江戸時代の新宿は内藤新宿という甲州街道の宿場町でした。その甲州街道に面して建つ太宗寺は浄土宗の寺。少し耳慣れない言葉ですが「江戸三閻魔」(えどさんえんま)に数えられる閻魔像、さらには「江戸六地蔵」の地蔵菩薩像があることでも知られています。甲州街道・内藤新宿の繁栄を今に伝える貴重な場所にもなっています。
安房国勝山藩、信濃高遠藩内藤家の菩提寺
寺伝によれば、戦国時代末期の1596(慶長元)年頃、に僧・太宗が開いた草庵「太宗庵」がルーツ。
江戸に幕府が開かれた1629(寛永6)年、安房国勝山2代藩主・内藤正勝が22歳の若さで死去した際、その葬儀を行なったことを契機に内藤家との縁が深まります。内藤正勝の死後、内藤家は長男・重頼が継ぎますが藩は取り潰しとなり、内藤家は旗本に。
1668(寛文8)年、内藤重頼から寺地の寄進を受け、太宗を開山として太宗寺が創建され、以降、内藤家の菩提寺になりました(内藤重頼は京・金戒光明寺に埋葬)。
内藤正勝の孫にあたる内藤清枚が信濃・高遠藩主となったことから信濃国高遠藩・内藤家中屋敷も置かれました。
1699(元禄12)年、甲州街道の宿場として正式に内藤新宿が開設されますが、その内藤という名も、内藤家から来ています。
内藤新宿の中央に位置する太宗寺の正式名は霞関山本覚院太宗寺。浄土宗の寺で、本尊は阿弥陀如来です。
境内には江戸に入る6つの街道の各入口に配された「江戸六地蔵」のひとつ(江戸六地蔵三番/銅造地蔵菩薩坐像)も鎮座しています。
境内北側の新宿区立新宿公園もかつては境内の一部で湧水による池がありました。
六地蔵、切支丹灯籠、閻魔像と文化財がズラリ!
江戸時代中期の切支丹灯籠もあるからお見逃しなく。新宿に「隠れ切支丹」とは少し意外ですが、昭和27年に墓地から出土したという切支丹灯籠で、竿部の彫り物はマリア様ともいわれマリア観音とも呼ばれています。
高遠藩が開かれる以前の信州・高遠はキリシタン大名として知られる京極高知の領有。城下にも宣教師がいたといますからその流れでしょうか? 信濃高遠藩の初代藩主・内藤清枚の墓も太宗寺にありますが、内藤家の墓所から切支丹灯籠の竿部(脚部)が出土したことも大きな謎を生んでいるのです。
江戸時代作の三日月不動像、昭和初期創設の新宿山の手七福神の布袋尊像など、太宗寺は新宿ミニ博物館「内藤新宿太宗寺の文化財」にもなっていて順路に従って、順に境内の文化財を拝観できるようになっています(『えんま大王縁日』のみ公開の像は除く)。
太宗寺のおもな年中行事
1月15日・16日(初閻魔)、7月15日・16日の両日は、『えんま大王縁日』として閻魔大王像が公開されるので、お見逃しなく。
新宿山ノ手七福神
毘沙門天|鎮護山善国寺 新宿区神楽坂5-36/TEL03-3269-0641
大黒天|大乗山経王寺 新宿区原町1-14/TEL03-3341-1314
辨財天|厳嶋神社 新宿区余丁町8-5/TEL03-3351-5875(西向天神社)
福禄寿|大久保山永福寺 新宿区新宿7-11-2/TEL03-3203-8910
寿老人|春時山法善寺 新宿区新宿6-20-16/TEL03-3351-4080
布袋和尚|霞関山太宗寺 新宿区新宿2-9-2/TEL03-3356-7731
恵比寿神|稲荷鬼王神社 新宿区歌舞伎町2-17-5/TEL03-3200-2904
江戸切絵図に見る太宗寺
太宗寺 | |
名称 | 太宗寺/たいそうじ |
所在地 | 東京都新宿区新宿2-9-2 |
関連HP | 新宿観光振興協会公式ホームページ |
電車・バスで | 東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩3分 |
問い合わせ | 太宗寺 TEL:03-3356-7731 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag