「夏休みの十五日の農場実習の間に、私どもがイギリス海岸とあだ名をつけて、二日か三日ごと、仕事が一きりつくたびに、よく遊びに行った処ありました」と宮沢賢治が記しているように、賢治が命名した北上川の風景がイギリス海岸。岩手県花巻市の花巻駅の東2kmほどのところにある北上川の河岸がイギリス海岸です。
渇水時に「青白い凝灰質の泥岩」が露出
「それは本たうは海岸ではなくて、いかにも海岸の風をした川の岸です。北上きたかみ川の西岸でした。東の仙人せんにん峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截よこぎって来る冷たい猿さるヶ石いし川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。イギリス海岸には、青白い凝灰質の泥岩が、川に沿ってずゐぶん広く露出し、その南のはじに立ちますと、北のはづれに居る人は、小指の先よりもっと小さく見えました」(宮沢賢治『イギリス海岸』)。
残念ながら、現在では北上川水系のダム整備が進み、水位が下がる渇水期でないと「青白い凝灰質の泥岩」が現れることがありません。
宮沢賢治は、イギリスの海岸というだけでなく、フィヨルドに似る「スヰーデンの峡湾」、バタクルミの化石や偶蹄類の足跡化石を発掘する様子はイタリアのポンペイのようだとも記しています。
花巻で北上川は大きく湾曲して流れていたため、洪水の被害をたびたび受けていたため、浸水対策として河道の付け替えが計画され、寛文12年(1672年)には四戸金右衛門(しのへきんえもん)が、現在のイギリス海岸のある小舟渡の北側を開削していますが、花巻城の北岸に激流が衝突、崩壊したことで失敗し、新川開削(流路の付け替え)で城下への浸水を防止しています。
つまりイギリス海岸あたりの南北に直進する河道は、江戸時代に開削された新しい河川ということになります。
宮沢賢治が「イギリス海岸」と呼んだ北上川も、近世以降の河道なのです。
ちなみにイギリス海岸遊歩道沿いの高台には、民家を活用した無料休憩所「くるみの森」も整備されています。
宮沢賢治作品の源泉となった場所として国の名勝「イーハトーブの風景地」に選定。
イギリス海岸のほか、岩手県奥州市、気仙郡住田町、遠野市にまたがる種山ヶ原、花巻市の釜淵の滝、岩手郡雫石町の七ツ森、狼森(おいのもり)、滝沢市の鞍掛山、花巻市、遠野市、奥州市の五輪峠(ごりんとうげ)があります。
イギリス海岸 | |
名称 | イギリス海岸/いぎりすかいがん |
所在地 | 岩手県花巻市上小舟渡465地先 |
関連HP | 花巻観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | JR花巻駅から徒歩25分 |
ドライブで | 東北自動車道花巻南ICから約4.5km |
駐車場 | 30台/無料 |
問い合わせ | 花巻市観光課 TEL:0198-24-2111 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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