「なせば成る なさねばならぬ何事も 成らぬは人の なさぬなりけり」は、米沢藩主・上杉鷹山(うえすぎようざん)の遺訓。天明5年(1785年)、上杉鷹山は35歳の若さにして隠居していますが、その時、米沢城で息子に残した言葉が、この「なせば成る」だったといわれています。
ケネディ大統領の「最も尊敬する日本人」が、上杉鷹山
上杉鷹山(鷹山=藩主隠居後の号で、治世の際には上杉治憲・うえすぎはるのり)は、寛延4年(1751年)に日向高鍋藩主・秋月種美(あきづきたねみつ)の次男として、高鍋藩の江戸上屋敷(現・麻布高等学校の敷地)で生まれました。
宝暦10年(1760年)、10歳で米沢藩8代藩主・上杉重定(うえすぎしげさだ)の娘・幸姫の婿養子に。
宝暦14年(1764年)、14歳の頃から儒学者・細井平洲(ほそいへいしゅう)に師事し、君主としての知識を磨き、17歳で家督を相続しています。
当時の米沢藩は、大きな借金に苦しむ時代で(絶望した領民が次々に藩を逃げ出す状況)、若くして藩主になった上杉鷹山は、自らの決意を表す誓詞を春日神社(誓詞の内容=民の父母の心構えを第一に、学問・武術を怠らず、質素・倹約を守り、賞罰は正しく行なう)、白子神社(誓詞の内容=大倹約を行って米沢藩を復興)に奉納しています。
明和4年(1767年)、一部の重役からは、米沢藩の体面に関わるとの反対を受けますが、12ヶ条からなる大倹約令を発令。
自らも節約に努め、江戸藩邸での藩主の生活費を7分の2とし、日常の食事は一汁一菜、普段着は木綿(もめん)、奥女中も50人から9人というリストラを行なっています。
さらに家臣団を使い、刀を鍬に持ち替え荒地を農地に、堤防を築いて収益アップを図っています。
特産品であった青苧を使い、武士の婦子女に内職として機織りを習得させたほか、桑を栽培し、高級な絹織物への移行を果たしています(米沢織の誕生)。
絹織物のほか、製塩、製紙、製陶などの産業を起こし、殖産興業に尽力しますが、天明3年(1783年)、浅間山噴火もあって、天候不順により天明の大飢饉が生まれ、新潟や酒田から米1万俵を購入し、飢えた領民に分け与えたため、財政が大きく悪化しています。
莫大な借金を背負っての出発の財政改革も、天明の大飢饉によって挫折。
天明5年(1785年)、上杉鷹山は35歳という若さで、失意のうちに家督を上杉冶広に譲り隠居しています。
その際、君主としての心得を記した「伝国の辞」を上杉冶広に残していますが、同時に息子に贈った言葉が、この「なせば成る なさねばならぬ何事も 成らぬは人の なさぬなりけり」だといわれています。
似たようなフレーズに、平田篤胤の「為せば成り為さねば成らず成る業を成らずと棄つる人のはかなさ」がありますが、年代的にはこちらの方が少し後になります。
ジョン・F・ケネディ(John Fitzgerald Kennedy)第35代アメリカ大統領は「最も尊敬する日本人政治家」として、上杉鷹山の名を挙げています(就任時に、日本の記者の質問に答えて「YOZAN UESUGI」と回答、その記者も耳を疑ったと伝えられています)。
アイゼンハワー( Dwight David Eisenhower)第34代大統領時代から始まった不況(1958年不況=アイゼンハワー不況)を打開するために、ケネディは、江戸時代、すでに倒産状態にあった極貧の米沢藩を立て直した上杉鷹山を学んでいたのです。
平成25年11月、駐日米国大使に就任した長女キャロライン・ケネディは、「父ジョン・F・ケネディ元大統領が、江戸時代の米沢藩の名君とされる上杉鷹山を尊敬し、就任演説に代表される考え方に影響を与えた」と述べ、平成27年9月、夫とともに「YOZAN UESUGI」の、米沢城跡(山形県米沢市)を訪れ、上杉鷹山の名はさらに高まったのです。
ケネディの就任演説には、「国家があなたに何をしてくれるか問うのではなく、あなたが国家に対して何ができるかを自問してほしい」というのがありますが、「人民は国家に属したる人民にして我私すべき物にはこれなく候」(上杉鷹山が息子の上杉冶広に残した「伝国の辞」の一節、現代語に直すと「人民は国家に属しているから人民であって、自分勝手にしてはならないものです」)の影響をも垣間見られ、〈改革の政治家・上杉鷹山〉の精神は、海を渡って現代にも生きているのです。
山形県米沢市の上杉神社(米沢城・本丸奥御殿跡)には上杉鷹山像とともに為せば成るの碑が立っています。
その時歴史は動いた! 格言・名言の誕生地(2)なせば成る|上杉鷹山 | |
所在地 | 山形県米沢市丸の内1 |
場所 | 松が岬公園(米沢城) |
電車・バスで | JR米沢駅から山形交通バス白布湯元行きで8分、上杉神社前下車、徒歩5分。または、タクシーで8分 |
ドライブで | 東北自動車道福島飯坂ICから約38km |
駐車場 | 松が岬おまつり広場駐車場(300台/無料)など |
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