TJライナーは、東武東上線で2008年6月14日に営業運転を開始した有料座席指定の通勤列車。ロングシートを回転させてクロスシートにするデュアルシート車(50090型電車)を投入し、東武鉄道では有料特急の走っていない東上線に確実に着席できる快適な座席指定車両を生み出したのです。
首都圏の元祖「有料座席指定電車」をデュアルシートで実現
デュアルシートの元祖は、近鉄のL/Cカーで1996年に登場。
さほど混雑しないので快適な転換クロスシートが望ましい名古屋線と、かなり混雑するためロングシートが好ましい大阪近郊という両方の課題を一気に解決するというのが、デュアルシートだったのです。
なんとこの「L/Cカー・デュアルシート」は通商産業省選定のグッドデザイン商品(輸送機器部門)に選定されています。
これを東武鉄道は、「マルチシート」と名を変えてTJライナーに採用したのです。
路線距離の長い近鉄は、エリアの違いで生じる混雑度に対応するためでしたが、東武鉄道は、「有料座席列車」としてラッシュタイムに快適さを確保するために転換クロススートを採用。
日中の混雑しない時間帯には、ロングシートという真逆の使い方をしたことになります。
東武伊勢崎線は、有料特急を通勤に使うことで問題は解消されましたが、東上線には有料特急がないため、ラッシュうタイムは、誰であろうと混雑した車両に乗ることしか選択肢はありませんでした。
特急専用車両ではなく、デュアルシート車を導入すれば、コスト面でも鉄道会社に大きな負担が生じず、結果として利用者にも好評を博しました。
この逆転の発想ともいえる「TJライナーの実験」は、通勤有料特急のない首都圏の私鉄には大きな影響を与え、2017年に西武鉄道・東京メトロ・東急・横浜高速鉄道直通の「S-TRAIN」、2018年に「拝島ライナー」、京王電鉄「京王ライナー」、東急電鉄「Q SEAT」、そして2019年3月26日には、東武鉄道が東京メトロ日比谷線に直通乗り入れする「THライナー」と続々とデュアルシート車を使った有料座席指定車両が生まれたのです。
ちなみにTJライナーのホームページには「座席指定券をご購入いただくことにより、通勤・通学のほかお出かけ、レジャー、お買物の帰り等、お子さまとご一緒のご家族連れのお客さまにも、ゆったりと着席してご乗車いただけます」とあり、家族での移動も想定されていることがわかりますが、実際にも土休日にはファミリー利用が多いようです。
ただし、時間帯は土休日も朝が池袋方面へ、夕方以降が森林公園方面となっていて、池袋駅発の行楽には使えません。
「座席指定通勤電車の元祖」、TJライナーは、何が画期的だった!? | |
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