川の長さはどう決める!?

川の長さはどう決める!?

日本最長の川は信濃川で367km。これは学校で学んだ通り。もっとも短い川は二級河川の「ぶつぶつ川」(和歌山県那智勝浦町)で延長13.5mです。では、この河川の長さはどうやって決めているのでしょう。川の始まりは、そして終点となる河口とはどの場所を指しているのでしょう?

源流は意外に曖昧で戦後になって判明した場所も

大半の川は河川法によって定められ、国管理の一級河川、都道府県管理の二級河川、市町村管理の準用河川などに分かれています。
源流は湧き水だったり、湧出池だったり様々なケースがありますが、もっとも距離の長い最奥部を源流と定めています。
国土交通省(国土地理院も含まれます)では、「最も上流に源流を持ち海へ注ぐ河川を本流、本流に合流する河川を支流」と定めています。

では、源流はどのような状況と定めているのでしょう。
チョロチョロと水が出る場合、ドバドバと滝のように湧出する場所、雪渓末端など季節によっては枯れてしまう場所、いったん湧出するもののすぐ伏流してしまう場所などなど、様々なケースが想定されます。
実際にどう定義されているのかといえば、実はかなり「あいまい」。
ドバドバはOKで、チョロチョロはダメということもなく、なんとなくの源流という定めなのです。
そのため、「源流碑が立つさらに上流にも水流があった」というケースも(この場合は、碑を立てやすい場所だっただけという可能性もありますが)。

この点は研究者も論じる課題となっていますが、分水嶺を示す源頭ではなく、たとえば日本第2の長流である利根川は「利根川の源流は、三国山地にある大水上山の南面の雪渓」(利根川上流河川事務所)と定義され、雪渓の雪解け水であることがわかります。
実は、この利根川の水源が確定したのは昭和29年で、第3回利根川水源調査団が1834mの大水上山直下の沢を探検家のごとく登り詰め、ようやく源流を確認したのです。
第3回の調査となっているのは、明治27年、大正15年の調査では行き着けなかったことから。
60年掛けてようやく戦後になって利根川の源流が確定したのです(大水上山の南峰に利根川水源の碑が立っていますが正確には碑が立つ場所は源流ではなく源頭で、山頂直下の三角雪渓の基部が源流ということに)。

源流というのが意外にファジーで、近年までは確定していなかったことがおわかりいただけたと思いますが、川の終点、河口は意外にはっきりしています。

単に「海と出会う場所」と考えたら大間違いで、東京湾などの港湾部では埋め立てが進むことでどんどん河口が海側に移り、結果として「河川が長くなる」ということにつながります。
こうした変動を避けるため、近代以降の埋立地を除いた場所が河口です。
たとえば荒川の河口は東京メトロ東西線の清砂大橋の下流500mほどの場所で、中川と荒川の背割堤に「荒川0km地点」の表示があります(昭和21年の時点の河口)。
その先もさらに川は続いていますが、両岸が埋立地のため、マイナス表示で表現し、総延長には含まれません。
「現在の荒川の終点は、、東京湾に突き出した尖った先端になりますが、0km地点は変えずにマイナス◯kmというように管理されています」(国土交通省関東地方整備局荒川上流河川事務所/埋め立て部分は一般に「マイナス」表示)。
荒川沿いの河川敷には河口から◯kmという表示がありますが、この河口とは「荒川0km地点」のことで、上流からサイクリングで海を目指せば、河口の先にもまだ荒川が続いていることがよくわかります。

これは川の延長がたびたび変わると、それまで何十年間も測定して、蓄積してきた水位や流量、流域面積などのデータが、混乱を起こすため、「川によっても表現が異なる」というのが真相です。
東京湾に流れ込む江戸川の場合、短い放水路が後から建設されているため、実際には河口からの距離は、6kmほど長めとなっているのです。
逆に一級河川としての荒川も源流部ではなく、少し流れ落ちた谷になって起点があり、荒川には一級河川・荒川起点と、荒川源流点があります。
河川の距離計算は、源流がわからない点を考慮して源頭部で計算することもできます。
一級河川荒川はかなり下った場所に起点があり、そこから流路延長173kmとなるので、実際の荒川はもう少し長いことに(源流と起点が異なる場合があり、さらに複雑に)。

戦前は個別に細かく調査することもなかったため、有名な山から流れ出ている沢を本流にしたケースもあり、実際には支流のほうが長い河川もありますが、この場合も変更することなく、実際には支流よりも短い本流を今も本流として河川の長さとなっています。
つまりは、河川全体を管理する上では、そのわずかな差は重要な問題とならないということ。

というわけで、実は河川の源流、長さ、本流・支流の区別もかなり曖昧で、一級河川、二級河川としての起点、終点は、管理上、はっきりしているというのが正解です。

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