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利田神社・鯨塚

利田神社・鯨塚

東京都品川区東品川1丁目、利田神社(かがたじんじゃ)の境内の一角に築かれているのが、鯨塚。
江戸湾に現れ、天王洲へと追い込んで捕獲、東京では唯一のクジラを埋葬した塚。江戸を驚かせた三大動物の一つ「寛政の鯨」の骨を埋めた上に立てられた供養塔です。

目黒川河口の砂州にクジラの頭部を埋葬

『安政改正御江戸大絵図』に描かれる洲崎弁天、東海寺周辺

ちなみに、江戸を驚かせた三大動物は、クジラ(「寛政の鯨」)のほか、、「享保の象」(中野区・朝日が丘公園が象を飼育した象小屋跡)、「文政の駱駝」(両国広小路で見世物興行)で、クジラ以外は長崎からわざわざ陸路で江戸まで来たものです。

利田神社は、江戸時代初期に、沢庵宗彭(たくあんそうほう)が旧目黒川の河口の海に突き出た砂洲に弁才天(洲崎弁天)を祀ったことが始まりと伝えられ、明治初年の神仏分離で利田神社となったもの。
当時、洲崎は目黒川河口の砂洲を利用した漁師町で、幕府に魚介類を納める「御菜肴八ヶ浦」(おさいさかなはちかうら)のひとつにも数えられていました。
沢庵宗彭は、寛永16年(1639年)、徳川家光の願いで、旧目黒川の河口近くに東海寺を創建しているので、その際に、弁才天(仏教の守護神である天部の一つ)を祀ったのかもしれません。

洲崎弁天は、歌川広重の『名所江戸百景 品川すさき』に描かれ、江戸時代後期の天保年間、斎藤月岑が7巻20冊で刊行した江戸の地誌『江戸名所図会』にも記載されています。

捕獲したクジラの頭部を埋葬したと伝えられる鯨塚は、高さ103cm、幅153cm、厚さ31cmの自然石で、一見すると富士講の碑のようなかたち。
鯨塚の正面には谷素外の俳句「江戸に鳴る 冥加やたかし なつ鯨」が刻まれています。
隣接する品川浦公園にはクジラ頭部のモニュメントも設置。

鯨塚碑の原文は以下。

武州荏原郡品川浦   天王洲漁人等建之
鯨鯢ハ魚中ノ王 本邦西南ノ海ニ多ク東北ノ海ニ少ナリ 今年仲夏
甲子ノ日 始子品川天王洲  舟ヲ以テ囲ミ矛ヲ以テ刺 直ニ廳事
ニ訴フ衆人コレヲ聞テ コレヲ見ント 数日群集ス 諺ニ此魚ヲ獲
時ハ七郷富潤フトフ漁長ニ代ッテ祭之詞  玉池一陽井 素外
 江戸に鳴  冥加やたかし  なつ鯨
寛政十年戌午夏 華渓稲貞隆書

歌川広重の『名所江戸百景 品川すさき』(鯨塚は描かれていません)

江戸を驚かせた三大動物の一つ「寛政の鯨」とは!?

『江戸名所図会』に描かれた洲崎弁天と鯨塚(○印)

寛政10年5月1日(1798年6月14日)に、前夜からの暴風雨で1頭のクジラが品川沖に迷い込んだことで、近在の漁師たちはこのクジラを天王洲に追い込んで捕獲。
当時、房総半島では鯨組が組織され捕鯨が行なわれていましたが、江戸湾奥、まさに江戸前でのクジラの捕獲は異例のこと。

記録によれば、捕獲されたクジラの体長は16m強、体高2mほどで、セミクジラと推測されています。
これが「寛政の鯨」と呼ばれる江戸の珍事、江戸を驚かせた三大動物のひとつで、クジラは縄を掛けて舟で浜御殿(現在の浜離宮恩賜公園)まで運ばれ、将軍・徳川家斉も目にしています。

その後、村役人の検分を受け、入札によって払い下げられ、胴体部分が金41両3分で落札されています。
これは鯨肉を食べるのではなく、脂が取るためで、残った頭骨は、当時の洲崎弁天の境内に埋められ、鯨塚が建立されたのです。

利田神社・鯨塚
名称 利田神社・鯨塚/かがたじんじゃ・くじらづか
所在地 東京都品川区東品川1-7-17
関連HP しながわ観光協会公式ホームページ
電車・バスで 京急北品川駅から徒歩6分
駐車場 周辺の有料駐車場を利用
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

東品川海上公園

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目黒川水門

東京都品川区東品川2丁目、天王洲運河の天王洲アイル・東品川海上公園横に位置する水門が、目黒川水門。目黒川との合流点近くに位置するのがその名の由来で、「運河ルネッサンス」の一環として水門扉に江戸時代に天王洲に追い込んで捕獲した『しながわ鯨』が

東品川海上公園・クジラの滑り台

東京都品川区東品川2丁目、東品川3丁目、天王洲アイルとその南に位置する品川区立の公園が、東品川海上公園。目黒川の河口、天王洲運河との合流点に位置し、北側エリアにあるのがクジラの滑り台。江戸湾のクジラを天王洲に追い詰めた「寛政の鯨」をモチーフ

 

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