日本の登山鉄道 「全国登山鉄道‰会」 6社乗り比べ

島国ながら急峻な山の多い日本には、「登山鉄道」と名乗ることができるような勾配を登る鉄道が数多く、箱根登山鉄道、富士急行、大井川鐵道、叡山電鉄、南海電気鉄道、神戸電鉄の6社で、「全国登山鉄道‰会」を結成しています。‰(パーミル)とは1000m走る間に何メートル登るかを表す数字で、40‰以上の路線を有する私鉄6社で結成。

全国の民鉄6社で「全国登山鉄道‰(パーミル)会」を結成

全国登山鉄道‰会 全国登山鉄道‰会

箱根登山鉄道、富士急行、大井川鐵道、叡山電鉄、南海電気鉄道、神戸電鉄の6社では、「観光地が沿線にあり、かつ登山鉄道としての性格を有している」という共通点から、「全国登山鉄道‰会」を平成21年9月に結成し、共同での旅客誘致に努めています。
ちなみに国土交通省の解説では、登山鉄道に定義はなく、登山鉄道という概念にはケーブルカーなども含まれるという話ですが、この「全国登山鉄道‰会」は、ケーブルカーは除外し、通常の粘着式鉄道と、アプト式鉄道に限っています。

箱根登山鉄道

箱根登山鉄道

箱根登山鉄道「アレグラ号」

箱根登山鉄道104号

大正8年の開業時に投入されたチキ1形を改造した104号

明治21年開業の小田原馬車鉄道が前身。
主任技師長・半田貢をスイスの山岳鉄道視察に派遣し、最急勾配80‰の粘着式鉄道として登山鉄道を建設。
大正8年6月1日、箱根登山鉄道箱根湯本駅〜強羅駅開業。

【DATA】
箱根湯本駅=標高96m
強羅駅=標高541m
距離・標高差=8.9km、445m
最大勾配=80‰(粘着式鉄道として日本一の勾配)

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富士急行線

富士急行線「富士山ビュー特急」

8500系「富士山ビュー特急」

富士急行線

快速列車「富士登山電車」

中央本線の大月駅と河口湖駅(標高差499m)を結ぶ高原列車が富士急行線。
外国人旅行者の利用も多く、「フジサン特急」、「富士山ビュー特急」、快速「富士登山電車」を運行。
車窓から富士山の眺めも絶景です。
人気の「フジサン特急」は、特急「あさぎり」として活躍したJR東海371系を大きく改造したもの。
座席定員制の快速列車「富士登山電車」も運転。
2両編成で、車両にはそれぞれ「赤富士」「青富士」という名称がついています。
大月線(大月駅〜富士山駅/23.6km)と河口湖線(富士山駅〜河口湖駅3.0km)に分かれ、あまり知られていませんが、富士山駅(旧富士吉田駅)でスイッチバックします。
開業当初は御殿場駅、身延線・下部駅を結ぶ計画でした。

JR中央本線との直通運転は、「ホリデー快速富士山号」のほか、成田空港発の特急「成田エクスプレス」が河口湖まで乗り入れています。

【DATA】
大月駅=標高358m
河口湖駅=標高857m
距離・標高差=26.6km、499m
最大勾配=40‰

大井川鐵道井川線

大井川鐵道井川線
大井川鐵道井川線

映画のロケなどにも使われる大井川鐵道。
SLや「きかんしゃトーマス号」、近鉄特急だった16000系などで話題の大井川本線(金谷駅〜千頭駅)ではなく、さらにその奥に伸びる井川線(千頭駅〜井川駅/25.5km)が「南アルプスあぷとライン」と呼ばれる日本で唯一のアプト式ラック鉄道。
もともと水力発電所建設の資材運搬用トロッコとして敷設され、観光用に転用されたもの。
そのため沿線に住宅も少なく、駅の多くは秘境駅に。
南アルプス山中を走るためトンネル61ヶ所、橋梁55ヶ所と1/3がトンネルと橋梁に。
尾盛駅〜閑蔵駅間の関の沢橋梁は日本でもっとも高い鉄道橋(川底から70.8m)。
アプトいちしろ駅〜長島ダム駅間は、最大90‰という日本の鉄道路線で最も急な区間で、アプトいちしろ駅でアプト式機関車を連結し、急勾配を克服しています。
アプトいちしろ駅、長島ダム駅では列車から降りて連結作業の見学も。
当初762mm軌間で建設されたため、1067mmに改軌された後もトンネルなどの大きさから車両は軽便鉄道(トロッコ列車)並みのサイズとなっています。

【DATA】
千頭駅=標高300m
井川駅=標高686m
距離・標高差=25.5km、386m
最大勾配=90‰(アプト式ラック鉄道ですが日本の鉄道で最勾配です)

叡山電鉄鞍馬線

叡山電鉄鞍馬線

900系きらら

叡山電鉄鞍馬線

『貴船もみじ灯篭』の期間中のライトアップ

京都市街の出町柳駅と八瀬・鞍馬を結ぶ叡山電鉄。
京阪電気鉄道の子会社で、叡山本線、鞍馬線の2路線があります。
このうち50‰という急登があるのは鞍馬線の二軒茶屋駅〜鞍馬駅間(4.7km、標高差115m)。
二軒茶屋駅〜鞍馬駅間は山岳路線のため、単線になっています。
二軒茶屋駅の次にある市原駅と二ノ瀬駅間には「もみじのトンネル」があり、『貴船もみじ灯篭』の期間中(11月上旬〜下旬)にライトアップが実施されるため、その間を走行する列車は、車内灯を消して徐行するサービスも。
ちなみに鞍馬線の起点駅は宝ケ池駅ですが、すべての列車が叡山本線(出町柳駅)から直通。

【DATA】
宝ケ池駅=標高87.5m
鞍馬駅=標高238m
距離・標高差=8.8km、150.5m
最大勾配=50‰

南海電気鉄道高野線

南海電気鉄道高野線

特急「こうや」(30000系ズームカー)

南海電気鉄道高野線

特急「こうや」(31000系ズームカー)

大阪堺間鉄道として明治17年設立、阪堺鉄道として明治18年、難波駅〜大和川駅(後に廃止)間を開業したのが始まりという現存する日本最古の私鉄が南海電気鉄道。
大阪市浪速区の汐見橋駅から和歌山県高野町の極楽橋駅までを結ぶ全長64.5kmの線で、山岳路線の橋本駅〜極楽橋駅間は単線。
とくに高野下駅〜極楽橋駅間(10.3km)には最急勾配50‰の急坂があり、半径100m以下の急カーブが続く登山鉄道で、最高速度も33km/hに制限されています。
この区間に乗り入れる列車は、「ズームカー」と呼ばれる2扉17m級(ほかの南海電車は4扉、21m)の中型車両が専用車両として使用されています。
南海30000系特急「こうや」、4人掛けコンパートメント座席を有する展望列車「天空」も当然「ズームカー」です(「天空」は、ズームカー22013-22014号車がベースに)。
しかも急勾配での性能を確保するため全車両が動力車。

上古沢駅〜下古沢駅間の中古沢橋梁(全長67.6m、高さ33.4m)は、珍しいトレッスル橋。
九度山駅〜極楽橋駅間はトンネルが連続し、椎出トンネル(全長399m)など24のトンネルが連続します。
終点の極楽橋駅では鋼索線(高野山ケーブル)に連絡し、高野山の山上まで、鉄道で到達できる仕組み。
紀伊清水駅、学文路駅、九度山駅、高野下駅、下古沢駅、上古沢駅、紀伊細川駅、紀伊神谷駅、極楽橋駅、高野山駅、紀ノ川橋梁、丹生川橋梁、鋼索線が近代化産業遺産(高野山参詣関連遺産)に指定。

【DATA】

汐見橋駅=標高0.5m
橋本駅=標高95m
高野下駅=標高108m
極楽橋駅=標高538m
標高差=天空が運転される橋本駅〜極楽橋駅は、19.8km、443m
最大勾配=50‰

神戸電鉄

神戸電鉄
神戸電鉄

大正15年に神戸有馬電気鉄道として設立の神戸電鉄。
全線69.6kmの8割以上が勾配で占められ、最急勾配が50‰。
もう少し細かいデータを見ると、勾配が35‰以上の区間は3割、50‰区間も2割という、まさに登山鉄道。
とくに有馬線は六甲山地を最大50‰の勾配で越えて、神戸と有馬温泉を結んでいます。
有馬線の鵯越駅(標高134m)〜旧菊水山駅(平成30年廃止/標高173m)間はわずか1.0kmの距離ながら39mも登り、最大50‰。
有馬線も有馬口〜有馬温泉間は単線で、2.5kmにもかかわらず、標高差は64mもあり、堂々とした登山鉄道になっています。。
さらに通勤・通学路線である神戸電鉄粟生線も、鈴蘭台駅〜木津駅間は最大50‰。
というわけで、一見するとただの通勤電車に見える神戸電鉄の車両ですが、実は登坂能力を高めるための高い電動車比率、勾配区間での焼きつきを抑える容量の大きな抵抗器、高い減速性能と天候の変化に強い鋳鉄ブレーキシューの採用、さらにはVVVF車(5000系・6000系・6500系)を除く全営業車に非常用の電気ブレーキを装備(「非常電制」)。

【DATA】
湊川駅=標高0m
有馬口駅=標高293m
有馬温泉駅=357m(神戸鉄道最高所)
標高差=有馬線は22.5km(湊川駅起点)、357m。

‰(パーミル)とは
パーミルのper(パー)は「〜につき」を意味する接頭語、パーセント(%)のパーと同じです。
cent(セント)は100を意味するのでパーセントは百分率となります。
これに対してにmil(ミル)は1000のことであり、permil(パーミル)は千分率のことになり、鉄道では水平距離1000m当たりの高低(m)を指すを示す単位に使われています。
道路の勾配は10%などパーセントで表示しますが、鉄道では道路のような急勾配はないために(粘着式鉄道で日本最大勾配の箱根登山鉄道でさえ80‰、つまり8%なので)、パーミルを使っているのです。
ちなみに、かつて信越本線の碓氷峠越えでも最大66.7‰(アプト式、粘着式ともに)です。

 

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