建設工事が進められたものの、なんらかの理由で工事がストップ、開通することなく廃止となった線が国鉄未成線。とくに戦時下で工事が進められた線には美しいアーチ橋が残され、あたかも古代ローマの水道橋のような景観に。埋もれた異色の景観は、近年「映える」とあって再注目されています。
越川橋梁|北海道
場所:北海道斜里郡斜里町越川245-8
内容:斜里駅(現・知床斜里駅)と越川駅を結ぶ国鉄根北線と標津線(釧網本線標茶駅〜根室標津駅)の終着駅・根室標津駅を結ぶ知床連山を根北峠(こんぽくとうげ)で山越えするルートとして延伸工事が進められました
歴史:オホーツク海沿いの斜里の森林開発、入植地の拡大、農産物の輸送のため、大正11年に建設が決定、昭和6年の満州事変の勃発で北海道防衛の気運が盛り上がり、昭和12年に建設が予算化され、昭和13年に建設開始、昭和16年、太平洋戦争戦争の激化による物資の不足で工事は中断、昭和45年、完成していた越川駅までの国鉄根北線が廃止に
現存する遺構:昭和14年に完成した越川橋梁(第一幾品川橋梁)、10連コンクリートアーチ橋のうち、国道上の橋脚2本が撤去されていますが、残りのアーチは健在
国の登録有形文化財になっているコンクリート製の橋梁で、長さ144m、高さ18mのアーチ橋
旧戸井線アーチ橋(汐首陸橋)|北海道
場所:北海道函館市汐首町
内容:函館本線五稜郭駅から亀田郡戸井町(現・函館市戸井地区)の戸井駅を結ぶ鉄道が戸井線で、路盤や橋梁がほぼ9割方完成した状態で廃線に
歴史:第二次世界大戦時、津軽海峡は軍事的な重要度から函館港を含め津軽要塞地帯となり、汐首岬にも第1砲台、第2砲台の建設が計画、その物資、人員輸送などの目的で鉄道敷設を計画
昭和11年に着工、昭和19年に完成の予定でした
現存する遺構:8連アーチ橋の汐首陸橋(正式名は汐首岬第1陸橋)が現存(昭和15年5月に着工、昭和16年11月に竣工)
戦時中の粗悪なコンクリートが使用され、資材節約のために鉄筋を使用していないため、全長52m、支間長5mの汐首陸橋も、将来的には解体の可能性も
旧国鉄五新線・新町高架橋|奈良県
場所:奈良県五條市新町1-10-20
内容:五條市内には、高架部分の新町高架橋、第一丹生川橋梁などが国鉄五新線(未成線)の遺構として現存
歴史:明治末期、五條市と十津川を渡って新宮市までを結ぶ五新鉄道の建設が持ち上がり、昭和12年に着工
戦前には吉野川横断の橋脚の完成、生子トンネルの貫通にまで至りましたが、第二次世界大戦による資材不足などで工事が中断、戦後、工事が再開されましたが、経済社会情勢等の変化により、中断され、廃止に
現存する遺構:新町高架橋は、市街地にカーブを描くコンクリート造りのアーチ式高架橋が現存(昭和34年完成)
広浜鉄道今福線遺構|島根県
場所:島根県浜田市
内容:広島市と島根県那賀郡浜田町(現・浜田市)を結ぶ鉄道として大正11年に予定線となり、戦前と戦後に浜田〜石見今福間の工事が進められました
歴史:昭和44年に広島県側の可部線の加計〜三段峡の開通を受け、昭和45年に浜田〜石見今福間の工事が再開、昭和47年には石見今福〜三段峡間の工事も認可され、全線開通に向けて動き始めましたが、昭和55年に日本国有鉄道経営再建促進特別措置法が制定されたことを受け、工事が中止され、アーチ橋梁などが完成しているままに、開通することのない「幻の鉄道」に
現存する遺構:4連アーチ橋、5連アーチ橋、第一下府川橋梁・4連アーチ橋、おろち泣き橋など
古代ローマの遺跡!? 国鉄未成線の「アーチ橋群」 全国4選 | |
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