北陸新幹線には、50Hzの東京電力・東北電力、60Hzの中部電力・北陸電力と4つの電力会社が電気を供給しています。それに伴って周波数も3回も変わっています。これを克服するための新技術、JR東日本とJR西日本の管轄の違いなどから生まれる乗務員交代など、意外に知らないトリビアがあるのです。
北陸新幹線乗車の前に知っておきたいトリビアとは!?
まずは供給される電気から。
東日本の東京電力と東北電力は50Hz、西日本の中部電力と北陸電力は60Hzと周波数も異なります。
軽井沢駅〜佐久平駅の間で東京電力(50Hz)から中部電力(60Hz)に変わり、さらに、上越妙高駅〜糸魚川駅間で、中部電力(60Hz)から東北電力(50Hz)に、糸魚川駅〜黒部宇奈月温泉駅間で東北電力(50Hz)から北陸電力(60Hz)へと変わります。
これほど目まぐるしく変わるのは、北陸新幹線だけ。
北陸新幹線は将来的には大阪まで延伸する計画なので、これに関西電力が加わることになります。
東海道新幹線も静岡県の富士川を境に東京電力(50Hz)から中部電力(60Hz)と周波数が変わりますが、当時はこれに対応する車両が開発されなかったため、東京電力管内(50Hz地域)では供給された50Hzの電力を綱島、西相模、沼津、大井にある周波数変換変電所で60Hzに変換し、60Hzを車両に供給しています。
それに対して北陸新幹線は、車両側で周波数の変換を行なっています。
周波数の異なる電源同士が混触すると大きな事故となるため、新軽井沢き電区分所、新高田き電区分所という3ヶ所の異周波数切替セクションを設置しています。
同じJR西日本でも東北新幹線や上越新幹線は50Hzだけに対応すればよかったのですが、その車両は軽井沢駅までしか走れません。
そのために2つの周波数に対応した車両、技術が開発され、運用されているのです。
北陸新幹線の開通に力を入れるのは北陸電力。
JR西日本専用の太陽光発電所を全国に80ヶ所建設、糸魚川駅〜金沢駅間にその電力を供給する計画です(運転用電力量の17%を供給)。
北陸新幹線に乗車した際に気がつく人も多いかと思いますが、車両にはJR西日本のW7系とJR東日本のE7系が使用されています。
E5系(はやぶさ、はやて、やまびこ、なすの)やE6系(こまち、やまびこ、なすの)をベースに共同開発された車両なので、外見、内観に変わりはありませんが、置かれたパンフ類、車体のロゴマークなどに違いがあります。
北陸新幹線におけるJR東日本とJR西日本の境は、上越妙高駅(糸魚川駅はJR西日本管内)。
実は「グランクラス」の料金だけは、この境界線をまたぐと両社に支払いという割の悪いサービスになっているので注意が必要です。
当然、この管轄の分岐で乗務する運転士1名、車掌2名が交代するかと思ったら、乗務員交代だけは長野駅で実施。
なぜかといえば「上越妙高駅を通過する列車があるため全列車が停車の長野駅で行なっています」(JR東日本)とのこと。
つまり、長野駅~上越妙高駅間は、JR東日本管内ながら、JR西日本の運転士、車掌が担当しているということに。
そのため、長野駅~上越妙高駅間の営業損益の配分なども細かく取り決められているのです。
こうした、「越境乗務」は、小田急と小田急箱根(箱根登山電車の小田原駅~箱根湯本駅)、JR東海と伊勢鉄道(四日市駅~河原田駅~津駅間)などでも行なわれています。
長野駅~金沢駅間を建設したのは独立行政法人鉄道・運輸機構ですが、実際に新幹線を走らせるJR東日本、JR西日本の意向を受け、全列車が停車する前提で長野駅、富山駅、金沢駅の3駅は建設されているため、車両とホーム端までの間隔が狭くなっている一方、上越妙高駅は高速で列車が通過しても安全が確保できるよう、間隔が4cm広くとってあります。
ちょっぴり不思議なのは路線名の呼称。
JR東日本では、「北陸新幹線(長野経由)」とあえて(長野経由)を入れて表示しています。
北陸新幹線には開業以前から長い路線名の論争があり、当初の開通は長野駅までだったため、北陸新幹線(正式名)だと混乱するということで、JR東日本は長野行(行を小さく表示)新幹線という荒技に出ました。
これでは、東京に向かう場合も長野行新幹線というおかしなことになるので、1年も経たないうちに行をとって長野新幹線ということにひっそりと変更。
金沢へと延伸するようになると、今度は正式名の北陸新幹線では長野を通るというイメージがないという問題が生まれ、長野県の要望も受け入れて、北陸新幹線(長野経由)という微妙な表示に落ち着いたのです。
JR西日本では、きっぱりと北陸新幹線と表示しているので、ここにも北陸新幹線の有する東西の事情が反映していることに。
3回も周波数が変わる北陸新幹線、意外に知らないトリビアが! | |
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