ、ましてや「弥陀ヶ原火山」という名前には程遠い感じです。
「弥陀ヶ原火山」は、安山岩・デイサイトの成層火山で、数万年前にマグマ噴火は終息、火山の山頂部は侵食で失われ、火砕流堆積物の台地の弥陀ヶ原、五色ヶ原などが残されているのです。
立山黒部アルペンルートの最高所、室堂平にある地獄谷やミクリガ池、ミドリガ池、玉殿岩屋などの凹地(大小20個以上)は、水蒸気噴火の爆裂火口なのです。
そのうち地獄谷は最大の爆裂火口で、ふたつの火口が合体して形成される凹地。
奈良時代ころまでは火口湖があったと推測されています。
弥陀ヶ原の東にある立山カルデラは、侵食によって崩壊したカルデラで、立山火山に食い込んだ谷が激しい侵食作用によって拡大してできた侵食カルデラです(日本最大級の崩壊地)。
通常のカルデラは火山の山体内部の空洞化によって崩落してできた凹地ですが、立山カルデラは、それとは異なる珍しい侵食カルデラです。
カルデラと聞くと、火口があったと考える人も多いかとおもいますが、この立山カルデラに火口があったわけではありません。
立山カルデラの巨大な崩壊地は、常願寺川に大量に土砂を流出し、土砂災害を生むことから、砂防工事が進められ、そのためのトロッコ鉄道「立山砂防工事専用軌道」も敷設されています。
立山カルデラ内には、かつて立山温泉が営業していましたが(ウォルター・ウェストンも立ち寄っています)、立山黒部アルペンルートの開通を受け、昭和48年に廃湯しています。
現在の立山には侵食によってマグマが噴出した火口は消失。
最近の4万年間は静穏期で、マグマに由来する生成物は生産されていません。
室堂平にある爆裂火口群は水蒸気爆発によるもので、地獄谷の噴気、火山活動が、有史以来、弥陀ヶ原火山のでもっとも激しい火山活動を見せる場所です。
江戸時代後期の天保7年(1836年)には、水蒸気爆発も記録しています。
昭和42年11月4日には火山ガス(硫化水素)により、キャンプ中の2名死亡という死亡事故も発生しています。
現在も火山ガスが漂っているため、地獄谷の遊歩道は立入禁止に。
また、あまり知られていませんが、弥陀ヶ原火山にもハザードマップが作成され、地獄谷で水蒸気爆発が発生した時には直径50cm以上の大きな噴石が室堂ターミナルまで飛ぶ危険があるとしています。
神が立つ山、立山。
室堂平の美しい風景は、こうした活火山の活動で生まれたものなのです。
立山は活火山! 噴火口はどこにある!? | |
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