植物性の繊維で織った布を雪の上に置き太陽光に晒(さら)すと、自然界のパワーで漂白されることが経験的に知られています。それを利用して越後上布の工程に最後に行なわれるのが、3月の陽光と、締まった雪を利用した越後塩沢の「雪晒し」です。今回は中田屋織物の協力を得て、「雪晒し」を取材することができました。
今や幻になりつつある、越後上布を雪に晒す!
奈良時代の天平3年(731年)、都に献上された越布(えっぷ=越後上布)は、奈良の正倉院に収蔵されています。
平安時代に編纂された『延喜式』にも「越後布、越後国商布一千段が上納」とあり、、『吾妻鏡』には源頼朝の征夷大将軍就任祝いには、越後上布が贈られたことが記録されています。
越後上布は、苧麻(ちょま=カラムシ)の靱皮(じんび)繊維を糸に績いだ青苧(あおそ)を織りあげたもの。
イラクサ科の多年生植物、カラムシを使って糸を作り、麻布に織り上げるのですが、繊維が細ければ薄い贅沢な着物に仕上がるため、高貴な人の着る織物には気の遠くなるような手仕事が必要となるのです。
そんな越後上布ですが、古代に先進技術を有した帰化人が越後に土着し、越後上布を生み出したという類推も成り立ちますが、実は、そのルーツは定かでありません。
布を織り上げた後、雪の上に晒し、春の陽光に当てると、白くなるという特性を利用した工程が「雪晒し」です。
手間隙がかかる、細い糸にする熟練の技を持つ人が少なくなり、高価なことなどから今や幻の布になりつつある越後上布ですが、「既存の越後上布も雪に晒すと色鮮やかになるし、シミなども落ちる」ということで、リユース的な「雪晒し」も行なわれています。
取材協力/中田屋織物、新潟県観光協会、雪国観光圏
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