石川県加賀市橋立町(加賀市加賀橋立伝統的建造物群保存地区)にある蝦夷地(北海道)と西国を結んで日本海を航海した北前船(きたまえぶね)の船主の邸宅を再生したミュージアムが北前船の里資料館。北前船の寄港で賑わった橋立港の北前船主・酒谷長兵衛(さかやちょうべい)が明治9年に建てた船主邸を再生したもの。
北前船の交易で財を成した船主の邸宅
北前船は、現代の船舶会社とは異なり、船主が荷主として寄港地で物を売り買いしながら航海したのが特徴(買積み廻船と呼んでいます)。
首尾よく行けば、航海の度に「倍倍方式」で儲かったので倍船(バイ船)、弁財船(べざいせん)、大型で最大2000石ほど積載できる和船だったため千石船(せんごくぶね)とも呼ばれ、蝦夷地(北海道)〜北陸〜大坂(大阪)への航海で、「千石船、一航海で千両稼ぐ」ともいうほどの儲けを生み出しました。
千両は、現在の貨幣価値に直せば6000万円〜1億円にもなります。
ただし、失敗すれば大損で、難関の津軽海峡、そして日本海の荒波をくぐり抜けるため、「板子一枚下は地獄」ともいわれた危険を含んだ航海でした。
そんな北前船主で、船を6隻保有した酒谷長兵衛の建てた北前船主の邸宅は、30畳の大広間を含め部屋数は17室、土蔵・物置が8棟あるという大邸宅。
起伏に富む地形に建っているので笏谷石(しゃくだにいし=福井市の足羽山で産する石を北前船で搬送)を積んで石垣にして宅地を造成しています(石垣は、表面に板状の笏谷石を張るという独特の工法)。
建物の外壁は潮風を防ぐため、船板を再利用した竪板で覆い、切妻造り妻入りの屋根には北前船で運ばれた石州瓦(赤瓦)、棟には笏谷石を載せています。
貴重な船絵馬や船模型にも注目を!
館内には、船模型(新造船の際、船大工から船主に贈られる20分の1スケールの模型)、船箪笥(ふなだんす=北前船に欠かせない船の中などで使用され、格式が重んじられたタンスで、海中に投げ出された時に浮くような設計になっていました)、御定宿・船荷卸商店・船荷物取扱所・萬問屋などの引き札(江戸・明治期の広告用のチラシ)、市内の寺社に残された代表的な船絵馬(船主が航海の安全を祈願して奉納した北前船が描かれた絵馬)、船往来手形(は船舶が諸国を往来するために船頭が所持しなければならない通行証明書)、船幟(船名などを記したのぼり)、船額、遠眼鏡(とおめがね)、和磁石、船仏壇(冬仏壇、夏仏壇)、祈祷札、蝦夷屏風、海図、船主が嫁ぐ娘に持たせた見事な打掛などゆかりの品々を多数展示しています。
展示される船絵馬は、橋立の出水神社(いずみじんじゃ)に明治25年に奉納された 「幸得丸・幸甚丸・卯日丸」(いずれも帆船)、江戸時代末期の元治元年(1864年)奉納の「毘沙門丸」(弁財船)です。
加賀橋立(加賀市橋立町)は、かつての北前船の船主や船頭などが建てた豪壮な邸宅が今も残る地域で、加賀市加賀橋立伝統的建造物群保存地区に指定されているので、のんびりと町並みの見学を。
日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」の構成資産にもなっています。
画像協力/石川県観光連盟
北前船の里資料館 | |
名称 | 北前船の里資料館/きたまえぶねのさとしりょうかん |
所在地 | 石川県加賀市橋立町イ乙1-1 |
関連HP | 北前船の里資料館公式ホームページ |
電車・バスで | JR加賀温泉駅から加賀温泉バス橋立行きで20分、終点下車、徒歩5分 |
ドライブで | 北陸自動車道片山津ICから約5.5km |
駐車場 | 50台/無料 |
問い合わせ | 北前船の里資料館 TEL:0761-75-1250/FAX:0761-75-2312 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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