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駒込富士神社

駒込富士神社

天正元年(1573年)に本郷に築かれた冨士大権現(神仏習合時代の名称)が、加賀藩上屋敷の敷地となったため、寛永5年(1628年)頃、日光御成道沿いの現社地に遷座したのが駒込富士神社。本殿は大きな富士塚の頂きに鎮座しています。駒込富士の斜面にはわざわざ富士山から運んだ溶岩が配されています。

本郷にあった冨士大権現が加賀藩邸建設で移転

鳥居から駒込富士へと続く参道の配置は往時のまま
階段で駒込富士を上った山上に社殿が

天正元年(1573年)5月、本郷村の名主・木村万右衛門と牛久保隼人の夢枕に木花咲耶姫(このはなさくやひめ)が立ち、富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)から木花咲耶姫を勧請して創建。
富士山そのものがご神体で、富士山麓の洞窟は、木花咲耶姫の胎内ということで、胎内巡りなども行なわれました。
これが江戸時代に江戸を中心に東国(西は尾張=愛知県東部あたりまで)に栄えた富士講です。

江戸時代中期には「江戸八百八講、講中八万人」と、江戸八百八町(江戸すべての町)に講が組織されましたが、この駒込の富士塚は江戸時代の初期に築かれ、江戸の富士講のなかでも有名な富士塚として信仰されました。

町火消の間で深く信仰され、前鎮座地の加賀藩上屋敷との関わりから、加賀藩前田家ゆかりの加賀鳶(かがとび=加賀前田藩が江戸本郷の藩邸に出入りの鳶職人で編成したお抱え消防夫)など鳶職の奉納する板碑が多いのも特徴です。

脇には女坂も用意されていますがこれも文政6年(1823年)に築かれたもので、築造記念の石が坂上に残されています。

もともとこの地には塚があったとされるので、遷座の際に古墳をそのまま富士塚へと流用したのかもしれません。
移転前の加賀藩下屋敷、現在の東大構内赤門裏手には富士塚が残っていましたが、昭和49年に破却されています。

神仏習合の江戸時代には冨士大権現、別当は藤堂家(上駒込村に藤堂家下屋敷がありました)の菩提寺・真光寺でした。
慈覚大師開山と伝える古刹、真光寺は第二次世界大戦により被災し、境内社の本郷薬師堂(文京区本郷4-2)を残して東京都世田谷区給田1丁目に移転しています。

駒込富士神社近くの髪結床(理髪店)「海老床」の10代目・嶋村八十八が、父・文治郎の記憶を聞き取り記した絵図『安政年代駒込冨士神社周辺之図』によれば、富士塚背後にそびえるモミの巨木は赤門(現・東大赤門)前から見えたそうです。

富士塚の階段を登って社殿に参拝

戦災などの経験から現在の社殿はコンクリート造り
江戸時代には杉、アカガシが茂り鬱蒼とした森だったとか

現在は駒込天祖神社が管理し、授与品や朱印は天祖神社で用意。
現存する社殿は、昭和36年の再建で、コンクリート造り。
山開き(現在6月30日~7月2日)には夜店も出て賑わいをみせます。
山開きの際には境内の社務所で授与品や朱印を用意。

ちなみに駒込には富士講中興の食行身禄(じきぎょうみろく)が住んでおり、享保18年(1733年)6月10日に江戸を出立して富士山七合五勺目の烏帽子岩で断食行を行ない、35日後に入定しています。
駒込に巨大な富士塚が造られたのも、身禄を中心にした富士講の信者が周囲に多かったからに違いありません。
身禄の墓は、本駒込の海蔵寺(東京都文京区向丘2-25-10)にあるので、時間があれば寄り道を。

なお、文京区に現存する富士塚は、「駒込のお富士山」(駒込富士神社)のほか、護国寺の「音羽の富士」、白山神社の「白山の富士」の3ヶ所。

『江戸切絵図』に見る 駒込富士神社

東西に走る道は、往時の日光御成道で、現在は地下を東京メトロ南北線の走る本郷通り。
江岸寺、天然寺、長源寺、教元寺、圓通寺、大雲寺、養昌寺、南谷寺(目赤不動)、定泉寺、吉祥寺と続く寺町を形成する寺院は、明治初年の廃仏毀釈の荒波をくぐり抜け、今も健在。

『江戸名所記』に見る 駒込富士神社

寛文2年(1662年)刊の『江戸名所記』。浄土真宗の僧・仮名草子作家の浅井了意(あさいりょうい)が描いた江戸の名所案内。
巻二に駒込村富士社并不寝権現(根津権現)が登場。

駒込富士神社
名称 駒込富士神社/こまごめふじじんじゃ
Komagome Fujisan Shrine
所在地 東京都文京区本駒込5-7-20
関連HP 文京区公式ホームページ
電車・バスで JR山手線・東京メトロ南北線駒込駅、都営地下鉄三田線千石駅から徒歩12分。東京メトロ南北線本駒込駅から徒歩13分
ドライブで 首都高速5号池袋線護国寺ランプから約3km
駐車場 境内駐車場を利用
問い合わせ 富士神社 TEL:03‐3823‐7894
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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