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【知られざるニッポン】vol.37 日本一の登山鉄道、箱根登山鉄道

箱根登山鉄道

あじさい電車でも有名な箱根登山鉄道。箱根の山を上る登山電車ですが、実はこの鉄道、粘着式鉄道(車輪とレールの間の静摩擦に頼って走行する鉄道=いわゆる普通の鉄道です)と呼ばれるのですが、粘着式鉄道として、日本で最大の勾配を登るのが、実は箱根登山鉄道です。なぜ「登山鉄道」という名があるのか、知れば「なるほど」の歴史です。

スイス、ベルニナ鉄道をモデルに大正8年開業

箱根登山鉄道「アレグラ号」
ベルニナ・エクスプレス(ベルニナ特急)

スイス、ベルニナ鉄道をモデルに大正8年に開通した本格的な山岳鉄道。
当初、あまりに急勾配のため、信越本線の碓氷峠で採用されていたアプト式ラック鉄道(歯軌条鉄道)を採用予定でしたが、ベルニナ鉄道が高度差1824mを最急勾配70‰(パーミル)、最急曲線半径45mで克服、歯車を使ったラック式ではなく通常のレールを使った粘着式鉄道を採用していたことから、箱根登山鉄道も通常と同じ粘着式鉄道として敷設されたのです。

つまりは、スイスアルプスの山岳鉄道がモデル。
というわけで、東京近くにありながら、何やら「登山」を意識させるのはそんなところにも原因があるのかもしれません。

そのベルニナ鉄道は、現在、その後継であるレーティッシュ鉄道(昭和18年に合併)のベルニナ線となっていますが、「レーティッシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺の景観」として世界遺産になっています。
日本の旅行者には「グレッシャー・エクスプレス(氷河特急)」、「ベルニナ・エクスプレス(ベルニナ特急)」としてあこがれの鉄道にもなっています。

小田原~強羅間の13ヶ所、延べ2kmにおよぶトンネルや、26ヶ所の鉄橋を設けているのは景観保護のため。
国立公園となったのは昭和11年2月1日のことですが、建設時から環境ほどという意識が強くあり、これもスイス視察の影響だったのかもしれません。
開通から間もない大正12年、関東大震災では早川橋梁が崩落したりと大きな被害を生みましたが、見事に復興を果たしています。

開業当時の箱根登山鉄道
関東大震災の惨状

1000mで80mを登る、日本一の急登を体感

日本の粘着式鉄道では最大の80‰(パーミル)の急登

箱根湯本駅〜強羅駅まで8.9kmの間、急勾配の連続で箱根の山を登ります。
あまり知られていませんが、登山電車には散水タンクがあり、走行中、車輪とレールの間に水をまきながら走行しています。
ブレーキも4種類を搭載。
車輪の回転をとめる電気ブレーキ、空気ブレーキ、手動ブレーキのほかに、空気の圧力で特殊な石をレールにおしつけて、電車をとめるレール圧着ブレーキも装備しています。

箱根湯本の駅を出発すると、いきなり車輪の力だけで最急勾配80‰(パーミル)の急登があるので、乗車の際にはお見逃しなく(最初のガードの場所です)。
パーミルとは角度で、80‰(パーミル)は、1000m走る間に80m登るということ。
箱根湯本駅すぐのガードは見た目にも傾いています。

標高165mの塔ノ沢駅から標高448mの宮ノ下駅間はもっとも標高差が大きく、急勾配と急なカーブが連続します。283mの標高差を克服するために、出山信号場、上大平台信号場、大平台駅と3ヶ所のスイッチバックを用意しています。

旧ベルニナ鉄道を受け継ぐスイスのレーティッシュ鉄道とは姉妹関係になっています。
2014年に箱根登山鉄道として25年ぶりとなる新型車両「アレグラ号」は、姉妹鉄道のレーティッシュ鉄道の新型車両と同名になっています。

ちなみにレーティッシュ鉄道(旧ベルニナ鉄道)の前身、ランドクアルト=ダヴォス狭軌鉄道株式会社が創業したのは1888年(明治21年)。
奇しくも1888年(明治21年)10月1日、箱根登山鉄道は、その前身である小田原馬車鉄道の国府津〜小田原〜湯本間が開業しています。

少し驚くのは、大正8年の開業時(当時は小田原電気鉄道)に、アメリカ製の電装品や台車などを使用して7両が製造された小田原電気鉄道チキ1形電車が、小田急車両の乗り入れ開始時に改造されながらも現在4両2編成(103号・107号、104号・106号)が現役で活躍していること。
新型車両もいいですが、このレトロな車両に乗れば、箱根の歴史を体感することができます。

大正8年の開業時に投入されたチキ1形を改造した104号
【知られざるニッポン】vol.37 日本一の登山鉄道、箱根登山鉄道
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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