20数万~16万年前の先小御岳火山(せんこみたけかざん)から始まり、1707年(宝永4年)の宝永大噴火に至る富士山の火山活動。多くの研究者は、「南海トラフ巨大地震と富士山の噴火は関係している」と断言。富士山の生い立ちを知り、それを防災に活かすことが大切と解説しています。
富士山が現在の姿になってからは、わずか1万年
富士山は、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート(アムールプレート)、北米プレート(オホーツクプレート)という3つのプレート境界に位置し(フィリピン海プレート、北米プレートの外側=下側に潜り込む太平洋プレート)、この境界で発生したマグマによって形成されています。
富士山のマグマは、地下80km~200kmまで沈み込 んだ太平洋プレートの岩石から放出された水により 周囲のマントルや岩石が溶けることで生まれ、フィリピン海プレートと太平洋プレートに挟まれたマントル の温度が最も高くなる場所を通ってフィリピン海プレ ート下部のマグマ溜まりまで運ばれていると推測されています。
富士山は日本で一番大きい火山ですが、誕生から現在に至るまで地下から運び出されたマグマの量も日本一です。
火山の一生は、数十万年〜100万年といわれますが、富士山は小御岳火山で20数万年、美しい成層火山のベースとなる古富士火山で10万年と、日本の火山のなかでは比較的若い火山です。
関東ローム層は、浅間山や赤城山などの火山灰と思われていますが、上部はこの古富士火山の火山灰なほか、白糸の滝はこの古富士火山から流れ出た古富士泥流の末端です。
新富士火山の活動は1万年ほど前と、火山の歴史(人生が100年とすると、100万年)からすると人間の1年前という感じです。
活発な火山活動で、小御岳、古富士の両火山を溶岩や火山灰が覆って、美しい成層火山が誕生しました。
つまりは、現在の姿になってからは、わずか1万年ということに。
専門家は「次の噴火は大規模になるとの覚悟も必要」と断言
有史以来の噴火は、流れ出た溶岩流っで青木ヶ原樹海を生み、剗の海(せのうみ)を分断して西湖と精進湖を誕生させた貞観大噴火(じょうがんだいふんか)が知られていますが、平安時代初期の864年(貞観6年)から866年(貞観8年)にかけての火山活動です。
貞観大噴火の5年後、869年(貞観11年)には東北地方で貞観地震が発生、東日本大震災を思わせるような大津波が発生しています。
江戸時代中期の1707年(宝永4年)に起きた宝永大噴火では、首都圏に至る広範囲に7億立方メートルの火山灰が2週間で降り積もったとされています。
しかも噴火の49日前には、南海トラフを震源とするマグニチュード8.6(推定)の宝永地震が起きています。
実は、宝永地震に誘発されての噴火という考え方が、地震学・火山学にかかわる研究者たちの定説。
「前回の噴火はは南海トラフ地震と連動した」という考えです。
それ以降、300年余り静穏を保っている富士山は、過去最大ともいえる静寂ぶり。
火山年齢としては、まだまだ若い富士火山が、地下奥深くにマグマを溜め込み、平静を保っているのが不気味です。
30年以内の発生確率が80%と、これまでの70~80%から上方に軌道修正された南海トラフ巨大地震の発生確率。
しかも、東京大と山梨県富士山科学研究所の最新の研究では、富士山の「噴火の空白期間」は過去5000年に限っていえば、現在までの318年間が最長となることがほぼ確定的になっているのです。
こうしたことを踏まえて、「富士山はいつ噴火してもおかしくない、次の噴火は大規模になるとの覚悟も必要」と警鐘を鳴らしています。
しかも、富士山には判明しているものだけでも90ヶ所の火口跡があり、どこから噴火するか予想がつかないということで、富士山火山防災対策協議会は2023年3月、噴火警戒レベルがレベル1(活火山であることに留意)のままでも、気象庁が異変を伝える臨時情報を発表した時点で5合目以上の登山客を下山させることになっています。
訪日外国人のなかには、活火山ということを知らない人もいて、突然の臨時火山情報に戸惑う人も多いと想定できます。
もし噴火したら、神奈川、東京、千葉、山梨、静岡、、茨城、埼玉に降り注ぐ火山灰の量は、4.9億立方メートルと推測され、首都圏の都市機能は完全に麻痺してしまいます。
それでいて、「富士山噴火に対策必要」と考える東京都民は2割ほどの少数派。
議論がタブー視されてきたという側面もありますが、「富士山はいつ噴火してもおかしくない、次の噴火は大規模になるとの覚悟も必要」という専門家の警鐘を肝に銘じておく必要があります。
南海トラフ巨大地震と富士山の噴火は関係する!? 次の噴火は大規模に! | |
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