国土地理院では2020年に開催される東京オリンピックに向けて、「外国人にわかりやすい地図表現検討会」を立ち上げ、さらに「外国人にわかりやすい地図記号等に関するアンケート」を実施して、ユニバーサルなデザインの地図記号への大改定を考えています。
日本はピクトグラムの先進国
もともと、巷でよく見かけるトイレなどの「ピクトグラム(Pictogram)」はヨーロッパで生まれ、1964年の東京オリンピック(第18回夏季オリンピック)で発展したものです。当時、訪日観光客はわずかに15万人。日本国内の案内板は「食堂」「お手洗」「改札口」などといった文字(しかも日本語)による表示が中心で、九十数カ国から来日する外国人選手たち、観戦に来た人たちにはまったく伝わらない状況でした。
東京オリンピックのデザイン専門委員会委員長となった勝見勝氏は「英語やフランス語、ドイツ語、ロシア語など、各国の文字をすべて表示するのは不可能なので、絵文字(ピクトグラム)を作ろう」と提案。勝見氏のもとに若手デザイナーが結集し、競技種目のピクト化だけでなく、トイレや公衆電話など公共施設、設備をピクトグラムで表現しました。
実は、観光的な意味ではこのピクトグラムが、グローバル化の最初です。
オリンピックについても競技種目などのピクトグラムは「絵文字の国際リレー」といわれるように、その後のオリンピックに継承されています。
地形図に使われる地図記号を含め、優れたピクトグラムの特徴は「デザインがシンプルなこと」、「時代を越えて使われる普遍性」。
つまりは、ユニバーサルデザインということになります。
漢字から「かな」を生み出した日本は、ピクトグラムの先進国で、家紋なども平安時代に自分の乗る輿(こし)を間違えないようにと考案されたピクトグラムといえるでしょう。
携帯メールが生み出した、(^o^)、(T_T)(顔文字)も日本が生んだピクトグラムといえるでしょう。
♨記号を外国人に見せたら意外な結果が!
さてさてピクトグラムの歴史を前提に、温泉記号に目を転じてみると、「外国人にわかりやすい地図記号等に関するアンケート」の結果に大注目です。
浅草の浅草寺周辺で予備的にアンケート調査(第1回アンケート)を行ない、外国人110名から回答を得、さらにアンケート内容を一部見直した上で、新たに在京大使館、JICA研修生、留学生、日本語学校生徒、英会話学校講師、一般(浅草寺周辺)の2000人を対象にアンケート調査(第2回アンケート)を行ない、907名から回答を得ています。
その2度に渡るアンケートの「温泉記号」に関する結果は・・・。
(1) 暖かい飲み物(コーヒーやスープなど)と混同する=12名(米国2、フィリピン2、エジプト2、バングラデシュ、ドイツ、ギリシャ、インドネシア、リトアニア、英国)
(2) レストラン・コーヒーショップ・喫茶店みたい=8名(中国2、インドネシア2、オーストラリア、スウェーデン、スイス、不明)
(3) 温泉記号の中に人が入っているべきだ=7名(中国2、スウェーデン、香港、コートジボアール、ペルー、米国)
(4) 日本文化の知識や初めて訪日する外国人にはわからない=5名(インドネシア2、オーストラリア、コスタリカ、米国)
(5) ラーメンに見える=4名(フィリピン3、デンマーク)
(6) 温かい食べ物のお皿に見える=4名(米国、イタリア、フィリピン、デンマーク)
(7) 食べ物にみえる=2名(フランス、フィリピン)
(6) 温かいうどんにみえる=1名(ベトナム)
全体としてはわかりやすい611名(69%)、わかりにくい276名(31%)と、わかりやすいのほうが多かったのですが、内訳で一般ツーリストにわかりやすい26名(33%)、わかりにくい54名(68%)と評判が悪いので、その結果、人物入りの温泉記号が採用される方向になっているのです。
川名、山名などの英語表記も全国で変更中
地図記号と同様に、川、山などの英語表記も検討されています。
利根川をTonegawa Riverと表記するのか、あるいはTone Riverなのか。
同様に富士山はMt. FujiなのかMt. Fujisanなのか、はたまたMt. Fujiyamaなのか?
これに関して、国土地理院の検討チームは、
「日本人はTone River から『とね』+『かわ』→『とねがわ』=『利根川』と理解するか『利根』+『川』=「利根川(とねがわ)』と理解することができる」としています。
東京では「桜田通り」はこれまではローマ字表記で「Sakurada dori」だったのが、英語の通りを意味するavenueの省略形が加わり、「Sakurada-dori Ave.」に。
地方の自治体でも、富士山の周辺の登山道の標識がローマ字表記の「Tozando」から英語訳の「Trailhead」に改められるなど、全国で取り組みが進んでいます。
2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、地図記号だけでなく、地名の表記まで見直しが図られ、
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