「縁日」とは、寺社の参道に並ぶ露店のことではなく、神仏とご縁を結ぶ日。神仏が降誕・示現した、あるいは神格化された人物の没日などの縁(ゆかり)のある日を選んで「縁日」としています。毎月5日は水天宮の縁日ですが、年明け5日は『初水天宮』となり、安産祈願などの参拝者で賑わいます。
もともとは、壇ノ浦で没した安徳天皇、建礼門院を祀って創建
仏教では直接原因である「因」と間接的原因である「縁」で因縁。あらゆるものが因と縁とによって成立すると考えていることが、縁日たるゆえん。
そんななかで、毎月5日は安産祈願で知られる水天宮の縁日で、1月5日は『初水天宮』、逆に12月5日は『納め水天宮』あるいは『終い水天宮』となるわけです。
水天宮の祭神は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)。『古事記』では、天地開闢(てんちかいびゃく=この世界の始まり)の際に高天原(たかまがはら)に最初に出現した神だとしています。神名も、天(高天原)の中央に座するという意味で、宇宙の根源の神、あるいは宇宙そのものといわれています。
水天宮自体の始まりは、平時子、建春門院、建礼門院に仕えながら壇ノ浦合戦を生き延びた按察使局伊勢(あぜちのつぼねいせ)が、安徳天皇、高倉平中宮(建礼門院、平徳子)、二位の尼(平時子)を祀って尼御前神社を創建したのが始まり。祭神に天之御中主神が加わったのは明治維新で。
江戸・久留米藩邸内の水天宮に、毎月5日のみ参拝が許された!
総本宮である久留米の水天宮と並んで有名なのが、東京・日本橋蛎殻町の水天宮。
久留米藩歴代藩主(有馬家)により崇敬された水天宮ですが、1818(文政元)年、9代藩主・有馬頼徳(ありまよりのり)が江戸・三田の久留米藩江戸上屋敷に分霊を勧請したのが、江戸の水天宮の始まり。
久留米藩有馬家上屋敷内に祀られていた水天宮は、邸内ということもあり、一般の参拝は当然、禁じられていました。庶民は門外より賽銭を投げ参拝していたのです。
久留米藩は、江戸でも信仰者の多い水天宮への一般参拝の許可を求める特別な伺書を幕府へ提出、幕府が毎月5日に限ってこれを認めたのです。
その後、参拝した妊婦が鈴乃緒(鈴を鳴らす晒しの鈴紐)のお下がりを授与され腹帯として安産を祈願したところ非常に安産だったことから人づてににこの御利益が江戸市中に広まります。
その人気ぶりは「情け有馬の水天宮」という地口(言葉遊び)も生まれたほど。
久留米藩にとっては、庶民への配慮と思いきや、副収入のお賽銭などは、年間2000両(安政年間)にもなって、大いに藩財政を潤したのです。これはまさに副収入で、庶民と久留米藩との両方に御利益があったため、幕末まで毎月5日の参拝日は続いたのです。
明治4年の廃藩置県とともに、久留米藩邸(有馬家屋敷)も青山に移り(水天宮も遷座)。水天宮は、さらに明治5年には久留米藩江戸下屋敷のあった現社地(日本橋蛎殻町2丁目)に遷っています。近くにある中央区立有馬小学校は、久留米藩最後の藩主である有馬頼咸(ありまよりしげ)の寄付を受けて明治8年に創立。
というわけで、前置きが長くなりましたが、正月に初めて水天宮様にお参りできる日が5日であったことにちなんで、『初水天宮』といわれています。また、犬は多産で安産ということから、戌(いぬ)の日に参拝するという習慣も生まれています。
『初水天宮』には全国の水天宮へ
水天宮の縁日は、毎月5日ですが、その元来の由来は、5月5日が本宮である久留米の水天宮の例祭からきているものとも推測できます。
水天宮は、福岡県久留米市の水天宮(久留米水天宮)を総本宮とし、日本全国にある神社で、久留米の分社である東京の水天宮(東京都中央区日本橋蛎殻町2丁目4-1)は、2016年4月8日に新社殿が建立されています。
東京の水天宮の境内には、周囲を取り巻く十二支のうち自分の干支を撫でると安産、子授け、無事成長など様々なご利益があるといわれる「子宝いぬ」、足下と胸、肩に赤ちゃん河童がしがみつく「安産子育河童」、ブリヂストン創立者・石橋正二郎奉納の狛犬(こまいぬ)、有馬家上屋敷にあったという寳生辨財天(ほうしょうべんざいてん)もあるのでお見逃しなく。
また、全国の総本宮である久留米の水天宮でも1月5日に『初水天宮祭』が斎行されます。
(小樽の水天宮など一部に祭神の異なる社もあるのでご注意を)
初水天宮 | |
開催日時 | 1月5日 |
所在地 | 東京都中央区日本橋蛎殻町2-4-1 |
場所 | 水天宮 |
関連HP | 水天宮公式ホームページ |
電車・バスで | 東京メトロ半蔵門線水天宮前駅から徒歩1分 |
ドライブで | 首都高速箱崎ICからすぐ |
問い合わせ | 40台/有料 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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