香川県高松市、高松藩の大名庭園をルーツにする大庭園が栗林公園(りつりんこうえん)。江戸時代初期の大名庭園の姿を今に伝える南庭にある掬月亭(きくげつてい)は、江戸初期の17世紀に建てられた数寄屋風書院造りの建物で、大茶屋とも呼ばれ、歴代の藩主が茶会や舞を楽しんだ場所です。
「掬月一ノ間」から眺める庭園は絶景!
床を低くし壁を少なくした開放的な造りで、あたかも湖面に浮かぶ船のよう。
数寄屋風の建物で月の眺めがいいということから、唐の詩人・于良史(うりょうし) の漢詩『春山夜月』の一文、「掬水月在手、 弄花香満衣」 から命名されたもの。
「水を掬(すく)えば月手にあり」、つまり、水を両手で掬い取ってみると、その水面に必ず月は姿を映し、キラキラ輝くはず。
つまり、美しい月を見ているだけでは、それに気づくことができないが、水を手で掬うことで、美しさがわかるという、月は悟りの象徴になっているのです。
歴代藩主がこよなく愛した大茶屋の、まずは意味深長なネーミングに注目を。
寄棟造りの杮葺き(こけらぶき=木の薄板を幾重にも重ねて施工する工法)。
杮葺きだと、耐用年数が20年ほどしかありませんが、屋根の軽量化により、柱を細くすることができ、壁の少なさとあわせて眺めがよく、軽やかな雰囲気を醸し出すことができるのです。
南湖に臨む「掬月一ノ間」はとくに開放的で、夏の間、障子が取り払われると遮るもののない南湖の眺望を得ることができるのです。
「掬月一ノ間」から眺める庭園は、四季折々に趣を変え、実に見事。
通常柱の間隔は1間ですが、縁側の外の柱は間隔が1間半にしていて、立ち位置によっては外側の柱が内側の柱に隠れて見えなくなるという心憎い設計も。
井桁格子に紋紗を貼り、向こうが透けて見える「初筵観の床の間」もお見逃しなく。
なお、藩主が茶会を楽しむ茶屋ですが、格式ばった玄関はなく、「四方正面」という発想で、縁側の2ヶ所に沓脱石が配され、飛び石が続いています。
さらに縁側も低くし、庭と建物の一体感を高めています。
掬月亭では、煎茶や抹茶を味わいながらの休憩ができるほか、結婚式も可能(掬月亭結婚式×二蝶披露宴/掬月亭を管理する「料亭二蝶」に問い合わせを)。
掬月亭に隣接して、天保4年(1833年)に高松藩9代藩主・松平頼恕(まつだいらよりひろ)が参勤交代で江戸参府の際、11代将軍・徳川家斉(とくがわいえなり)に賜った盆栽が成長したと伝えられる根上り五葉松があります。
栗林公園・掬月亭 | |
名称 | 栗林公園・掬月亭/りつりんこうえん・きくげつてい |
所在地 | 香川県高松市栗林町1-2-16 |
関連HP | 掬月亭・日暮亭 – 料亭 二蝶公式ホームページ |
電車・バスで | JR栗林公園北口駅から徒歩3分、または、ことでん栗林公園駅から徒歩10分 |
ドライブで | 高松自動車道高松中央ICから約6km |
駐車場 | 栗林公園東門駐車場(30台)・栗林公園北門前駐車場(32台)/有料 |
問い合わせ | 掬月亭・日暮亭 – 料亭 二蝶 TEL:0120-86-0220 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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