長野県茅野市、横谷峡に懸かる落差15mの美しい滝が乙女滝。王滝とともに横谷峡のシンボル的な存在になっていますが、実はこの乙女滝、人工の滝。江戸時代に開削された農業用水路の大河原堰(おおかわらせぎ)。大河原堰は乙女滝で渋川を渡り、さらに乙見滝で鳴岩川を越えて高原を潤しているのです。
実は大河原堰の「繰越堰」の一部
乙女滝が渋川の本流ではなく、河岸の断崖に懸かっているのはそのため。
滝之湯川から導水してきた農業用水路を、大河原堰は、渋川を横断する際に、河岸の急峻な崖を一気に落下させ、その後、集水した水を掛樋(かけひ)で渡し、渋川からの補給水と併せて下流へ用水を導いているのです。
この仕掛を開発し、用水路を築いたのは江戸時代、田沢村(現・茅野市宮川)の名主・坂本養川(さかもとようせん)。
天明の大飢饉(1782年〜1788年)を背景にした農地拡大を目的に、坂本養川の高島藩への献策によって寛政5年(1792年)に完成した農業用水路です(開削時12.5km、現在14.4km、最大取水量2.48立方メートル/秒)。
八ヶ岳山麓の高原地帯を流れる水量が多い河川の水を、複数の河川を渡しながら水不足の地域へ送る仕組みは、坂本養川が考案した「繰越堰」(くりこしせぎ)と呼ばれるもので、開削された江戸時代では画期的な技術だったのです。
一見すると自然の滝のように見える乙女滝ですが、実は、この「繰越堰」の仕組みの一部というわけなのです。
大河原堰は下流部に築かれた滝之湯堰とともに、「世界かんがい施設遺産」(国際かんがい排水委員会選定)に登録されています。
乙女滝へは横谷峡入口駐車場から蓼科中央高原横谷峡遊歩道を徒歩で5分ほどなので、ドライブ途中の立ち寄りにも絶好です。
横谷峡・乙女滝(大河原堰) | |
名称 | 横谷峡・乙女滝(大河原堰)/よこやきょう・おとめたき(おおがわらせぎ) |
所在地 | 長野県茅野市北山蓼科 |
関連HP | 蓼科中央高原観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | JR茅野駅から諏訪バス麦草峠行きで29分、横谷峡入口下車 |
ドライブで | 中央自動車道諏訪ICから約15km |
駐車場 | 横谷峡入口駐車場(15台/無料)・蓼科グリーンバレー駐車場(150台/無料) |
問い合わせ | 蓼科中央高原観光協会 TEL:0266-67-4860 |
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