滋賀県高島市今津町のヴォーリズ通りにある昭和11年築のレトロな郵便局舎の建物が、旧今津郵便局。正面に切妻屋根で半円アーチの玄関が付いたお洒落な建物で、設計はウィリアム・メレル・ヴォーリズ(William Merrell Vories)。国の登録有形文化財に指定されています。
2階の電話交換室も現存
明治38年、滋賀県立商業学校(現滋賀県立八幡商業高等学校)の英語教師として来日したウィリアム・メレル・ヴォーリズは、村田幸一郎、吉田悦蔵らとともに近江八幡にヴォーリズ合名会社(のちの近江兄弟社)創立し、メンソレータムを普及させた実業家ですが、同時に建築家でもあり、自身も伝道に従事した日本基督教団の教会、学校建築、そして滋賀県内では郵便局など数多くの建築物の設計を行なっています。
旧今津郵便局は、ヴォーリズが設計した今津教会(日本基督教団今津教会会堂/昭和9年築)や今津ヴォーリズ資料館(旧百三十三銀行今津支店/大正12年築)と同じ、ヴォーリズ通りに面して建ち、3軒を見学すれば(今津教会は外観のみ見学可能)、琵琶湖の舟運で発展した今津の歴史を垣間見ることができます。
旧今津郵便局は、ヴォーリズ建築らしい地域に適した和洋折衷様式で、昭和53年まで今津郵便局舎として現役の郵便局として運用され、その後は倉庫として使用されていました。
その後、地域活性の気運が盛り上がり、ヴォーリズ今津郵便局の会が結成され、現在では土・日曜を開館日に定めて公開されています。
旧今津郵便局の特徴は、「ヴォーリズ建築としての面白さ、郵便局舎として営業されていた頃の面影が随所に残っていること」(ヴォーリズ今津郵便局の会)で、完成当時から、ほとんど手を加えることなく維持され、失われた受付カウンター以外は往時の姿を留めているのです。
配達先の区分け箱、レトロな私書箱、2階の電話交換室の扉、電話交換手が活躍した時代のターミナルボックス、飾り房(タッセル)の付いた局長室の照明、〒マークの付いた鬼瓦など郵便局時代の設備がそのまま残され、スタッフの解説を聞きながら見学が可能。
郵便局なのに電話交換室があるのは、明治27年2月16日に 今津郵便電信局となり、昭和34年11月30日 に電話交換事務、電報配達事務の取扱いを今津電報電話局に移管するまで、郵便事業、電話電報事業を郵便局が担っていたから(昭和24年に電気通信省設置、昭和27年日本電信電話公社設立)。
「建具に使われている金具は、近江セールズというヴォーリズ系列の会社が輸入したもの」など、解説を聞きながら見学すれば、そのハイカラぶりがよくわかります。
つまり、旧今津郵便局を見学すれば、ハイカラで地域密着の「ヴォーリズ建築」と「昭和の時代の郵便事業」が同時に学べることに。
なお、滋賀県内にヴォーリズ建築の郵便局は、旧今津郵便局のほかに旧八幡郵便局(近江八幡市/大正10年築)、旧醒井郵便局(米原市/大正4年築)があります。
東京の建築物では、お茶の水スクエアとして復元された旧主婦の友社ビル(大正14年築)、山の上ホテル(旧佐藤新興生活館/昭和11年築)、明治学院チャペル(大正5年築)が有名です。
取材協力/ヴォーリズ今津郵便局の会
旧今津郵便局 | |
名称 | 旧今津郵便局/きゅういまづゆうびんきょく |
所在地 | 滋賀県高島市今津町今津 |
関連HP | ヴォーリズ今津郵便局の会公式ホームページ |
電車・バスで | JR近江今津駅から徒歩10分 |
ドライブで | 湖西道路真野ICから約35km |
駐車場 | 5台/無料 |
問い合わせ | びわ湖高島観光協会 TEL:0740-33-7101/FAX:0740-33-7105 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag