昭和37年に創立された歴史ある日本旅のペンクラブが、毎年会員投票などで選定しているのが、「日本旅のペンクラブ賞」。令和6年度は「ペリー来航170年を記念して東京湾フェリーが黒船に変身!」ということから、東京湾フェリー株式会社に決まり、旅の日である5月16日に授賞式が行なわれます。
浦賀・久里浜沖に現代版の黒船が登場!
「旅の日」は、松尾芭蕉が元禄2年3月27日(新暦1689年5月16日)に深川の草庵から「おくのほそ道」に旅立った日を新暦に読み替えたもので、日本旅のペンクラブが制定した記念日です。
日本旅のペンクラブは、旅を愛する旅行ジャーナリスト、ライター、作家、随筆家、詩人、歌人、俳人、写真家、画家、建築家、学者などが集まり、お互いの交流を深めるとともに、 旅の文化を考えることを目的として、昭和37年6月28日に設立した団体です。
以来、 取材例会、セミナー、観光振興への提言など、さまざまな活動を続け、その一環として10周年記念となる昭和47年に始まったのが「日本旅のペンクラブ賞」の贈呈です。
令和6年度の「日本旅のペンクラブ賞」は、久里浜港(神奈川県横須賀市)と、金谷港(千葉県富津市)を40分で結ぶ東京湾フェリー(昭和35年5月3日就航)です。
就航する2隻のフェリーのうちの1隻「しらはま丸 」(3351トン)にペリー浦賀来航170周年を記念して黒船風のラッピングを施し、地域活性に貢献したというもの。
ペリーの浦賀来航は嘉永6年6月3日(1853年7月8日)で、令和5年はちょうど170周年にあたる年だったのです。
浦賀沖に投錨した艦隊は旗艦「サスケハナ」(蒸気外輪フリゲート)、「ミシシッピ」(蒸気外輪フリゲート)、「サラトガ」(帆走スループ)、「プリマス」(帆走スループ)の4隻で、「泰平の眠りをさます上喜撰(じょうきせん=当時人気だった緑茶と蒸気船をかけた言葉)たった四盃(船を杯・盃で数える用語にお茶をかけた言葉)で夜も寝られず」という教科書にも登場の狂歌は、この時の江戸の大混乱を表したもの(実は蒸気船は2隻で、残り2隻は帆船でした)。
教科書的には浦賀来航として知られますが、幕府は奉行所のある浦賀への入港を拒み、現在の久里浜沖に投錨(停泊)しています。
「ペリーが乗艦した旗艦サスケハナが257フィート(78.3m)という全長で実は『しらはま丸 』の全長79.1mとほぼ同じ。蒸気外輪フリゲート風にラッピングした姿の船が久里浜沖に浮かぶ姿からは、往時の人々の驚愕する姿を容易に想像できるのです」とは、日本旅のペンクラブ理事、板倉あつしさんの解説。
「就航当日の取材にも参加しましたが、武士も町人もチョンマゲだった江戸時代に、漆黒の巨大な外輪船が、黒煙をもうもうと上げて迫る様には度肝を抜かれたに違いありません。この出来事が発端となって、開国に結びついたのですから、島国ニッポンの夜明けと言っても過言ではありませんね」とのこと。
さらに「横須賀市はもとより、上陸した久里浜の商店街の悲願でもあった東京湾フェリーの黒船ラッピング化は、全国的なニュースとなり、横須賀市と対岸の南房総地区(富津市・鋸南町・南房総市・館山市・鴨川市)の観光の活性化にも大いに貢献しています」(板倉さん)。
仕掛け人である東京湾フェリー株式会社の寺元敏光常務は、ご当地素材(三崎のマグロ・三浦大根・捕鯨の盛んな房総の鯨など)にこだわって作った「黒船ペルリ弁当」、「黒船くじらコロッケ」、「黒船カレー」の開発、さらには地元児童を招いた地域学習クルーズ計画など、旅と観光文化の向上を強く意識し、「フェリーは単なる移動手段ではなく、短時間でも様々なワクワクに出会えるマイクロツ
ーリズムなのです!」と熱く語っています。
こうしたことが日本旅のペンクラブの会員(つまりは利用者目線の旅の専門家集団)の高い評価につながったのです。
日本旅のペンクラブ賞とは
「日本旅のペンクラブ賞」は、旅の文化の向上に寄与した団体、個人、行政機関等に贈呈されるもの。
各都道府県の観光連盟・観光協会や日本旅のペンクラブ会員・会友などから推挙された候補を、日本旅のペンクラブ内に設置した選考委員会で検討。
その年における候補を数ヶ所に絞り込み、会員・会友の投票を経て決定し、毎年「旅の日」に贈呈されています。
中断した時期もありますが、昭和47年(1972年)の第1回に始まり、令和6年度(2024年度)で第44回を数えます。
日本旅のペンクラブ賞、過去の受賞者一覧
第1回(1972年、創立10周年)戸倉上山田温泉「滝の湯」旅館
第2回(1973年)該当なし、以降休止
第3回(1983年)静岡県松崎町
第4回(1984年)大分県湯布院町/特別賞:長野県野沢温泉村旅館住吉屋・河野正人氏
第5回(1985年)岩手県陸中・三陸鉄道
第6回(1986年)長野県野沢温泉村
第7回(1987年)人間旅ペン賞:駒崎義男氏(画家、銚子電鉄の中吊り広告を描く)、 C.W. ニコル氏(作家、自然愛好者)、高橋タケノ氏(秋田県横手市朝市のベテランおばあちゃん)、武田真理氏(京阪・定期観光バス運転手)、野原順作氏(富山県利賀村企画室長)、宮脇昭氏(横浜国立大学教授、植物研究者)
第8回(1988年)大井川鉄道/特別賞:静岡県松崎町前町長・依田敬一氏
第9回(1989年)群馬県川場村/特別賞:NHKテレビ旅番組「小さな旅」
第10回(1990年)大分県一村一品運動
第11回(1991年) (財)国民休暇村協会
第12回(1992年)岐阜県白川村/特別賞:読売テレビ旅番組「遠くへ行きたい」 /激励賞:長崎県小浜町、長崎県・雲仙観光協会
第13回(1993年)滋賀県長浜市、北海道小樽市
第14回(1994年)北海道小樽市
第15回(1995年)該当なし
第16回(1996年)該当なし/激励賞:(財)神戸国際観光協会
第17回(1997年)広島電鉄(株)
第18回(1998年)乳頭温泉郷
第19回(1999年)京都府丹後半島
第20回(2000年)竹富島/特別賞:長野県地獄谷溫泉後楽館・竹節春枝さん
第21回(2001年)東近江観光振興協議会
第22回(2002年)長野県小布施町
第23回(2003年)三重県上野市
第24回(2004年)(財)知床財団
第25回(2005年)日間賀島観光協会・同漁業組合
第26回(2006年)福地温泉観光協会
第27回(2007年)若狭三方五湖観光協会
第28回(2008年)北塩原村裏磐梯観光協会
第29回(2009年)(社)四万温泉協会
第30回(2010年)美山町観光協会
第31回(2011年)銚子電鉄(株)
第32回(2012年)スパリゾートハワイアンズ
第33回(2013年)一般社団法人石垣市観光交流協会
第34回(2014年)兵庫県豊岡市
第35回(2015年)内蔵の町・増田
第36回(2016年)一般社団法人 日本秘湯を守る会名誉会長・佐藤好億氏
第37回(2017年)みやこ女将の会
第38回(2018年)まちの駅ネットワークかぬま
第39回(2019年)遠州横須賀倶楽部
第40回(2020年)むらかみ町屋再生プロジェクト
第41回(2021年)コロナ禍で頑張る観光関係者の皆様
第42回(2022年)別府八湯温泉道名人会
第43回(2023年)北八ヶ岳苔の会
第43回(2024年)東京湾フェリー(株)
令和6年度の「日本旅のペンクラブ賞」は黒船ラッピングで話題の東京湾フェリーに | |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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