南九州の縄文文化を壊滅させた鬼界カルデラの超巨大噴火、100年以内に起きる確率は!?

今から7300年前に起こった九州南方沖の海底火山・鬼界カルデラの巨大噴火。近年の研究で、この「アカホヤ噴火」が、完新世（1万1700年前～現在）で世界最大の噴火であることも判明しています。噴火に至るまでマグマの蓄積に9000年を費やしたと推測されるこの噴火、次なる噴火の危険性は!?

7300年ほど前の「アカホヤ噴火」で南九州は壊滅

鹿児島市の南100km、薩摩半島から南に50kmほどに位置し、東西20km、南北17kmほどの楕円状のカルデラが鬼界カルデラ。
火山の巨大噴火で、火山の山体の内部が空洞化し、陥没してきた凹部がカルデラで、鬼界カルデラは過去3回ほどの巨大噴火の繰り返しで誕生した複合したカルデラ地形です（カルデラの最深部は水深600m）。
今も噴煙を上げ、活発な火山活動を展開する薩摩硫黄島、そして竹島は、その外輪山の一部。

直近の巨大噴火が7300年ほど前の「アカホヤ噴火」で、完新世（1万1700年前～現在）で世界最大の噴火であるという調査結果を発表したのは神戸大学の研究グループで2024年2月のこと（火山学誌『ジャーナル・オブ・ボルカノロジー・アンド・ジオサーマル・リサーチ』に2月1日掲載、神戸大学が2月22日に発表）。

神戸大学の研究は、火山灰の陸上での堆積は、7300年の時を経て侵食などで変化していますが、海底での堆積は大きな変化はないため、地球深部探査船「ちきゅう」により、鬼界カルデラ周辺で掘削を行ない、過去の噴出物を詳しく分析したものです。

7300年前の巨大噴火では火山灰は東北地方南部にまで飛散し、センチメートル単位で降り積もったことがわかっていますが、火砕流は海を越え、南九州一帯の縄文人、そして生物が絶滅したこと間違いありません。
南九州の照葉樹林が回復するためには、噴火後600年〜900年もかかったと推測されているのです。

100年以内の発生確率は1％とも！

鹿児島県の火山といえば桜島が有名で、噴火の溶岩流は桜島を陸続きにしてしまうほどの破壊力がありますが、それでも桜島は、マグマを少しだけためて小規模の噴火を高頻度に繰り返す活火山。
マグマをかなりためこんで破滅的な巨大噴火を引き起こす、鬼界カルデラでは、万一の時の様相はまったく異なるのです。

世界的に見ても現代文明は、こうした超巨大噴火は未経験で、気候を左右し、都市はもちろん、人類にも深刻な影響をあたえるだろうことは容易に想像ができます。

実は、鬼界カルデラは爆発以前には富士山のような成層火山で、巨大な噴火によって山体が陥没、今では外輪山の一部（薩摩硫黄島と竹島）だけが残されたとことがわかっています。
鬼界カルデラの場所での破局的噴火は、過去6000～1万年に1回というサイクルで起きていると推定されています。

鹿児島県には九州電力の川内原子力発電所もありますが、こうした破局的な噴火による被害は当然、「想定外」となっています。
実際にもし喜界カルデラ、あるいは阿蘇カルデラでの破局的噴火が起きれば、「原発どころではない」という大規模な被害が予想されることも事実です。

日本国内で、カルデラをつくるような超巨大噴火は、過去15万年間に少なくとも14回発生していることがわかっています。
日本列島の歴史の中で最も最大規模の破局的な噴火は、9万年前に起きた阿蘇山で、現在の阿蘇カルデラが形成されていますが、同様の噴火が起きれば、関東でも火山灰が数十センチまで積もる悲惨な状況に。
有史以来はそんな大規模な噴火は起きていないので、国内ではこれまでカルデラを形成するような噴火を経験したことはないのです。

そこで問題となるのが、鬼界カルデラが発生する確率です。
研究者の一部は、巨大カルデラ噴火は、「今後100年間に1％ほどの確率で発生」と予測しています。
実は、この1％というのは阪神淡路大震災前日の、神戸における大震災の発生確率と同じ。
つまり、火山学的には、巨大カルデラ噴火は明日起きても何ら不思議ではないということになるのです。

想定される被害は、九州南部は高温の火砕流の被害を受け、関東でもかなりの降灰量が見込まれるという、文明存続の危機的状況が生まれることがわかります。
もしそんな破滅的な火山爆発が起これば、火砕流だけでなく、遠方でも火山灰でライフラインが停止し、国家消滅の危機に瀕するというのが火山学者共通の意見となっているのです。

これまでに経験したことがない爆発だけに、爆発までの推移がわかる過去のデータがなく、しかも、いつ起きるかの予知も困難。
今のところ、火山研究・予知の進歩を見守るしかない状況となっています。